約120年ぶりの民法改正!不動産取引への影響は
(画像=stockcreations/Shutterstock.com)

私たちの暮らしに身近な法律「民法」が、改正されることになりました。具体的には、2020年(令和2年)4月1日より、「民法の一部を改正する法律」が施行されます。民法は主に「財産関係(売買、賃貸借、不法行為など)」と「家族関係(夫婦、親子、相続など)」を規定している法律なのですが、今回は前者に含まれる「債権法」の改正です。

債権法とは、民法のうち債権および債務関係を規定している法律の総体です。民法第3編に該当し、「第1章総則」「第2章契約」「第3章事務管理」「第4章不当利得」「第5章不法行為」で構成されています。これらのうち、主に改正されるのは「消滅時効」「法定利率」「約款(定型約款)」「保証(保証人の保護)」の4項目です。

なぜ民法が改正されるのか?

そもそも、なぜ民法は改正されることになったのでしょうか。その背景には、民法成立から現在までの社会経済における変化への対応と、裁判や取引における基本ルールを条文上でも明確にするという意図があります。現民法が成立したのは1896年(明治29年)のこと。不平等条約改正に対応するべく編まれたことを考えると、かなり昔に作られたことがわかります。

約120年にわたって実質的な見直しがされなかった民法には、すでにさまざまな面で不具合が生じています。債権法に関連する部分で言えば、情報化社会の進展などにともない、現代の取引は複雑化・高度化しています。加えて、高齢化社会への対応も必要であり、よりシンプルでわかりやすい民法が求められているのです。さらに、判例や法解釈の法制化も求められています。

4項目の改正ポイント

今回改正された項目について、ポイントを見ていきましょう。冒頭で紹介したように、債権法分野では主に「消滅時効」「法定利率」「約款(定型約款)」「保証(保証人の保護)」の4項目が改正されます。

消滅時効

これまでの民法では、債権が消滅時効によって消滅する期間を権利を行使することができるときから原則10年としていました。例外的な措置として、飲食料や宿泊料、弁護士報酬、医師の診療報酬など、職業別に消滅時効期間を定めていたのですが、今回の改正で職業別の時効期間は廃止され、「知ったときから5年」「権利を行使することができるときから10年」に一本化されています。

法定利率

民法では、契約の当事者間で利率や遅延損害金に関する合意がない場合に適用される利率として「法定利率(5%)」を定めています。今回の改正では、社会的に低金利が続いている状況を加味して、現行の5%から3%へと引き下げられています。また、市中金利に合わせて緩やかに上下させる変動制も導入され、3年ごとに法定利率を見直します。

約款(定型約款)

保険やインターネットサイトの利用、電気・ガスの供給など、私たちの身の回りにはさまざまな「約款(定型約款)」が使用されています。これらは大量の取引を迅速に行うために用いられているのですが、今回の改正では通例のままであった定型約款が契約内容となるための要件が明文化されています。

要件に該当する場合でも、相手方の利益を一方的に害する契約や信義則に反する内容の条項に関しては、契約内容とはならないことも明文化されています。また、約款の変更がどのような要件で可能になるかについても規定されています。

保証(保証人の保護)

不動産賃貸などにおいて保証契約はごく一般的に行われていますが、今回は保証人の保護に関する改正も行われています。具体的には、「極度額の定めのない個人の根保証契約は無効」となり、また「公証人による保証意思確認の手続き」や「情報提供義務の規定」などが新設されています。いずれも、保証契約における個人の権利を守るための改正です。

約120年の社会変化に対応するために

その他、不動産取引に関しては「意思能力(判断能力)を有しない状態で行った法律行為が無効であること」や「敷金および原状回復の基本ルール」など、これまで明文化されていなかったものも条文に明記されています。約120年ぶりの民法改正に、適切に対応できるよう内容を把握しておきましょう。

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