アジアの富裕層の間で利用が急増!プライベートバンクの究極版「ファミリーオフィス」
(画像= TypoArt BS/Shutterstock.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

海外の大富豪はファミリーオフィスで資産運用を行うのがスタンダードです。その代表は、長者番付上位のビル・ゲイツ氏、アメリカの有名投資家ジョージ・ソロス氏、アリババの創業者ジャック・マー氏などでしょう。今回は一般富裕層と大富豪の資産運用の差やアジアで台頭するファミリーオフィスのトレンドについて解説します。

ファミリーオフィスのメリットは大富豪ならではの合理性

ファミリーオフィスはプライベートバンクと比較されることが多い傾向です。大富豪がプライベートバンクではなくファミリーオフィスを選択する理由は、彼らならではの合理性にあります。ケタ外れの資産を持っていれば外部のプライベートバンクに資産運用をお願いして高額な手数料をとられるより一族専用のファミリーオフィスで運用したほうがメリットとしては大きいというわけです。

ちなみにアメリカでは日本円で数十億円の資産レベルを超えるとファミリーオフィスを選択するケースが増えるようです。

ファミリーオフィスとプライベートバンクの一番の違いは「カスタムメイド」

ファミリーオフィスとプライベートバンクの違いをもう少し詳しく見ていきましょう。プライベートバンクは富裕層の“資産保全・資産運用”を目的にしています。しかしファミリーオフィスは大富豪の“一族の長期的な繁栄”を最優先して設立・運営されるものです。その特徴から、プライベートバンクはどんな細かい要望にも応える「高級レストラン」、ファミリーオフィスは「その一族専用のレストラン」と表現する有識者もいます。

つまり同じ資産運用を目的にした枠組みでもカスタムメイドのレベルが違うわけです。「ファミリーオフィス=一族の番頭」と表現されることもあり資産運用・節税・相続などの専門家を高給で引き抜いて一族専用のファミリーオフィスをつくる大富豪もいます。

伝統的なファミリーオフィスでは、その名家で大切に受け継がれる“家訓”も重要視しているのが特徴です。家訓に基づき資産運用や慈善活動、さらには一族の子息の教育を進めることもあります。

欧米中心だったファミリーオフィスがアジア太平洋で急増

注意したいのは、一口にファミリーオフィスといっても大きく2種類あることです。その一族だけのために運用されているものを「シングルファミリーオフィス」、複数の一族の資産運用を手がけるものを「マルチファミリーオフィス」といいます。ファミリーオフィスの歴史については諸説ありますが、ファミリーオフィスのような考え方でヨーロッパの王侯貴族の資産管理をしていたことがはじまりです。

このファミリーオフィスのノウハウが蓄積されて発展してきたのがプライベートバンクと解説する有識者もいます。また現在のような形のファミリーオフィスが誕生したのは、名門中の名門「米ロックフェラー家」の資産管理がはじまりと解説されることも少なくありません。

いずれにせよファミリーオフィスは欧米で発達してきたものですが最近ではアジアでも広がっています。英カムデンリサーチによると世界7,300社のファミリーオフィスのうちアジア太平洋は1,300社を占め、最近の伸び率はアジアが欧米を大きく上回っているそうです。

アジアのファミリーオフィスは今後、シンガポールに集中?

ファミリーオフィスのアジアでのトレンドで注目すべきは次の2点です。1つ目は、シンガポールのファミリーオフィスが急増していることです。2019年10月16日付の日本経済新聞では「同国のファミリーオフィスの数は2年で4倍になった」と解説。クレディ・スイスやシンガポール大手のDBSなどがファミリーオフィス部門を立ち上げていることを報じています。

2つ目は、香港からシンガポールへのファミリーオフィス資金の流出可能性でしょう。アジアでファミリーオフィスが置かれる拠点としては現在のところシンガポールと香港が有力です。しかし2019年10月10日付の米ブルームバーグによると、民主化デモの激化と長期化を不安視した香港のファミリーオフィスがシンガポールへの資金移動を検討する動きが出てきていると報じています。

今後、大富豪や金融関係者の中ではアジアのファミリーオフィスがシンガポールに一極集中する流れになるかどうかに大きな注目が集まるでしょう。

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