STOによって不動産投資が身近に?メリットと課題を解説
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田中タスク
田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。

セキュリティトークンを使ったSTOは、新たな資金調達法として注目を集めています。特に不動産投資ではSTOを活用することによってこれまで難しかった少額投資も可能になり、「投資に消極的だった層の投資参加を促す」「少規模でも魅力ある店舗が資金を集めやすくなる」など新たな活用法も期待できるでしょう。

本記事では、STOの仕組みや将来性、不動産投資に活用するにあたって考えられる課題などについて解説します。

目次

  1. 1.セキュリティトークンの意味とメリット
    1. 1-1.24時間取引と決済が可能
    2. 1-2.データの安全性が高い
    3. 1-3.取引コストが抑えられる
    4. 1-4.所有権を小口化しやすくなる
  2. 2.STOとは新たな資金調達方法
    1. 2-1.大阪ではST取引所が開業
    2. 2-2.似て非なる、STOとICOの根本的な違い
  3. 3.STOのスキーム
  4. 4.不動産で期待されるSTOの効果
    1. 4-1.権利を小口化し投資しやすくなる
    2. 4-2.世界中の投資家から資金調達可能に
    3. 4-3.個性的な不動産への投資
  5. 5.海外におけるSTOの現状
    1. 5-1.STOでも強い、米国の勢い
    2. 5-2.現状は比較的小規模な資金調達案件が多い
  6. 6.国内のSTO事例
    1. 6-1.葉山の古民家宿づくりファンド
    2. 6-2.大家.com
    3. 6-3.不動産投資型クラウドファンディング
  7. 7.STOの今後の課題
    1. 7-1.どれくらい投資先が現れるか
    2. 7-2.国内取引所の運営開始
  8. 8.不動産取引に新たな風を吹き込む
  9. 9.STOでよくある質問
    1. 9-1.Q.STOの意味は?
    2. 9-2.Q.不動産投資においてSTOはどんなメリットが期待できる?
    3. 9-3.Q.STOとICOの違いは?
    4. 9-4.Q.STOを不動産投資に活用する注意点は?
    5. 9-5.Q.STOの事例にはどんなものがある?

1.セキュリティトークンの意味とメリット

STOは「Security Token Offering」の頭文字を取った略称でセキュリティトークン(SecurityToken、以降ST)を発行して行う資金調達方法です。

STは、ブロックチェーン技術などを利用してデジタル化された法令上の有価証券のことでSTOを理解するには、まずSTについて知る必要があります。STの主な特徴は以下の3つです。

  • 24時間取引と決済が可能
  • データの安全性が高い
  • 取引コストが抑えられる
  • 所有権を小口化しやすくなる

1-1.24時間取引と決済が可能

2022年時点で主要な証券取引所は、取引時間が決められています。しかしSTは、24時間いつでも取引が可能です。将来的には、世界中で随時取引ができるようになるとされています。また証券取引所での決済は、売買成立から数日後ですがSTでは即時決済も可能です。

1-2.データの安全性が高い

STは、分散型台帳技術により高い安全性が確保されます。分散型台帳は、参加者全員でデータを管理および共有するため、改ざんが非常に難しいのが特徴です。さらにSTは、証券規制の中で発行される点でも安全性が確保されます。仮想通貨のように「管理者や発行者が不明確」ということがなく信頼性も高い傾向です。

1-3.取引コストが抑えられる

ST化された有価証券は、迅速な決済が可能で管理も短期間かつシンプルで済みます。また売買や譲渡における各種の手続きも簡略化されるため、取引にかかるコストを抑えることが可能です。

これにより費用対効果や流動性の面から証券化の難しかった資産の証券化も進むことが期待されます。美術品などもデジタル証券化され新たな取引方法が現れる可能性も秘めているのです。

1-4.所有権を小口化しやすくなる

金融資産や不動産所有権の小口化は、手続きや管理コストがかかるため、これまで積極的に行われませんでした。しかしSTは手続きが簡略化されるため、小さな単位への分割が容易です。所有権の小口化が進めば少額投資も可能になるため、特に不動産で資金調達がしやすくなると期待されています。

2.STOとは新たな資金調達方法

STOは、ST(セキュリティトークン)を介した資金調達方法の一つです。投資家は、投資対象へ出資することでSTを受け取ります。投資先が運用される間に配当を受け取れたり売却に伴う収益を得られたりできる点は、従来の投資と同様です。

