原状回復義務の明文化が賃貸管理に与える影響とは?
(画像=gerasimov_foto_174/Shutterstock.com)

約120年ぶりといわれる民法の大改正が2020年4月1日に迫ってきました。民法は不動産投資と密接な関係があります。特に「原状回復義務の明文化」は、これまで明確に定められていなかった借主の義務の部分を明確に定めたという点で、不動産投資に携わる方にとっては、確実にチェックしておきたい事項と言えそうです。

具体的な改正内容は?

改正民法においては、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

と定めています。つまり、賃貸借契約期間中に、「賃借人の責めに帰すべき理由」によって物件に損傷を与えてしまった場合、賃借人が原状回復する義務を明確に定めているのです。

本改正前までは、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって、契約自由の原則に従って慣習的に運用されてきた事項が、法律によって厳格に規定されることとなったのです。

大家と賃借人のトラブル防止に一役買うことに

「原状回復をめぐるガイドライン」を始め、従来の取引慣習に従って運用されていく中で、賃貸借契約終了時は、物件の貸主と借主との間でトラブルが発生しやすいタイミングでした。しかしながら今回の改正をもって、こうしたトラブルをある程度防ぐことも可能になったと言えます。

前述のガイドラインや各種慣習を明文化させただけではありますが、民法に反して賃借人に負担を課す場合には特約として定めておかなければなりませんし、賃借人にとって不利な特約は無効になります。

賃貸借契約前には契約書の精査が必須

こうした流れの中にあって、契約前に賃貸借契約書を詳細にチェックすることは、非常に重要です。

改正民法に反していないか

改正民法に反して賃借人に一定の義務を課す場合は、その旨を定めておかなければなりません。やみくもに「書いておけばいい」というわけではなく、「賃借人に特別の義務を課す特約」を定めることができる要件として、以下のようなガイドラインが存在します。

  • 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  • 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
  • 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

賃借人と賃貸借契約を締結する前には、こうした事項がないかどうかあらかじめ確認し、規定しておくことで後のトラブルを回避することができると思われる場合には、明確にしておくと良いでしょう。

予想される原状回復費用の例示も必要

トラブル防止の観点から、上述したような特約を定める場合には、予想される原状回復費用の単価等を示しておくのも有効と言えます。

トラブルに発展しそうな事項が出てきたとしても、契約時にこうした事項を貸主・借主の双方で確認しておくことで、誠意をもって話し合える可能性が高まるでしょう。

2020年に施行される改正民法の中でも、原状回復の義務化に関しては、これまで慣習的に運用されてきた事項が明文化されたという点で、トラブルを未然に防ぐ意図があると言えます。本改正を踏まえ、賃貸借契約締結前には、本記事中に述べたような注意事項を意識して、円滑に事が進むように対策しておくと良いのではないでしょうか。

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