2020年4月ベトナム・ハノイで初開催となるはずだったフォーミュラ・ワン(F1)ベトナムグランプリが、新型コロナウィルスの流行を受けて延期となりました。
F1は世界中で人気を博してきました。チケットはどこの国でも高価なことから、観客には富裕層が多く、カナダのVIPチケットは7,000USドル(約76万円)を超えると言われています。
シンガポールグランプリは、多くの観光客を呼び寄せ、観光だけでなく、エンターテイメント、ホテル、レストラン業界にも恩恵をもたらしています。
F1に訪れる人の平均滞在日数は3.96日、F1レースの期間のホテル客室料は二倍、三倍に跳ね上がります。
シンガポールの通商産業省(Ministry of Trade and Industry(MTI)によると、2008年から2018年の間に、49万人以上が海外からシンガポールグランプリを見に訪れ、観光収入に14億シンガポールドル(約1,060億円)以上の貢献がありました。イベントは、全世界に配信され、視聴者数は8億4,000万人にのぼります。
アブダビグランプリには、2018年、135,000人が訪れ、うち80,000人が外国人でした。
アラビアン・ビジネスのオンラインニュースは、アブダビの文化観光局(Department of Culture and Tourism)の統計として、レース開催時期前後に訪れた観光客により、ホテル収入は2018年10月の4億8,300万UAEディルハム(約144億円)から、2018年11月は6億8,900万UAEディルハム(約206億円)に増加。
日当たりの室料は10月の349 UAEディルハム(約10,430円)から11月は515 UAEディルハム(約15,390円)に増加。
販売可能な客室1室あたりの売上を表すRevPAR(Revenue Per Available Room)は、10月の258 UAEディルハム(約7,700円)から11月は416 UAEディルハム(約12,430円)に増加したと報じています。稼働率も79%(10月)から83%(11月)へと上昇しています。
モナコ統計局(Monegasque Institute of Statistics and Economic Studies (IMSEE))は、2017年のモナコグランプリについて、4日間の開催期間で9,000万ユーロ(約107億円)の経済効果があったと発表しています。
これには、イベントオーガナイザーが支出する直接的な恩恵2,170万ユーロ(約26億円)と、参加者や観戦に訪れる人々がモナコで支出する間接的な恩恵6,830万ユーロ(約81億円)が含まれています。
期間中のホテル業界もまた、その恩恵を十分に受け、稼働率はほぼ100%に達するようです。
F1の開催期間は、モナコのホテル業界の年間カレンダーでも重要な時期なのです。モナコグランプリへの参加者は日当たり50,000人~65,000人と見積もられており、4日間で実に200,000人以上が皇居と皇居外苑を足したより少し小さい程度の2.02平方キロメートルの国に訪れるのです。
経済効果も期待され、ハノイ市民だけでなくベトナム国民が心待ちにしていたベトナムグランプリでしたが、バーレーンで行われる予定であったバーレーングランプリとともに、新型コロナウィルスCOVID-19の世界的流行を受けて延期となりました。
バーレーンは、2020年3月20~22日にバーレーンの首都マナマから南へ30キロのサキールにあるインターナショナル・サーキットで、ベトナムはハノイ市ナムトゥリエム区の市街地サーキットで2020年4月3~5日に行われる予定でした。
2015年に住宅法が改正され、ベトナムでは外国人投資家がコンドミニアムなどの不動産を購入できるようになりました。F1のレース会場に近く、部屋からの観戦が期待できるコンドミニアムも、韓国、日本をはじめとする海外の投資家からの注目を集めていたようです。
フォーミュラ・ワン・ワールド・チャンピオンシップと国際自動車連盟(FIA)は、バーレーンやベトナムのレースプロモーター、現地の保健当局などと連携して状況をモニタリングし、状況が改善すれば延期後の代替日について検討していきたいとしています。
ベトナムグランプリの延期のニュースは、2020年4月17~19日で行われる予定であった中国グランプリの延期(延期日程未定)と、2020年3月13日シーズン開幕戦となるオーストラリアグランプリの中止に続くものです。2020年3月20日には、1954年以来で初めて、モナコグランプリも中止が決まっています。
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