STは、電子記録移転権利として金融商品取引法の法規制を受けています。STOを取り扱う金融機関は、金融庁から認定された自主規制団体「一般社団法人日本STO協会」の規約遵守が求められているのです。

STOと似た資金調達方法にICO(Initial Coin Offering)があります。しかし原資となる暗号資産(仮想通貨)には、発行体が不明確なものも多くトラブルが続出していました。一方で一定規模以上のSTOは、有価証券届出書の提出が必要です。

このようにSTOは、取引の健全性や投資家の保護に努められています

2-1.大阪ではST取引所が開業

日本におけるST動向としては「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」というPTS運営会社があります。PTSは、Proprietary Trading Systemの略で証券取引所と異なる私設取引所のことです。PTSを運営する同社がそのノウハウを活かしてSTの取引サービスを提供しています。同社は、2021年4月1日にネット証券大手のSBIグループと三井住友ファイナンシャルグループが設立したPTS運営会社です。

同年10月には、野村ホールディングスや大和証券グループも資本参加するなど日本の名だたる大手金融関連企業が関与することからもST取引所への期待感がうかがえます。アジアの国際金融都市といえば香港が有名です。しかし香港では、中国当局による民主派への弾圧が強められていることもあり外資系金融機関がアジアの拠点を日本に移転する動きが見られます。

それを受けて日本では、競争力強化のために大阪や福岡などを特区に指定して国際金融都市としての地位を向上させたいとする戦略があるのです。大阪デジタルエクスチェンジもこうした動きの一端にあるもので、今後本格的な稼働によって日本のST取引が活性化されることが期待されます

2-2.似て非なる、STOとICOの根本的な違い

STOは、セキュリティトークンを活用して資金を調達する手段として普及が進んでいます。これとよく似た仕組みで先行しているのがICOです。ICOは「Initial Coin Offering」の略で暗号資産(仮想通貨)の世界で活用されている資金調達手段の一つです。暗号資産のブロックチェーンを用いているため、技術的にはSTOと似ている部分が多くSTO自体がICOから応用されたものとも考えられます。

では、なぜSTOが注目されているのでしょうか。それは、安全性や信頼性に大きな違いがあるからです。ICOでは、暗号資産発行時、発行主体が誰なのかが定かではないこともあるため、詐欺まがいの手口に悪用されるリスクがあります。また暗号資産は、国によっては全面的に禁止されているため、今後の普及に疑問符がつく側面もあるのです。

その点、STOは国家による「お墨付き」があり信頼度が高く安心して取引できることから資金調達手段として普及できる能力が期待できます。このようにSTOとICOは、似て非なるものなのです。

3.STOのスキーム

ここでは、新たな資金調達方法として注目されるSTOのスキームについて解説します。企業が資金を調達する手段の中に社債発行がありますが、STOも基本的に社債と同様のスキームです。社債の場合は、発行体となる企業が社債を発行しそれを投資家が買うことで資金を調達します。STOは、それをブロックチェーンに代替してスキームが形成されているのが特徴です。

従来の社債発行スキームでは、振替期間として証券補完振替機構(通称「ほふり」)が社債の保有状況を管理しますが、STOでは管理をブロックチェーンで行う仕組みです。ブロックチェーンは、参加者の全員で記録台帳を保管し相互に監視することで内容の正確性が担保されています。

ブロックチェーンの技術があれば従来の社債発行もブロックチェーンに置き換えることが可能でしょう。STOは、それを実際に行っているところが大きな特徴です。「STを誰が保有しているのか」ということもブロックチェーンに記録されるため、追跡したりSTを保有している投資家とコミュニケーションを取ったりしやすくなります。

また「ほふり」が管理をするとどうしても時間的かつ費用的なコストがかかります。もちろんブロックチェーンでもコストがかからないわけではありませんがはるかに効率的で低コストです。この環境を利用すると、STOは現在の機能だけでなく新たな機能も実装されてより魅力あるものになる可能性があります。

4.不動産で期待されるSTOの効果

不動産取引では、STOを用いることで以下のようなメリットが期待されています。

4-1.権利を小口化し投資しやすくなる

不動産の権利をSTによって小口化することで投資資金をより集めやすくなります。従来の不動産への直接投資は、自己資金か融資で一定の金額を用意する必要がありました。しかしSTで小口化されれば少額投資も可能になり幅広い投資家からの投資が期待できます。

4-2.世界中の投資家から資金調達可能に

STを取り扱う証券取引所に上場すれば世界中の投資家から資金を集めることが期待できます。すでに米国など海外には、STを売買可能な取引所がいくつかあります。日本からもSTを取り扱う証券取引所へ上場することで国内より多くの資金を集められる可能性があるでしょう。

