不動産クラウドファンディングは1万円からという少額で投資できる新しい形の不動産投資として注目を集めています。一方で、不動産クラウドファンディングは儲からないという声も聞きます。不動産クラウドファンディングは本当に儲からないのでしょうか。
本記事では、不動産クラウドファンディングのメリットとデメリット、儲からない事態を回避する方法を解説します。
目次
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、インターネットを用いて不特定多数の個人や事業者、企業から少額ずつ資金を集める資金調達方法のことです。「群衆」を意味するcrowdと「資金調達」を意味するfundingを組み合わせてクラウドファンディングと呼ばれています。
クラウドファンディング運営会社は、サイト上でさまざまなクラウドファンディングの募集を行っています。運営会社は起案者に代わって資金調達をし、プロジェクトが完了して得た利益の一部を支援者に分配します。
分配の方法は、投資型クラウドファンディングは金銭で行われ、購入型ではプロジェクトで完成した商品等を送付するのが一般的です。クラウドファンディングへの出資は、プロジェクトへの申し込みから支援金の払い込みまでネット決済で済むため、手間もかかりません。
クラウドファンディングには、出資の対価(リターン)によって以下の5つの種類があります。
・寄付型
社会貢献活動を行う人や企業が、プロジェクトに賛同してくれた人から寄付を集める仕組みです。募金と同じような仕組みのため基本的にリターンはありませんが、プロジェクトによっては御礼の手紙やメッセージが届く場合があります。クラウドファンディングを通じて社会に貢献したい人に向いています。
・購入型
特定の商品やサービスを開発、販売するために投資家から資金を集め、完成した商品や行うサービスをリターンとして出資者に送付する仕組みです。購入型クラウドファンディングの代表的な例といえば、キングコング西野さんの絵本『えんとつ街のプペル』プロジェクトがよく知られています。これは制作資金をクラウドファンディングで募集し、出資者には完成した絵本をプレゼントするというものでした。
以上2種類は金銭的なリターンがないことから、【非投資型】と呼ばれます。一方で明確なリターンがある【投資型】は次の3種類に分類できます。
・融資型
・ファンド型
・株式型
今回、主に解説するのはこれらの投資型クラウドファンディングです。この投資型3種類について次項で詳しく解説していきます。
クラウドファンディングのタイプ別市場規模は?
融資型とファンド型クラウドファンディングを行う事業者には金融商品取引法(金商法)に基づく第二種金融商品取引業の登録、株式型クラウドファンディングを行うためには第一種金融商品取引業の登録が必要です。投資家を守るためのさまざまな規制をクリアしなければならず、金融庁の厳しい監視を受けるため、規制のない寄付型や購入型に比べると参入障壁が高いといえます。
では、各タイプ別のクラウドファンディングの市場規模はどのように推移しているのかを、一般社団法人日本クラウドファンディング協会が公表している「クラウドファンディング市場調査報告書」(2021年7月9日公表)のデータから確認してみましょう。
▽クラウドファンディングのタイプ別市場規模の推移(単位:億円)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|
購入型(寄付型含む) | 77 | 115 | 169 | 501 |
融資型 | 1.316 | 1,764 | 1,113 | 1,125 |
不特法型(不動産クラウドF) | 0 | 21 | 48 | 60 |
ファンド型 | 6 | 12 | 24 | 11 |
株式型 | 3.7 | 9.0 | 5.6 | 9.2 |
合計 | 1,402.7 | 1,921 | 1,359.6 | 1,706.2 |
データからいくつかの特徴が見えます。まず融資型が圧倒的に多いことです。2020年では66%と全体の3分の2を占めています。購入型は事業者であるMakuakeの東証マザーズ上場(2019年12月11日)以降注目が高まって、2020年に急速に増加しました。
不動産クラウドファンディングも年々増加していますが、ファンド型と株式型はあまり伸びが見られません。今後も不動産クラウドファンディングはシェアを伸ばしていくと予想されます。
