【不動産投資用ローンの基礎知識③】返済方法を選択できることを知っていますか?
(画像=mohdizuan/Shutterstock.com)
山下和之
山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある

不動産投資においては、ほとんどの人が不動産投資用ローンを利用します。それによって、少ない自己資金の数倍の投資ができるからです。

不動産投資用ローンは、自分に合った返済方法を選択して、できるだけ早く返済を終えて安心したいものです。ローンを利用する際は、不動産会社や金融機関などから返済予定表が提示されるはずですが、それがすべてではありません。自分にとって、最も有利な返済方法を選択することができるのです。

無理のない範囲で返済期間を短縮したほうがお得

不動産投資用ローンでは、住宅ローンと同じように返済期間を選択できます。居住用の住宅だと最長35年までですが、不動産投資用ローンでは30年までとするところが多いようです。通常は1年単位で返済期間を設定できます。

返済期間が長いほど毎月の返済額は少なくなり、収支計画にゆとりができます。しかし、返済期間を長くするということは、それだけ長い間利息がかかるわけで、完済までの総返済額は多くなってしまいます。実際の家賃収入との兼ね合いで、毎月いくらまで返済できるかを考慮しつつ、無理のない範囲で返済期間を短くするのがベターです。

返済期間で毎月返済額はこんなに変わる

実際にどれくらい変わるのか、借入額2,000万円の例で見てみましょう。

以下の表のとおり、金利が2.0%、返済期間20年だと毎月返済額は10万1,176円です。投資用のワンルームマンションの場合、賃料収入10万円以上の物件は、都心の近くで駅近など利便性の高いマンションに限られます。つまり、それ以外の場合は毎月かなりの持ち出しが多くなってしまう可能性があります。

30年返済にすれば、毎月返済額は7万3,923円に減少します。返済額がここまで下がれば、これに見合った賃料収入の物件が見つかる可能性はかなり高まるはずです。無理なく資産を形成するためには、このように返済期間を長めにして、ゆとりある収支計画を立てると安心です。

  • 借入額2,000万円の返済負担
     設定条件:元利均等・ボーナス返済なし、金利2.0%
毎月返済額 年間返済額 総返済額
15年返済 12万8,701円 154万4,412円 2,316万6,180円
20年返済 10万1,176円 121万4,112円 2,428万2,240円
25年返済 8万4,770円 101万7,240円 2,543万1,000円
30年返済 7万3,923円 88万7,076円 2,661万2,280円

総返済額は230万円以上も多くなってしまう

返済期間を長くすると毎月の負担は軽減されますが、総返済額はかなり多くなってしまいます。上記の表のとおり、30年返済なら20年返済に比べて毎月の返済額は3万円近く減りますが、その分総返済額は230万円以上も多くなってしまいます。これは、30年間金利が変わらない場合の比較ですが、金利が高くなると、この差はさらに広がります。

繰り上げ返済で期間の短縮、総返済額の圧縮

借り入れ当初はゆとりをもって30年返済とし、ローンの返済が始まってからも家計管理を徹底して預貯金を増やし、その資金をローンの一部繰り上げ返済に回す方法もあります。これによって、返済期間を短縮し、総返済額を減らすことができます。

たとえば、毎月の返済額とは別に100万円繰り上げ返済をすれば、金利などの条件にもよりますが、返済期間を3~4年短縮できます。返済期間を短縮し、同時に総返済額を圧縮できるので、節約効果が非常に高くなります。完済までに繰り上げ返済を2度、3度と繰り返せば、たとえば35歳で購入して65歳で完済する予定だったものが、60歳や55歳までに終わらせることができるようになります。

当初の返済計画どおりに返済できているからといって、他に何もしないのはもったいないです。少しでも自分にとって有利になるように、返済方法を臨機応変に変えていくことをおすすめします。

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