サラリーマン大家の先駆け、赤井誠さんに聞く

不動産投資家・赤井誠さんのインタビューの下編。不動産投資の初心者〜上級者まで役立つ内容です。伺うテーマは、「賃貸経営で成功するためのポイント」「物件の売却タイミングの考え方」「失敗しないための事業承継」などについてです。

【プロフィール】
神奈川県横浜市生まれ。北海道大学・大学院修了後、電機メーカーで勤務。サラリーマン時代に副業として不動産投資を開始。その後、2013年に退社、専業大家へ。2022年4月段階の所有物件数は日本国内19棟・129室、ハワイとバンコクにコンドミニアムを所有。著書に『めざせ!満室経営 本気ではじめる不動産投資』(すばる舎)などがある。

サラリーマン大家の先駆け、赤井誠さんに聞く

目次

  1. 成功するには、「世の中の歪み」を見つけられるかが鍵となる
  2. 売却するかどうかは、賃料と入居率が一番の判断材料
  3. 相続税対策だけの事業承継はリスクが大きい
  4. 結局のところ、不動産投資をしていることが楽しい

成功するには、「世の中の歪み」を見つけられるかが鍵となる

−さきほど不動産投資家が成功するには、知識が大事とのお話がありました。ほかに成功するために必要な要素はありますか。

成功するためには、世の中の歪み(ひずみ)を見つけることがポイントです。といっても、実感しにくいでしょうから一例を挙げてみましょう。

例えば、築50年の一棟物件(木造)には、多くの不動産投資家が見向きもしないでしょう。
そのままの状態では新規の入居者が見つけにくい。建て壊そうにも費用がかかる。しかし、この築古一棟物件をフルリフォームすれば、新築に近い家賃が得られるケースもあります。

それにも関わらず、この物件の建物の固定資産税評価は築50年なんですよ。つまり、築古一棟物件をフルリフォームすることで、家賃は新築とそれほど変わらないのに、固定資産税が安い物件を経営することができる。

まあ、これは世の中の歪みの一例です。いろんなところに、儲けの源泉となる歪みがある。それをどれだけ見つけられるかが成功を左右します。

−トレンドを追うだけでは、成功をおさめにくいというわけですね。

例えば一時期、ボロ戸建てをDIYで直して貸す手法が注目されましたが、それが流行るとみんながそっちの方向に流れていく。この手法自体は否定しませんが、エリアも違えば、その投資家が置かれている状況も違う。本当にそのやり方が自分に合っているか、疑うことが大事です。

−社会の歪みを見つけるためには、どんなことを意識すべきでしょうか。

多くの場合、歪みは実践することで見つかるものなんですね。だから、僕はいろんな投資をやっている。いろんなジャンルの不動産投資に加えて、駐車場やコインパーキングも経営しています。それによって、いろんなところに歪みが存在することがわかってくる。

その意味では、情報の知識だけでなく、実践を通して得た知識も大切なんですね。どこの世界もそうですが、実践で得た知識を持っている人には勝てないものですよ。

ただ、なんとなく日常を過ごすのではなく、私は散歩や旅行をしていても不動産屋を見つけると相場をみたりします。この土地値でこの家賃なら利回りは○○%でるなぁとか。家賃は安いけど駐車場は高いなぁとか。常になにか「歪み」がないかを気にする意識は大事ですね。

売却するかどうかは、賃料と入居率が一番の判断材料

−不動産投資は、物件の売却タイミングが難しいとの声も聞かれます。赤井さんは売却をどのように判断されていますか。

「減価償却期間がどれくらい残っているか」で売却タイミングを判断する不動産投資家も多いでしょう。僕も少しは意識します。基本的には減価償却期間がなくなったら、売却をいったん考える感じですね。

ただ減価償却期間がなくなっても、入居率が良くて税金を払っても十分な手残りがあるなら、そのまま所有していてもいいかなと判断することもよくあります。

−減価償却期間は売却の目安の1つでしかないわけですね。

不動産投資家は「売却益重視」と「家賃重視」の2種類があります。僕はインカムゲイン(家賃収入)重視なので、賃料や入居率が売却の一番の判断材料になります。退去が発生したとき、賃料を下げないと決まらない物件、空室を埋めるのに苦労する物件は、そろそろ売却かなと考えます。