融資型
融資型クラウドファンディングは別名「ソーシャルレンディング」とも呼ばれます。2015年の金商法改正により、融資型が増えてきました。
これはプラットフォームの運営会社が仲介となり、「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」をマッチングさせるという仕組みです。数千万円単位の募集をかけ、不特定多数から資金を集め、金利をリターンとして分配します。運営会社は銀行と同じように、財務諸表や決算書等で融資先を審査するため、リスクレベルはあまり高くありません。しかしリターンは金利なので上限があります。
ファンド型
特定の事業に対して投資し、相応の分配金や特典を受け取るという、購入型と融資型を足したような仕組みです。特典とは、その事業で提供されるものやサービスなどで、金銭的なリターンを得るだけでなく、社会貢献的な要素も持つところが特徴です。
すでに事業が決まっているので目算が立てやすく、ミドルリスク、ミドルリターン投資といえます。
株式型
株式型は、2015年の金商法改正で、非上場株式の発行を通じた資金調達を行うための手段として創設されました。ただし1社あたり年間1億円未満の調達に限られ、投資家の出資上限は1社につき年間50万円という規制があります。将来上場すれば、その上場益がリターンとなります。一方で事業がうまくいかず失敗することもあり得るので、ハイリスク、ハイリターン投資といえます。
ここまで、クラウドファンディングの概要について紹介しました。ここからは、不動産クラウドファンディングについて、メリットとデメリット、儲からない事態を回避する上手な運用方法について解説していきます。
不動産クラウドファンディングのデメリット
不動産クラウドファンディングには以下のようなデメリットがあるため、儲からないと思う人がいるようです。儲かるか儲からないかは代表的な5つのデメリットを把握したうえで、後から紹介するメリットと比較して判断するとよいでしょう。
1.元本割れのリスクがある
元本保証ではないので、運用が上手くいかなかった場合は元本を割り込む可能性があります。後述する「優先劣後方式」により、一定範囲の損失までは事業者が負担しますが、範囲を超えた損失が出た場合は元本が毀損するケースも考えられます。とはいえ元本割れになるケースは稀なので、それほど心配する必要はありません。
2.途中解約ができない
不動産クラウドファンディングは原則として途中解約ができません。そのため使う予定のあるお金で投資するのは避けたほうが無難です。資金が必要になることを前提にするなら、3ヵ月、6ヵ月など短期の案件を組み合わせて投資するのもよいでしょう。異なる時期に年に数本投資すれば、時間差で償還を迎えるので、資金が必要になったときにも対応できます。
3.人気の案件に投資できないことがある
不動産クラウドファンディングでは条件の良い案件には応募が殺到し、資金があっても投資できないこともあります。先着式の案件は募集開始後すぐに完売してしまうことが多く、抽選式の場合も当選倍率が高くなります。
好条件の案件に早めに申し込むには、情報の収集が大切です。おすすめなのが、不動産クラウドファンディング比較サイトに会員登録することです。メールで新着案件の情報が送信されるので、情報を受け取ったら申込開始日をカレンダーに記入しておくとよいでしょう。
また、すぐに申し込めるように専用口座に投資する資金を入金しておくなど、事前の準備を整えておくことも大切です。
4.レバレッジ効果を得られない
現物不動産投資のメリットであるレバレッジ効果を得られないのもデメリットです。不動産は自己資金だけでは購入できる物件が限られますが、銀行から融資を受けて自己資金の何倍もの物件を購入できます。その結果、自己資金だけで投資するよりもはるかに大きな収益をあげるレバレッジ効果を得られるのです。
しかし、不動産クラウドファンディングを目的に融資を受けることはできないため、自己資金の範囲で投資することになります。
ただ、不動産投資クラウドファンディングは少額で高利回りの分配金を得ることを前提にした投資です。現物不動産のように大きな収益を狙うものではないので、レバレッジにこだわる必要はないでしょう。
5.税制上の優遇措置を受けられない
現物不動産では、以下のような税制上の優遇措置を受けることができます。
繰越控除…その年度だけでは控除し切れない損失を、翌年度以降に繰り越せる制度
