税金
2019.8.22

賃貸用不動産を家族にタダで使わせた場合のデメリット

(画像=Evgeny Atamanenko/Shutterstock.com)
(画像=Evgeny Atamanenko/Shutterstock.com)
賃貸用のマンションやアパートに空室が発生した場合、「空いているのがもったいない。家族にタダで使わせようかな」と思うかもしれません。有効活用に見えますが、税金面を考えるとマイナスです。今回は、賃貸用物件を家族に無償で使わせた場合のデメリットについて解説します。

「空室を家族にタダで使わせる」は使用貸借

借主が、ある資産を「タダで使うね」「これをタダで使って私が収益を得た後返すね」と約束し、貸主から資産を借りることを「使用貸借」と言います。賃貸物件を家族にタダで使わせる行為は、使用収益です。家族間での使用収益は、多くの場合契約書を作成せず、口約束で行われます。

空室を使用貸借で借りた場合、借主の権利は非常に弱いです。それは、借地借家法による保護を得られないからです。さらに貸借期間の定めがない場合は、貸主から「今すぐ出て行って!」と言われたら出ていかざるを得ません。

収入の少ない子供や老親に、賃貸物件の空室をタダで貸して住まわせるのは一見いいことに見えますが、税金面では複数のデメリットがあり、損をすることになります。

使用貸借すべきでない理由①所得税

使用貸借をした場合、所得税の面で以下のようなデメリットがあります。

使用貸借部分についての支出や減価償却費は必要経費にならない

所得税法では、不動産所得は「年間の総収入金額-年間の必要経費の総額」で計算されます。ただし、支出したものすべてが必要経費として計上できるわけではありません。不動産収入を得るために直接必要な費用で、家事上の経費と明確に区分できるものに限定されます。

家族に対する空室の使用貸借からは、不動産収入は発生しません。また、借主が貸主と生計をともにする親族ならば、借主の空室にかかる費用(水道光熱費や損害保険料、固定資産税など)は家事上の経費に過ぎません。つまり、不動産所得の計算上の必要経費として計上できないのです。

また、賃貸借されている建物の減価償却費も通常必要経費に算入されますが、使用貸借部分については除外することになります。

借主が空室を使って得た収益は貸主に帰属する

また、タダで空室を借りている子どもがその空室を他の人に転貸して収益を得た場合には、その収益は借主である子どもではなく、タダで貸している親に帰属します。つまり、貸している側は自分自身の不動産所得に加え、子どもが得た不動産所得を合わせて確定申告をする必要があります。

これは、所得税法の考え方の一つに「実質所得者課税の原則」があるからです。この原則では、「所得税は、名義人が誰であるかに関係なく所得の実質的な帰属者に課税する」としています。

不動産賃貸など資産が基軸の収益については、「資産の実質的な所有者に帰属し、実質的な所有者が不明ならば名義的な所有者に帰属する」としています。部屋の名義が貸主ならば、転貸による不動産所得も名義人である貸主に帰属すると考えるわけです。

使用貸借するべきではない理由②相続税

不動産賃貸の事業用となっている土地・建物について相続が発生した場合、評価方法や独特の特例により評価額が下がり、相続税が少なくなる傾向があります。しかし使用貸借が発生すると、それぞれ以下のような事情で評価額が上がり、相続税も上がるのです。

土地

賃貸事業に用いられている土地は「路線価方式」「倍率方式」のいずれかで評価した後、借地権割合、借家権割合、賃貸で借主に使われている部屋の面積の割合を加味して評価します。空室があると賃貸で用いられている部屋の面積の割合が下がり、評価額が上がります。全室空室だと、さらに評価額が上がります。

また不動産賃貸に用いられている宅地は、小規模宅地等の特例の適用により200平方メートルを上限に評価額が50%下がります。しかし使用貸借部分については、原則としてこの特例の適用対象外です。

建物

建物も土地と同様、借家権割合と賃貸で借主に用いられている部屋の面積の割合を加味するため、評価額が下がるのが一般的です。しかし使用貸借に用いられている部屋については、土地と同様の扱いとなり、評価額が上がります。

空室が出たら使用貸借ではなく営業努力を

空室が出たら、家族に使用貸借するのではなく、賃貸借契約書を作成し通常の家賃で賃貸すれば、デメリットはなくなります。さらに、空室が発生しても入居募集の広告をかけるなどをして空室期間を1ヵ月程度に抑えれば、損失を最小限にすることができます。

不動産賃貸業は、ビジネスです。公私混同せず、営業努力を怠らない姿勢が賃貸業のメリットを最大化するカギになります。

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