訴える?それとも話し合う?家賃滞納への対応方法
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佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

マンションなどの収益不動産を持っていると家賃の滞納が発生することがあります。入居者がいるにもかかわらず収入が得られない状況は、オーナーにとって非常に頭が痛いでしょう。そこで今回は家賃を滞納する入居者への3つ対応方法について解説していきます。

まずは確認してから請求・督促する

滞納時にオーナーがまず行うことは請求や督促ではなく「確認」です。なぜなら入居者が故意に滞納したとは限らないからです。手続き上のミスであったり、たまたま口座の残高不足で引き落としができなかったりすることもあります。そういった場合にいきなり滞納という言葉を出すと、お互いに嫌な思いをする可能性があるため注意が必要です。

そのため滞納時の初動は「支払いの手続きが済んでいるかどうか確認する」というスタンスをとります。確認後にすぐ支払われず次の月も滞納するようであれば確信犯といえるかもしれません。回収には相当の手間がかかることを覚悟しなければなりません。確信犯であれば入居者に支払いの督促をします。電話や訪問、手紙の持参や郵送など、あらゆる手を尽くしてコミュニケーションをとる必要があるでしょう。

このようなときに確認するべきは入居の際に保証契約をしている連帯保証人の存在です。民法上は、入居者が滞納したらすぐに連帯保証人へ請求することができます。しかし実際に入居者を飛ばして連帯保証人へ督促すると入居者も保証人も当惑してしまい、かえって関係がこじれスムーズに進まなくなる可能性があります。

まずは入居者本人に対して「支払わなければ連帯保証人に請求する」旨を伝えましょう。一般的な感覚からすれば入居者は連帯保証人に迷惑をかけたくないと思うのでなんとか支払おうとするはずです。それでも滞納が続くようであれば連帯保証人に請求します。これで支払いを受けられればとりあえずは解決ですが、そうでない場合は法的手段を検討することも必要です。

法的手段に訴える前に賃貸契約の解除を申し立てる旨を書面にして送ります。内容証明と簡易書留を利用すれば、その後の訴訟や調停における強力な証拠となるでしょう。内容証明は請求の内容、書留は相手が手紙を受け取ったことを郵便局が証明してくれるものです。滞納者に対する心理的な圧力にもなるでしょう。

少額訴訟の起こし方

請求する金額が60万円未満であれば少額訴訟も検討できます。一般的な訴訟とは異なり「原則1回で判決が出る」「訴訟費用も低く請求金額の1%ほど」というのが特徴の訴訟です。そのため弁護士に代理を頼まずに自分で行う人も多く裁判所も申し立ての仕方を丁寧に教えてくれます。少額訴訟を起こすためには、原則相手方の住所地を管轄する裁判所に直接足を運ぶ、もしくは郵送で申立書を提出する必要があります。

申立書の内容はオーナー(原告)と入居者(被告)の名前や住所、請求の趣旨や要点などです。訴訟の日には賃貸契約書や通帳、請求書の控えなど十分な証拠を持参しましょう。判決が確定し、それでも支払われない場合は、入居者の財産を差し押さえることができます。具体的には銀行口座や給与などですが対象となる金融機関や雇い主を自分で調べなければなりません。

連帯保証人がいれば入居者と一緒に被告として訴えますので差し押さえなどで回収できる可能性は高いといえます。

民事調停とは

法的手段は訴訟だけではありません。裁判所で話し合い和解に持ち込む「民事調停」も方法の一つです。裁判官と民間の調停委員という第三者を加え、原告と被告の話し合いによって解決に導きます。調停で決まった内容には裁判の判決と同様の効果があり差し押さえなども可能です。申立費用は少額訴訟の半額程度で訴訟金額の約0.5%程度となります。

手続きも簡単で訴えたい内容の要点を記述した書類を提出するだけのため弁護士などの代理人に頼る必要もありません。訴訟のように第三者が勝ち負けを決めるのではなく双方が納得できるまで話し合うことを目的とした平和的な解決方法といえます。

少額訴訟の場合は金銭の支払いに関する内容しか争えませんが、民事調停はお金のやりとり以外のことも柔軟に決められるというメリットがあります。そのため退去を確約させることもできます。

デメリットとしては相手が欠席した場合、不成立になるということです。欠席したほうの負けが確定する訴訟とは大きな違いです。また条件が折り合わない場合も成立せず訴訟に発展する場合もあるため「金銭がからむトラブルに調停は使えない」という人もいます。

ただし家賃滞納の場合は、証拠がはっきりとそろっている場合が多いので訴訟になったとしてもオーナーが負けることはほとんどないでしょう。訴訟の前段階としての調停は有力な手段の一つです。

管理会社がどこまでやってくれるか確認しておく

家賃を滞納された場合は、最初に入居者へしっかりと確認をとることが重要です。確認後滞納が解消しないようであれば連帯保証人への請求や少額訴訟、民事調停などを検討してみましょう。これらの一連の手続きは、管理会社が代行してくれることがあるため一度管理委託契約の内容を確認しておくことも大切です。

いずれにしても、滞納が長引いた後に全額回収するのは相当難しいでしょう。滞納発生時に取るべき行動と順番をしっかりと把握しておき、速やかに対応することが求められるでしょう。

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