4-3.個性的な不動産への投資

収益性が高くなくとも個性的な不動産施設であれば投資の配当を金銭に限らず施設利用やサービスをリターンに含むことで投資家の間口を広げることもできます。一定額以上の投資をする場合、従来は資金が必要でどうしても配当金や売却益でのリターンを求められました。

しかしSTにより少額投資が可能になれば「個性的な店舗や歴史的な施設などを応援したい」という個人投資家のニーズを発掘できる可能性があります

関連記事:セキュリティトークンで不動産証券化がトレンドに? 新しい資金調達方法を解説

5.海外におけるSTOの現状

2022年時点で日本におけるSTOは、「まだ始まったばかり」というイメージが強いかもしれません。しかしすでに海外では、大手取引所が取り扱いを始めていたり本格的にSTOの案件数が増えていたりするなど一定の成果を上げています

例えばスイスの証券取引所「SIX」は、暗号資産関連などの取り扱いにも積極的です。ブロックチェーン技術をベースにしているSTOについても親和性が高く2019年の段階でSTの取り扱いを表明しています。

そのほかにも英国領ジブラルタルにあるジブラルタル証券取引所も暗号資産関連の取り扱いに積極的です。同証券取引所でもSTOの取り扱いがあります。このように海外では、着実にSTOが普及しつつあり案件実績も積み重ねられている傾向です

2017年には、世界で5件だったSTOの案件数が翌年の2018年には35件、さらに翌年の2019年には55件と大幅に増加しています。倍々ゲームのように増えていることからもSTOが今後さらに拡大する可能性は高いでしょう。

5-1.STOでも強い、米国の勢い

STOをいち早く採用し多くの案件数を積み重ねているのが米国です。2019年時点でSTOの案件数は、110件を超えており2位につけているスイスの26件と比べても5倍以上の規模です。ITを活用した新しい技術やスキームに対して積極的な国柄というのもありますが、米国で多くのSTO実績が積み上がっていることには、ほかの理由もあります。

例えばSTを発行するプラットフォームを提供している企業の大半が米国企業のため、STを発行する土壌が早くから形成されていたことが理由の一つです。ちなみに米国以外ではスイスや英国が上位にランクインしています。これは、スイスのSIXやジブラルタル証券取引所がSTを取り扱っているため、市場が活性化しているといえるでしょう。

5-2.現状は比較的小規模な資金調達案件が多い

多くの事例を見るとSTO案件の大半は、日本円にして20億~30億円規模の資金調達に用いられていることがわかります。従来型の社債発行ではさらに大きな規模の資金調達も珍しくないので、それと比べるとまだまだSTOは比較的小規模な資金調達に用いられていることが多い傾向です。STOの認知度や信頼性などが向上すると、より規模の大きなSTO案件が続々と登場することも考えられます。

そのためSTO市場規模の拡大とともに調達案件の規模も大きくなっていく可能性があるでしょう。STOは、名称やスキームが似ているためICOと混同されることも多い傾向です。またICOだけでなく暗号資産そのものに懐疑的な見方をしている人にとっては、STOも未発達な金融スキームに見えてしまう可能性があります。

今後は、そうした見方が改善することで大きなSTO案件が登場することも珍しくなくなるでしょう。

6.国内のSTO事例

日本国内ですでに行われたSTO案件について、いくつか実際に行われた例があるので紹介します。

6-1.葉山の古民家宿づくりファンド

2019年に国内初の一般投資家向け不動産STOとして「葉山の古民家宿づくりファンド」が実施されました。すでにプロジェクトの目標募集額1,500万円に達しファンド組成は完了しています。投資実行後にSTが発行され投資家へ持ち分が譲渡される流れです。「葉山の古民家宿づくりファンド」は、投資によって葉山の空き家の所有権を持つことになります。

これにより建物や敷地の維持管理が行われ古民家再生に協力できるというわけです。想定利回りは2%、運用期間は4年3ヵ月で投資家には施設を割引価格や無料で利用できる特典がついています。

6-2.大家.com

株式会社グローベルスが運営する「大家.com」では、2020年12月から不動産賃貸物件の運営資金をクラウドファンディングで集めています。投資金額は、1口1万円です。賃料収入を配当とし運用期間終了後は売却益などで元本償還されます。投資家は、出資後にSTが発行され持ち分を取得。またSTOスキーム上で書面確認を行ったほかの投資家へ出資持分の譲渡も可能です。