−物件の築年数も売却を判断する材料になりますね。

いえ、築古だからという理由だけで売却はしません。最近は、住宅設備を入れ替えたり、外壁を塗り替えたりすれば、新築に近い物件にできますからね。僕が所有している一番古い物件は築60年超です。それでも全面リフォームをすることで新築同様になり、賃料も入居率も問題ありません。こういった物件は築古でも売却の対象になりません。

−物件を購入されるときに、ある程度の売却タイミングを考えていますか。

出口戦略を考えていないわけではありませんが、物件を取り巻く状況は刻々と変わっていきますからね。それに合わせて臨機応変に考えています。

わかりやすく言うと、物件購入後に地域の再開発の話が出てきて入居率が上がれば、家賃収入重視なら売らなくてもいいかなと判断する材料になる。そこまで大きな出来事でなくても、近所にコンビニができたり、汚かった隣家が新しい家になって周辺環境が改善されたりすることも入居率にプラスです。

こういった周辺環境というのは、僕の力だけではどうにもならない。だから臨機応変な対応が大事なんですね。逆のパターンもあります。コンビニが近くにあったのに撤退してしまった、こんなときは入居率にマイナスの影響も考えられます。

相続税対策だけの事業承継はリスクが大きい

−赤井さんくらいの資産規模になると、事業承継も意識するのではないですか。

そうですね、僕もそれなりの年齢になってきたので、事業承継についてはいろいろ考えています。大枠では、「相続税対策」と「投資家の経験」、この2つのテーマで考えています。

相続税対策で言えば、僕には子どもが2人いますが、不動産を管理する法人を2つ、立ち上げました。ちなみに、この法人の株式の大半を子どもたちが所有しています。僕が所有している株式の割合は全体の一部ですが、黄金株(拒否権付株式)になっているため、実質の経営権は僕と妻にあります。

経営権を渡すのは、「子どもたちに任せて大丈夫」と僕が思えるときですね。最悪、将来的に子供たちに自覚が芽生えず、僕が任せて大丈夫と思えないことも考えられるため、潰す権利を持っている状態にしてあります。
ここまでせっかく資産をつくってきたので、「このまま、うまくやってほしいなぁ」というのが親としての願いではありますが。

−「お子さんたちに任せて大丈夫」という環境をつくるために、どのような取り組みをされていますか。

不動産投資を実践させています。例えば、区分マンションや一戸建てを、私と一緒に彼らなりに考えてリフォームをさせてみたり、自分が所有する一棟物件を譲って実際に経営をやらせてみたり。

−相続税対策だけでなく、承継者を経営者として、不動産投資家として育成することに力を注がれているのですね。

これはサラリーマンのときの経験が大きいですね。僕はサラリーマン時代、一応それなりの役職で仕事をしていました。振り返って見ると、自分でプロジェクトを動かせばうまくいくけど、部下に任せたらうまくいかない、自分が現場にいなければうまくいかないというケースがよくあったんですね。

僕は仕事ができるタイプのサラリーマンだったかもしれないけれど、人材育成の部分ができていなかった。それを繰り返したくない。だから今、人材育成に力を入れているわけです。

地主さんの事業承継で、お子さんが継承してお金持ちになって、フェラリーリ乗り回して最後すべてなくなったなんてよくある話ですよね。そうならないように、自分の経験してきたこと、資産を守るために大事なことをしっかり伝えていきたいですね。

結局のところ、不動産投資をしていることが楽しい

−不動産投資家して成功されて、事業承継も進みつつある。そんな赤井さんは今後の人生をどうイメージされていますか。

不動産投資家として駆け出しの頃は、資産が増えていくことが楽しかった。でも、資産がある程度の規模になったら、人生を楽しみたいという気持ちが強くなってきた。だからといって、毎日ゴルフだけをしていても、つまんないですよね。

このへんのバランスが難しいですね。今の僕はゴルフと仕事があったら、ゴルフ優先。だからといって、ゴルフばかりの生活というのも違う。

人生を楽しむために何をすべきかを自問自答すれば、結局のところ、不動産投資なんですね。不動産投資を通して考えたり、もっとよい物件にできると試行錯誤ししたり、そういったことが純粋に楽しい。

そして、僕が不動産投資で得た経験や知見を、コラム執筆や取材などを通して、少しでも世の中に伝えていければ嬉しいですね。

サラリーマン大家の先駆け、赤井誠さんに聞く

赤井誠さんの個人ブログ、コラム(外部リンク)
ブログ:http://akachan626.blog.fc2.com/
コラム:https://www.kenbiya.com/ar/cl/baby/

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