不動産の未来を読み解く!開発・流通・投資の行く末は?
(画像=Thampapon/Shutterstock.com)
山中勇樹
山中勇樹
ライター/編集者。主に企業経営者への取材・インタビューを通じて、ビジネス系の文章(書籍・雑誌等)を執筆。インタビュー実績多数。

「衣・食・住」という、私たちの生活を支える基本3要素。そのうち、日本経済の発展にも深く関わってきた“住(不動産)”の動向は、景気の趨勢を示すバロメーターの役割を果たしてきたこともあり、指標として注視している人も多いことでしょう。加えて、不動産は中長期的な開発計画がベースになっていることもあり、今後の日本経済や社会情勢がどのように変化していくのかを予想するのにも役立ちます。

とくに、今後の動向として注目されているのが、2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック」です。東京都内をはじめとして、五輪関連の工事が急ピッチで進められていることに加えて、五輪後も見越した“レガシィ”としての不動産開発にも力が入れられています。これから先、日本の不動産市場はどのように推移していくのでしょうか。過去の分析をふまえつつ、未来を読み解いていきましょう。

トレンドと不動産関連の大きな動き

ここ数年、ニュースでも取り上げられている不動産関連のトピックには、いくつかのキーワードがあります。たとえば、少子高齢化にともなう人口減少や、地方からの人材流出、空き家・空き地等の有休不動産活用などがその代表例ですが、その他にも、人生100年時代、働き方改革、女性・高齢者・外国人人材の活用、環境問題など、多種多様な話題が不動産市場の動向に直接的・間接的に関係しています。

そういったマクロ・ミクロの動きを注視しているだけでも、不動産関連のトレンドが見えてくるものです。重要なのは、未来を読み解く視点をもち、幅広い情報収集を重ねていくこと。その際のポイントは、特定の物事が市況に与える影響と、その因果論理を見通すことでしょう。ひとつひとつの出来事やムーブメントが、1年後、5年後、10年後にどうつながっていくのか。それが、予測の精度を高めます。

今後の不動産市場を読み解く

たとえば、国土交通省が開催している「社会資本整備審議会産業分科会不動産部会」では、各界の有識者が参加し、社会経済の変化をふまえた幅広い議論が行われています。特筆すべきなのは、不動産業の持続的な発展を図るために、10年程度先を見越した指針を設けていること。同会が作成している資料「新・不動産業ビジョン2030(仮称)」から、ポイントを絞ってその内容を紹介しましょう。

不動産「開発・分譲」について

不動産の開発・分譲に関しては、いわゆる「ストック型社会」への進展を見越し、良質な不動産を市場に供給することが重要とされています。具体的な内容としては、耐震性、省エネ性、ユニバーサルデザイン等に優れた不動産であることに加えて、老朽化した不動産の「たたみ方」まで含めた活用や、ホテル、MICE施設、物流施設、さらにはサテライトオフィス・シェアオフィスなどの活用も、新たなニーズとして注目されています。

不動産「流通」について

不動産の流通に関しては、不動産取引の透明性・安全性・信頼性を高めていくことに加えて、消費者や地域の多様なニーズに対応するためのコンサルティング能力向上についても言及されています。そのためには、設計士や建築士、金融機関などの幅広い関係者が相互にネットワークを構築し、よりきめ細かい需要に応えていくことが求められます。また、空き家問題の拡大をふまえ、より地域性を重視した不動産の提案も必要となりそうです。

不動産「投資・運用」について

不動産の投資に関しては、リート等の市場が資産規模30兆円を超えて拡大していくと期待されています。将来的には、米国に比肩する規模の上場リート市場を構成することを視野に、発展を続けていくと見込まれます。加えて、多様化する不動産投資業界の実情をふまえ、不動産投資リテラシーの向上や環境整備など、個人と業者双方への対応が求められます。フィンテックやAIの活用など、投資助言サービスの普及もその一翼を担うかもしれません。

不動産は過去と現在でみる

安全性と安定性が求められる不動産は、中長期的な視点で投資していくことが求められます。そしてそのための指標となるのは、現在だけでなく、過去と未来をふまえた、起こりうる変化や数値データなどです。完璧に未来を予測することはできませんが、過去と現在から未来を見通すことは可能です。そういった幅広い視点こそ、より堅実な投資につながるヒントをもたらしてくれることでしょう。

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