従来の不動産投資で得た持ち分は、運用期間が終わるまで譲渡は難しい傾向でした。しかしSTを用いることで譲渡がしやすくなります。

6-3.不動産投資型クラウドファンディング

このような不動産賃貸建物へのクラウドファンディングは、既存物件だけでなく新築建物でもミドルリスク・ミドルリターンの投資手段として注目を集めています。そのため「株式投資はややハードルが高いが銀行預金より高い利息を得たい」という人には、魅力ある投資です。1口1万円など少額から投資可能で高い利回りを実現しているファンドもあります。

今後STOが普及するにつれてこうした不動産賃貸建物へのクラウドファンディングもさらに活発化することが期待されるでしょう。

7.STOの今後の課題

注目されているSTOが今後さらに拡大するためには、以下のような課題を解決していく必要があります。

7-1.どれくらい投資先が現れるか

2021年時点でSTOは、枠組みができたばかりの初期段階です。既存の投資先が新たにSTOに適合させるためには、人員の配置やデータ移管が必要になります。

そのため「手間やコストをかけてもSTOに参入したい投資先がどれくらい現れるか」といった内容が第1の課題です。また投資先の数も大切ですが「既存の投資先とは差別化された新たな魅力を持つ投資先が現れるか」といった点も注目されます。

7-2.国内取引所の運営開始

実際にSTの取引を行う国内の取引所の稼働はこれからです。2021年4月1日にSBIホールディングス株式会社と株式会社三井住友ファイナンシャルグループは、共同でPTS(私設取引システム)の運営を目指す「大阪デジタルエクスチェンジ株式会社」を設立。2022年4月28日にはPTS取引システムに関する認可を取得しており、ST取引サービスの提供に着々と準備が進んでいます。

「2022年までにどれくらいのSTOが集まるか」「上場基準や投資家の保護」など検討すべき問題は数多くあります。今後の大阪デジタルエクスチェンジ株式会社の動向に注目しましょう。

8.不動産取引に新たな風を吹き込む

不動産取引においてSTOが広く浸透すれば権利の小口化で投資資金の限られる若い投資家を集めやすくなるでしょう。これにより個性的な店舗や施設など新たな価値で投資を募る不動産が増え不動産投資が活性化する可能性もあります。また権利のデータ化によって従来の書類を中心とした煩雑な手続きなどが改善されることも期待されるポイントです。

これまで保守的と見られてきた不動産取引に新しい風が吹き込むかもしれません。

9.STOでよくある質問

9-1.Q.STOの意味は?

A.STOとは、「Security Token Offering」の頭文字を取った略称でセキュリティトークン(SecurityToken)を発行して行う資金調達方法のことです。

9-2.Q.不動産投資においてSTOはどんなメリットが期待できる?

A.「権利の小口化」「世界中から資金調達しやすくなる」「個性的な不動産へ投資しやすくなる」などのメリットが期待できます。

9-3.Q.STOとICOの違いは?

A.STOは、セキュリティトークンを用いた資金調達スキーム、ICOは暗号資産を用いた資金調達スキームです。暗号資産は、誰もが自由に発行したり流通したりすることができるため、信頼性の面で課題があります。一方でSTOは、発行国の法律に準拠して発行されるため、高い信頼性が大きな特徴です。

9-4.Q.STOを不動産投資に活用する注意点は?

A.STOは、不動産投資の小口化を可能にするスキームのため、個人投資家が少額で手軽に参入できるメリットがあります。しかしその一方で手軽でオープンなスキームとなることから、ブロックチェーンに保管されている投資家や取引に関する情報を見ることができてしまう点には注意が必要です。そのため、個人情報保護の観点からはリスクが付きまといます。

2022年5月時点では、日本初のSTOプラットフォームとなる「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」が準備段階です。そのため見通せない部分がありますが、今後どれだけ多くの不動産投資案件がSTOとなって流通するかもSTOを運用していくうえでの試金石になるでしょう。

9-5.Q.STOの事例にはどんなものがある?

A.本文中でも紹介している「葉山の古民家宿づくりファンド」は、日本初となるSTO案件です。この案件で発行されたSTOで投資家は、葉山にある空き家の所有権を譲り受けることができます。

また、本格的な不動産投資型のSTO案件の一つがビットリアルティの不動産クラウドファンディングです。東京のマンションや商業ビルを中心に不動産投資案件を小口化して販売しており、投資家はネットから手軽に購入することができます。

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