フィリピンの不動産業界を支えるPOGO
(画像=Syda Productions/Shutterstock.com)

POGOという言葉を聞かれたことがあるでしょうか?いまや、フィリピンの不動産市場を賑わせているPOGOについて今日は見ていきましょう。

POGOとは?

POGOとは、Philippine Offshore Gaming Operatorの略で、複数ではPOGOsと書かれます。これは、オンラインのギャンブルサービスをフィリピン人以外の外国人に提供する企業のことです。ポーカー、ブラックジャック、ルーレットなどが、バーチャルのディーラーを通しておこなわれます。このバーチャルのディーラーの舞台裏にいるテクニカルチームがPOGOを構成しています。

POGOsは、フィリピン・アミューズメント・アンド・ゲーミング公社(PAGCOR)に登録され、ライセンスを受けている必要があります。PAGCORのライセンスなく営業しているPOGOおよびその従業員は違法となります。2019年11月14日時点で、ライセンスを受けたPOGOは60社あります。これに加えて、ライセンスを得ていないPOGOは100ほどあるとも言われています。POGOで雇用されている人の数は、BIR(内国歳入庁)に登録されている限りでは108,940人なのに対し、実際は400,000人~800,000人いるとも言われています。その多くが中国人です。

というのも、中国ではオンラインギャンブルが違法だからです。近くて安上がりな代替案がフィリピンというわけです。フィリピンではオンラインギャンブルは合法で、PAGCORによって規制されています。しかし、フィリピン人はPAGCORの規則でオンラインギャンブルができないことになっています。

POGOの成長

PAGCORがPOGOから徴収する規制料収入がここ数年で急激に伸びているのがわかります。この規制料とは、総ゲーミング収入(Gross Gaming Revenue(GGR))を元に、POGOが提供するゲームの種類によって1.5%~2%の料率がかけられることで計算されます。

▼PAGCORのPOGO規制料収入の推移(単位:百万フィリピンペソ)

YANUSY

(出所:PAGCORの資料を元に作成)

POGOが不動産業界に与える影響

POGOの成長につれて、POGOのオペレーションのためのスペース確保のため、大規模なオフィススペースが賃貸されています。

オフィススペースの成約面積がPOGOの需要にけん引され、今年過去最高記録に達したとして、ザ・フィリピン・スター紙オンラインをはじめ各紙が報じています。

不動産コンサルタント会社リーチュウ・プロパティ・コンサルタンツのレポートによると、オフィス成約面積(プレリースを含む)は、過去最高の170万㎡に到達しました。

需要をけん引したのはPOGOで、738,000㎡を占めました。2018年、総オフィス成約面積のうち、POGOが占めたのは443,000㎡でした。メトロマニラ単独では、POGOによる需要が、2018年の296,000㎡から二倍の608,000㎡となりました。

オフィス成約面積をエリア別に見ていくと、ベイエリアが38%(657,000㎡)、続いてマカティが17%(292,000㎡)でした。ベイエリアは、ニノイ・アキノ国際空港と商業・エンターテイメントエリアに近いことから、POGOの主要なロケーションとなっています。

▼マニラ・ベイエリア

また、フィリピンの不動産コンサルタント、プロノーヴ・タイ・インターナショナル・プロパティ・コンサルタンツの第3四半期のメトロマニラオフィス市場概況と通年見通しのレポートでは、第3四半期のオフィス空室率について、エリア別に、ベイエリア(パサイ、パラニャケ)は0.4%、マカティは2%、オルティガスは5%、モンティンルパとタギッグは6%と報告しており、ベイエリアのオフィス需要が好調であることがわかります。

メトロマニラのレジデンシャル不動産価格も、POGO関連の外国人、主に中国人の流入により上がってきています。POGOが集中するエリアでは、50%も賃料が上昇したコンドミニアムもあるといい、レジデンシャル市場の重要なけん引要素となっています。

POGO取り締まりの動き

一方で、POGOを取り締まる動きも出てきています。

中国は、中国人の顧客を狙ったオンラインギャンブルが、人民元の違法な流出を招いているとしてフィリピンを批判、PAGCORは、少なくとも年末までの新たなライセンス付与を停止しています。

また、POGOの年間総収入に5%の税金を課す法案が、歳入委員会(House Ways and Means Committee)で可決され、法案としての成立に向けて一歩踏み出しています。

同法案は、歳入委員会のジョーイ・サルセダ議長により導入されたもので、1997年フィリピン内国歳入法の第22条、25条、119条の改定を求めるものです。これにより、POGOに対するフランチャイズ税を5%に引き上げるとともに、POGOの外国人従業員に25%の個人所得税を課すことになります。

第22条改定案では、「オフショア・ゲーミング・ライセンス取得者(Offshore Gaming Licensee(OGL))」を、オフショア・ゲーミング・サービスを提供するライセンスと権限を得たオフショア・ゲーミング事業者と、PAGCORの認可サービスプロバイダ、サポートプロバイダ、または経済特区当局または観光当局のサービスに携わる、フィリピンで正式に設立されたフィリピンを拠点とする会社、または国外で設立された国外を拠点とする会社と定義。いずれの場合でも、フィリピンにおいて事業活動を行っているとして、納税義務があると規定しています。

また、第119条の改定により、フィリピン国内の他のビジネスのフランチャイズとして営業するすべてのPOGOに対して、5%の総収入税が適用されるとしています。

最後に、第25条の改定により、POGOで働く外国人労働者がフィリピンで確実に納税することを狙っています。これらの個人は、ライセンスを受けたオペレータから支払われる給与、賃金、年金、補償、報酬、謝礼、手当について、25%の個人所得税を支払う義務があるとしています。こうすることで、POGOで働くにあたって、POGOのスタッフは地方税務署に登録することが求められることになります。

さらに、直近では、マカティ・シティが12月初旬にPOGOへの事業ライセンス・許可の発行を無期限に停止するとの声明を発表しています。理由として、POGOのためのオフィス需要とその従業員のための住宅需要により、市場が過熱状態となっていること、また関連する犯罪が増えていることを挙げています。

フィリピンの不動産シーンを急激に変貌させてきたPOGO。これらの動きを受けても、POGOの勢いは続くのか。今後も注目です。