不動産投資で避けたい「債務超過」どうしてなる?防ぐには?
(画像=chingyunsong/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

不動産投資の魅力は、ローンを利用して豊富な資金を動かせることです。しかし物件を購入する際は慎重に判断しなければ債務超過に陥る可能性があります。最悪の場合は多くの財産を失うことにもなりかねません。そうならないためには不動産投資の基本である「あること」を意識することが必要です。今回は不動産投資で債務超過を避ける、防ぐ方法について解説します。

債務超過とはどのような状態か

債務超過とは、抱えている負債が所有している資産を上回ることです。資産とは換金可能な価値あるもののことで負債とは将来、支払いが必要になるもののことをいいます。もう少しかみ砕いていえば「全財産を売り払っても借金が返せない」という危険な状態です。どの範囲までを資産や負債に含めるのかは、状況によって異なります。

法人であれば単体の決算書、個人であれば不動産所得の決算書、あるいは物件一つ一つにおいても債務超過と呼べる状況になりえるでしょう。資産は「売ったらいくらになるのか」という点が大事なので基本的に時価で判断します。購入価格を基準にした「簿価」ではありません。話をわかりやすくするため、物件単位の例を挙げてみます。5,000万円のフルローンで買った区分所有マンションがあるとします。

購入当初は資産と負債が5,000万円ずつありバランスがとれているよう感じるかもしれません。しかし数年後に何らかの理由で資産価値が落ち、時価が4,000万円に下がるとどうなるでしょうか。その時点でローンが4,500万円ある場合、差し引き500万円の債務超過です。物件購入直後は上記の状態になるケースが多いかもしれませんが、保有中のキャッシュフローと元金返済に伴い、どのタイミングで負債を資産が上回るかを把握しておくことが重要です。

新たな融資が受けにくくなる

債務超過が問題になる場面は、主に金融機関によるローン審査です。不動産投資向けローンでは個人の財政状態が問われるので金融資産や不動産などの所有する全資産・負債を時価で考えるのが一般的です。もし先ほどの4,000万円のマンションを持っているような状態で他に資産がなければ新規で融資を受けるのは難しいでしょう。

なぜなら金融機関として今ある借金さえ払えるかどうかわからない人に対して、さらに貸し付けることは非常にリスクが高いと評価するからです。しかしこの人が他にローンのない時価4,000万円の土地を持っており他に借金がなければ融資を受けられる可能性はあります。このケースでは個人資産は8,000万円、ローンは4,500万円となり差し引き3,500万円の資産を持っていることになるからです。

ただし土地は担保に入れなければならない可能性もあるでしょう。物件単位で1戸でも大幅に債務超過しているものがあれば金融機関の印象は悪くなります。不動産賃貸業者としての経営能力を見られているのです。

最悪の場合、破産もあり得る

金融機関によって評価基準が異なるため、債務超過に陥っているどうかの判断は一律ではありません。例えばA銀行では5,000万円と評価されたマンションが、B信用金庫では4,000万円と評価されることがあります。不動産の時価評価は、売却やローン審査以外にあまりする機会がありません。また不動産所得の決算書は簿価で記載が必要です。

そのため自分では気づかないうちに債務超過に陥っているということが少なくありません。突発的に資金が必要になったとき債務超過のために融資が受けられないとローンを滞納することになりかねません。トラブルによる退去の続発で収入が減ったり雨漏りや共用設備の故障などによる高額な修繕費が発生したりと資金繰りに困ることもあります。

運転資金を調達できず収益不動産を売ってもローンを返済できないのであれば、自宅や車などの財産を手放すことになるかもしれません。負債額によっては自己破産もありえます。こうなると不動産投資を続けることは難しいでしょう。

債務超過に陥るかどうかは物件購入時にほぼ決まる

不動産投資の継続が難しくなるだけでなく本人の生活も脅かされかねない債務超過は、何としても避けたいところです。そのためには「物件を安く買い高い実質利回りを継続する」という基本的な運用が欠かせません。理想は土地付きの1棟マンションやアパートを相続税路線価以下の価格で買うことです。さらに自己資金を3割ほど入れ、ローンを購入価格の7割ほどまでにとどめておけば、ほとんどの金融機関で債務超過と判断されることはないでしょう。

そもそも債務超過は「ローンが多過ぎる」状態のことですから自己資金を豊富に用意できれば陥る可能性はほとんどありません。良くないのは、割高な物件をフルローンで買うことです。相場よりも高い価格で買ってしまい、その資金を全額融資でまかなうと買った瞬間に債務超過に陥ります。

土地価格以下の購入は簡単なことではありませんが、そうでなければ不動産投資ができないというわけではありません。資産価値を保ち続けられる物件を適正な価格で買うことで債務超過を防ぐことができます。

物件の価値に見合った投資をしよう

債務超過を防ぐためには「不動産を適正な価格で買う」という不動産投資の基本を意識する必要があります。時価は下落するリスクがあるため、資産価値を保てるエリアの見極めも大切です。また自己資金を豊富に入れて購入すれば基本的に債務超過は発生しません。物件の価値に対して過度な借り入れは禁物です。

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