損益通算…不動産投資の損失を給与所得など他の所得から差し引ける制度
損失が出た場合に有利な制度ですが、匿名組合型の不動産クラウドファンディングでは適用されません。節税を目的にするなら現物不動産のほうが有利といえます。
以上のようなデメリットがあるため、不動産クラウドファンディングは儲からないと考える人がいるものと思われます。
不動産クラウドファンディングのメリット
不動産クラウドファンディングにはデメリットもありますが、以下のようなメリットがあります。これらのメリットを理解すれば、不動産クラウドファンディングは儲からないという認識が改まるかもしれません。
1.低リスクでミドルリターンが期待できる
不動産クラウドファンディングは、株式投資と比べても高い利回りが期待できます。東証プライム市場全銘柄の平均配当利回りは2.29%(2023年6月13日現在、前期基準)ですが、不動産クラウドファンディングの予定利回りはおおむね4~7%程度と株式配当利回りを大きく上回っています。
売買市場がない不動産クラウドファンディングは株式のような値下がりリスクがないので、低リスクでミドルリターンを得られる投資といえます。
2.少額で始められる
現物不動産を購入するには中古物件でも数百万円から数千万円の資金が必要です。不動産クラウドファンディングは1口1万円からの少額で始められるので、不動産投資初心者でも無理なく投資できます。初めは1口1万円の案件に投資し、運用に慣れてきたら1口10万円、50万円、100万円とステップアップしていくのもよいでしょう。
3.運用の手間が少なく管理コストもかからない
現物不動産投資では不動産会社との交渉や物件の運営管理、空室対策などオーナーのやることは多岐にわたり、投資をためらう原因にもなっています。管理を不動産管理会社に委託したとしても管理委託手数料がかかり、コストが増えてしまいます。
不動産クラウドファンディングは、それらの煩わしい業務を事業者が行うので、投資家がやることはほとんどありません。仕事を持っている人には最適な不動産投資といえます。
4.分散投資がしやすい
不動産クラウドファンディングは1口の投資額が1万円からと少額のため、分散投資がしやすい点がメリットです。また、複数のファンドに1万円ずつ投資していけば時間差でこまめに償還を迎え、分配金を受け取ることができます。
さらに資金を分散するだけでなく、マンション、アパート、ホテル、土地、商業施設など投資不動産のジャンルを分散させることもできます。ときには高利回りの海外案件に投資することも選択肢として考えられます。
5.投資家が守られる仕組みがある
不動産クラウドファンディングには、投資家保護の仕組みが用意されています。事業者も共同で損失の責任を負うという仕組みです。これはほぼ自己責任の株式投資やFX(外国為替証拠金取引)など、他の投資にはない、不動産クラウドファンディングならではの大きなメリットです。この仕組みが投資家からの信頼を高め、多くの案件が満口になる盛況につながっています。
意外に思うかもしれませんが、不動産クラウドファンディングでは事業者も出資しているのです。それが「優先劣後方式」という仕組みです。優先出資するのが投資家、劣後出資するのが不動産クラウドファンディング事業者です。
優先出資80%、劣後出資20%という案件の場合、10%の売却損が出たケースでは劣後出資の範囲内のため、事業者が損失を負担します。投資家の元本には影響しないので、元本割れが起こることは稀です。安心を高めたいなら劣後出資比率が高い案件に投資したほうがよいのはいうまでもありません。
空室対策では多くの場合、不動産クラウドファンディング事業者と資産管理会社が「マスターリース契約」(一括借り上げ契約)を結び、一定の金額で空室保証がなされます。空室の有無にかかわらず決められた家賃が支払われるため、空室損は発生しません。分配金も予定利回りのとおりに支払われるファンドが多い傾向です。
不動産クラウドファンディングで儲からない事態を回避するポイント
不動産クラウドファンディングが儲からないという見方が現実にならないように、リスクを回避するポイントを紹介します。可能な限り実践して、利益が出る事業者と案件を選ぶようにしましょう。
運用期間の長さに着目する
不動産クラウドファンディングの運用期間は案件によってさまざまです。3ヵ月の短期案件もあれば24ヵ月の長期案件もあります。ここで注意しなければいけないのは、不動産クラウドファンディングは途中解約できないことです。
