売却益の税金を繰り延べできる!「事業用資産の買い換え特例」とは
(画像=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

収益物件を売却して多額の売却益を得たのはいいけれど、税金が心配……。そんなときに活用できる「事業用の資産を買い換えたときの特例」をご存じでしょうか。売却を考えている人は知っておいて損はない制度です。

そもそも、不動産を売ったらどんな税金が発生する?

特例の説明の前に、不動産を売ったときにかかる税金についておさらいしておきましょう。不動産を売って利益(譲渡所得)が出たときには、譲渡所得金額に応じた所得税・住民税の支払いが発生します。譲渡所得金額は以下のように計算します。

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

これに税率を掛けて税額が決まります。税率は、所有期間に応じて以下のように2つに分かれます。

  • 所有期間が5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
  • 所有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

このように、短期と長期では税率が倍近く違うのです。

多額の譲渡所得が出たときに使える「事業用の資産を買い換えたときの特例」とは?

不動産を売却して大きな利益が出たことは喜ばしいことですが、支払う税金の重さに頭を悩ませる人もいるでしょう。そんなときに活用できる仕組みが、「事業用の資産を買い換えたときの特例」です。

この特例を簡単に説明すると、事業用の不動産を売却後、一定期間内に別の事業用不動産を買ったとき、売却時の譲渡所得のうち70~80%に相当する部分については課税を繰り延べできるという制度です。

どれくらいの節税できる?

たとえば、譲渡所得金額が1,000万円だった場合、本来は1,000万円に対して税金がかかります。5年超保有の長期譲渡所得でも税金は約200万円ですから、かなり大きな負担です。

しかしこの特例を利用すれば、最大80%引きの200万円に相当する部分について税金を支払えばいいことになり、税額は約40万円まで下がります。

特例の適用を受けるには多くの条件がある

ただし、特例の適用を受けるためには、次の条件すべてに当てはまる必要があります。

(1)売った不動産と買い換え不動産は、ともに事業用であること。

(2)売った不動産と買い換え不動産が、一定の組み合わせであること。
組み合わせはいくつかありますが、代表的なものは「その年の1月1日時点で所有期間が10年を超える国内の事業用不動産を売って、国内にある事業用不動産を買った場合」です。なお、この特例は2020年3月31日までの譲渡について適用されます。また、買い換える土地または建物の敷地面積が300平方メートル以上であることも条件に含まれます。

(3)買い換え不動産が土地であるときは、その面積が売った土地の面積の5倍以内であること。

(4)売った年か、その前年中、あるいは翌年中に買い換え不動産を買うこと。
つまり、売る前に買った不動産でもいいということです。ただし、前年中に取得した資産を買い換え不動産とするためには、買った年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買い換えの特例の適用に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。

(5)買った不動産を1年以内に事業用として使うこと。

(6)売った不動産は5年超の所有であること。
つまり、短期譲渡では使えないということです。

これらの条件にすべて当てはまる取引となると、ややハードルが高いと言えるかもしれません。

減価償却費が少なくなってしまう点に注意

特例を受けるときに注意したいことがあります。それは、毎年計上する減価償却費が少なくなってしまうことです。

この特例を受けた場合、買い換えた不動産の取得費は実際の取得費ではなく、売った不動産の取得費を用いて計算することになります。通常は、買い換えた不動産の本来の取得費より低くなってしまうことが多いです。

取得費が少ないと、これから所有していく間に減価償却費として毎年計上できる金額が少なくなってしまいます。その結果、支払う所得税が増えてしまう可能性があるのです。事業用資産の買い換え特例を検討する際には、どの方法を選択するとトータルで節税になるのか、綿密なシミュレーションをしたうえで判断することをおすすめします。

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