優待クロスは知っているけど「損出しクロス」ってなに
(画像=William Potter/Shutterstock.com)

株価の上下に左右されることなく安全に株主優待をゲットできる優待クロス。一方、損を確定させるクロス取引を損出しクロスといいます。損出しクロスには投資家心理や税金の仕組み上さまざまなメリットがあります。損出しクロスの利用シーンや注意点も解説します。

有名な優待クロス。損出しクロスについては知っている?

クロス取引とは、投資において買い注文と売り注文を同時に行うことです。クロス取引は、主に株主優待を安全にゲットするために行われるため、優待クロスともいわれます。銘柄によっても異なりますが、一般的に権利確定日に株式を保有しておくことで株主優待が受けられます。そのため優待狙いの投資家が殺到し権利確定日前の株価は上がり、その後権利確定日を過ぎると株価が下がるのが一般的です。

たとえば権利確定日前に1万円で株式を買い、1,000円分の株主優待をもらったあと7,000円で株を売ったとすると、結局2,000円分損をしていることになります。この価格変動リスクを回避するのが優待クロスと呼ばれる手法です。優待クロスとは、権利確定日に現物の買い注文と信用の売り注文を同時に行います。そうすることで株主優待を受け取ったあと、購入時と同額で株式を引き渡すことが可能です。

株価の上下に左右されず安全に優待をゲットできる方法として、優待クロスは投資家の間で人気の取引です。一方、含み損のある株式を売り、同一銘柄を同数買い戻すことを損出しクロスといいます。優待クロスは有名ですが、損出しクロスについては初めて知るという人も多いのではないでしょうか。

損出しクロスの2つのメリット!利用シーンも紹介

損出しクロスのメリットは主に2つです。まず、投資家心理においてメリットがあります。含み損は投資家心理に悪影響を及ぼし、冷静な投資判断を欠いてしまうことにもなりかねません。含み損は非常に大きなストレスになることから、少しでも株価が上昇に転じた場合、すぐに手放してしまうなど誤った判断の原因になります。

しかし損出しクロスによって一度損失を確定させれば冷静な判断力を取り戻すことができます。損出しクロス後に株価が上昇に転じた場合も、落ち着いて売り時を見極められるでしょう。また損出しクロスは税金の仕組み上メリットがあります。株式の譲渡において、利益と損失がある場合、確定申告で手続きをすれば利益と損失とを相殺することが可能です。

相殺しきれなかった損失は、3年間に渡って繰り越すこともできます。そのため他の株式で利益が出ている場合は、損出しクロスによって損失を確定させることで利益を相殺し所得税を節税することができます。証券会社から源泉徴収されていた所得税が還付されることもあるため、年末は他の株式の利益状況も踏まえて損出しクロスを検討しましょう。

含み損を抱えたまま憂うつな気分で年末を迎えるより、税金上のメリットを享受しつつ新たな気持ちで年越しをしたほうが、投資に前向きな気持ちになれるかもしれません。続いては損出しクロスの注意点について解説します。

慎重な判断を!損出しクロスをする時の注意点

損出しクロスは使うタイミングによって「投資家心理を安定させる」「所得税が節税できる」などのメリットがあります。一方で、損失を確定してしまう行為には変わりありません。損出しクロスをすべきタイミングかどうかは慎重に見極めましょう。また損出しクロスにはいくつか押さえておきたいポイントがあるため注意が必要です。まず高額な損出しクロスは仮装売買とみなされてしまう危険性があります。

仮想売買とは、ある株式の売買が頻繁に行われているように見せかけることです。不正取引とみなされることがないよう、取引量には注意しましょう。また他の株式で利益が出なかった場合は税金上のメリットを得ることはできません。確定申告は1月1日から12月31日までの取引が対象となるため、損出しクロスをする時期にも注意が必要です。

損失計上される金額と利益の金額が見合っているかもしっかりと確認しましょう。

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