長期案件が中心の事業者ばかり利用すると、資金が必要になったときに1~2年は現金化できないという事態も生じます。短期案件を扱っている事業者も利用することで短・中・長期で資金を機動的に運用できます。
募集案件の多さで選ぶ
募集案件の多い事業者を選ぶのも有効な方法です。案件が多ければ、それだけ良い案件に出会える可能性が高くなります。また、投資家から評価されているからこそ案件数が増えてきたともいえます。1つの事業者の公式サイトだけを見てもわからないので、募集案件を見るときは不動産クラウドファンディング比較サイトにアクセスすると便利です。
例えば「YANUSY Funding」のトップページには募集中の案件が掲載されているほか、募集前の新着案件も併載されているので、情報収集の際に役立ちます。
案件の開示情報を確認する
案件に関する情報の開示スタイルは事業者ごとに異なります。公式サイトの募集要項は同じ画面構成ではないので、知りたい情報が掲載されていない場合は、事業者に確認することが必要です。資金決済後にこんなはずではなかったということにならないように、不明な点は必ず事前に確認するようにしましょう。
分散投資を行う
どのような投資でも分散投資は基本です。不動産クラウドファンディングでもいきなり1口100万円の案件に投資すると資金が拘束されてしまい、機動的な投資がやりづらくなります。初めは1口1万円や10万円の案件に分散投資し、残りは優良案件が出たときすぐ投資できるようにキャッシュポジションに余裕を持たせておくことも大事です。
利回りの高すぎる案件に飛びつかない
海外案件などリスクが高いファンドは、資金を集めやすくするために利回りも高めに設定されています。利回りが高すぎる場合は何らかの理由があるので、すぐに飛びつかずに募集要項を十分に確認してから投資を決める必要があります。
もちろん、高利回り=危険という意味ではありません。募集内容を見てリスク対策がしっかりしていることが確認できた場合にのみ投資を検討するとよいでしょう。
事業者の経営状況も確認する
不動産クラウドファンディング事業者の経営状況はさまざまです。案件が豊富で投資資金がたくさん集まり経営が安定している事業者もあれば、案件数が少ない事業者もあります。
最近になって不動産クラウドファンディング事業に参入した事業者ならば案件数が少ないのは当然ですが、その場合はどの企業グループに属しているのか、親会社はどこなのか、など背景を調べることで安全性はある程度判断できます。
劣後出資の割合を確認する
売却益をメインにするキャピタル型ファンドの多くは「優先劣後方式」で募集されています。先に述べたように、事業者と投資家が共同出資するので、劣後出資比率が何パーセントかをチェックすることが大切です。出資比率は募集要項で確認できます。劣後出資比率が高いほど投資家の出資元本が毀損する確率は低くなるので、案件を選ぶ際の重要な判断材料になります。
不動産クラウドファンディングの始め方
不動産クラウドファンディングを始める手順は以下のとおりです。一般的な例であり、事業者によっては細かい点が異なるケースもあります。
1.不動産クラウドファンディング比較サイトにアクセスする
2.「募集中」の案件をチェックし、興味を持った案件を扱う事業者のページに遷移する
3.事業者のサイトで口座を開設する
4.事業者の公式サイトにログインして、投資用の専用口座の開設を確認したら、投資資金を入金する
5.募集中の案件のなかから気に入った案件を選んで投資する
不動産クラウドファンディングは低リスクで儲かる投資
不動産クラウドファンディングのメリットやデメリット、リスク回避のポイントを詳しく見てきました。不動産クラウドファンディングは儲からないという認識は誤解であることが理解できたと思います。
投資は利回りが高いほどリスクも高くなります。逆に国債など元本保証の商品であればリターンも少ないのが一般的です。ローリスクでハイリターンの投資はないことを心得ておきましょう。
不動産クラウドファンディングは元本割れのファンドが極めて少ないのに4~7%程度のミドルリターンを得られる有利な投資商品です。初心者をはじめ、リスクを避けたい人にはおすすめの投資先なので、まずは不動産クラウドファンディング比較サイトにアクセスしてみてはいかがでしょうか。
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