購入型は、もっとも馴染みのあるクラウドファンディングの種類といってよいでしょう。日本でクラウドファンディングがはじまった2011年当初は「クラウドファンディングといえば購入型のことだった」といっても過言ではありません。今でも人気の高いスキームです。
購入型クラウドファンディングの仕組み
購入型クラウドファンディングとは、起案者がアイテムやサービスのアイデアをプラットフォーム上でリリースして、支援者から資金を募るものです。 通常のアイテムやコンテンツは、ショップなどを通じて購入します。購入型ではプラットフォームを通してアイテムやサービスを予約購入するようなイメージです。 購入型クラウドファンディングには「All or Nothing型」と「All In型」の選択肢があります。「All or Nothing型」は目標金額に達したときのみプロジェクト成立、「All In型」は目標金額が未達成でもプロジェクト成立になります。 国内の購入型クラウドファンディングの主要プラットフォームとしては、「Makuake(マクアケ)」「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」「READYFOR(レディーフォー)」などがあります。 日本のクラウドファンディングのシェア(新規プロジェクト支援者数)を種類ごとに見ていくと、購入型が全体の約6割を占めます(矢野経済研究所調べ)。数あるクラウドファンディングのなかでも、もっとも社会に浸透している種類といってよいでしょう。
購入型クラウドファンディングのリターン
購入型クラウドファンディングのリターンの種類は実にさまざまです。一例としては、農産物、食料品、インテリア、電化製品、衣料品、寝具、お酒などです。 支援する資金額によって、「商品の内容や個数を変える」「割引率を変える」などリターンにランクをつけるケースもよくあります。 また、購入型クラウドファンディングが飲食店などの開業資金の調達に使われることもあります。その場合はオープン後に使える食事券などでリターンを設定します。
購入型クラウドファンディングのリスク
購入型クラウドファンディングの支援者のリスクとしては、起案者が約束を履行しないケースが考えられます。ただこれは、購入型のリスクというよりも、すべてのクラウドファンディングに共通するリスクといってよいでしょう。 リスク回避の方法としては、掲載基準の厳しいプラットフォームを選ぶというものがあります。 支援者の他のリスクとしては、「クオリティの低いアイテムやサービスが送られてきた」「説明していた内容とほど遠いアイテムが送られてきた」「いつまでたってもアイテムが送られてこない」「開発・製造が大幅に遅れている」といったケースが考えられます。 一方、起案者のリスクとしては、クオリティの低いアイテムやサービスを提供してしまうことで、社会的な信頼を失うことが挙げられます。
資金調達の方法
購入型クラウドファンディングのプラットフォームを通して資金を調達するのが一般的です。これまでになかった画期的なアイデアを打ち出せれば、目標金額の1万%超えといった反響も夢ではありません。
歴史と市場規模
購入型クラウドファンディングのプラットフォームが日本で始まったのは2011年です。この年に「CAMPFIRE」「READYFOR」がリリースされ、インターネットの本格的な普及とともに市場を拡大させていきました。 日本クラウドファンディング協会の「市場調査報告書(2020年6月リリース)」によると、現在の購入型クラウドファンディング(寄付含む)の国内市場規模は次のように推移しています。 2017年:77億円 2018年:115億円 2019年:169億円 なお、矢野経済研究所の「2018年版 国内クラウドファンディングの市場動向」によると、国内のクラウドファンディング市場全体に占める購入型の割合は5.9%です(2017年)。
法的な規制の有無
購入型のクラウドファンディングには金融商品の性格はありません。そのため、特定商取引法などに抵触しなければ起案者が規制されることはありません。利用するプラットフォームのルールさえ守っていれば、自由に資金を募ることができます。
資産運用の性格
起案者があらかじめ決まったアイテムやサービスの提供を受けた時点で、プロジェクトは完了します。そのため、購入型のクラウドファンディングには、資産運用の性格はありません。