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2019.4.4

ホームインスペクションが目指す世界

(写真=NOBUHIRO ASADA/Shutterstock.com)
(写真=NOBUHIRO ASADA/Shutterstock.com)
中古住宅の状態を把握する手段である「ホームインスペクション」。日本でもその存在が広く認知されるようになってきました。ホームインスペクションの現状や目指している世界とは、どのようなものでしょうか。

新築好きの日本人、中古が普通の欧米人

日本の住宅流通量に占める中古住宅の流通シェアは約14.7%(2013年)であり、圧倒的に新築の方が優勢となっています。近年では、中古住宅のシェアは増えていますが、それでも欧米諸国と比べると6分の1程度の水準です。日本人が新築好きな理由はさまざまですが、一つには建物の耐用年数の違いが挙げられます。

日本の住宅は、木造なら20年程度で価値がゼロになると考えられていました。そのため、不動産マーケットでも、築20年を過ぎた建物の価値はほぼゼロ円として試算されていたのです。しかし、同じ年齢の人でも健康状態に違いがあるように、築20年の建物であっても、状態はまったく異なります。定期的な修繕・メンテナンスをしている家は、まだまだ使えますし、管理が徹底されていない家はボロボロの状態にあるといっていいでしょう。

中古住宅の健康状態を明らかにすれば、築年数によらず、建物の価値を可視化することが可能となり、価値に合わせた取引ができます。建物の価値を明らかにするために詳細な調査を行うことが「ホームインスペクション」です。日本語では「建物状況調査」や「住宅診断」などといわれます。2013年、国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を公表して以来、徐々にホームインスペクションの存在が知られるようになってきました。

ホームインスペクションでは、主に以下の項目の調査を実施します。建物の主要部分の検査をすることで、買い主は買ってもいい建物かどうかを判断しやすくなるわけです。
 

構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの

(例)蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損など

雨漏り・水漏れが発生している、または発生する可能性が高いもの

(例)雨漏りや漏水など

設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの

(例)給排水管の漏れや詰まりなど
出典:国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」

ホームインスペクションの説明などが義務化

ガイドラインの公表によってある程度は知られるようになってきたホームインスペクションですが、まだ一般に普及しているとはいえません。そこで、政府は普及をさらに後押しする施策を実施しました。2018年4月に施行された改正宅建業法のなかで、中古住宅の取引をする際、媒介契約書のなかにホームインスペクションのあっせんの有無を記載することを義務化したのです。

ただし、義務化されたのはホームインスペクションの実施そのものではなく、以下のことです。

・不動産会社がインスペクション業者のあっせんの可否などについて説明すること
・ホームインスペクション実施済みならその概要などを説明すること
・建物の状況について売り主・買い主が確認した内容を書面で交付すること

これにより、不動産取引の場でホームインスペクションの存在が認知されるようになり、活用も促進すると考えられます。

中古物件を安心して売買できる仕組み

日本はこれまで、「建てては壊し、また建てる」という「スクラップ&ビルド」で経済を発展させてきました。しかし、「人口の減少」「住宅の需要減少」「地球環境への配慮」といったことも重視されるなかで、スクラップ&ビルドは以前ほど求められてはいないのかもしれません。「良いものを建て、きちんと手入れして長く使う」という社会に移行する機運が高まっています。

良いものを長く使うためには、定期的な修繕・メンテナンスが欠かせません。そして、修繕・メンテナンスをしたら、その修繕記録をきちんと残しておくことが、売買の際の重要な情報になります。さらに、売却の際にインスペクションを行い、現在の健康状態を知ることができれば、買い主の安心材料は増えるでしょう。

ホームインスペクションや修繕履歴は、売り主にとっても買い主にとっても中古住宅を安心して取引するための仕組みといえます。

ホームインスペクションの可能性

不動産は、多くの人にとって一生に一度の高い買い物です。インスペクションや修繕履歴の活用が広がれば、新築好きの日本人の多くが、中古にも目を向けるようになるのではないでしょうか。また、中古価格が適切に売買できるセカンダリーマーケットが広がれば、「中古での売却を想定したうえで購入する」という、これまでにないお金の使い方が浸透する可能性もあります。

ホームインスペクションの普及は、日本人のお金との関わり方に変化を起こしうる出来事といえるかもしれません。
 

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