インフレ局面では、現金の価値が相対的に目減りしてしまうため、自身の資産を守るためには物価上昇率を超える利回りを確保することが重要になります。仮に、物価上昇率が2%台と考えると、年率3〜5%を目安に運用をしていきたいところです。
本記事では、1,000万円を低リスクで運用し、物価上昇率を超える運用パフォーマンスが狙える投資商品を紹介します。
目次
低リスク運用のリターンの目安は物価上昇率を上回る水準
1,000万円超の金融資産を所有している場合、中長期の目線を持つことができれば、過度なリスクをとることなく運用でまとまった老後資金を作ることが可能です(次項のシミュレーション参照)。
低リスクの運用を目指す場合の目標利回りとしては、物価上昇をやや上回る程度の利回りを目指すのがよいでしょう。仮に、物価上昇率2%台が長期的に持続すると考えると、これを上回る利回り3〜5%が目安になります。物価上昇率を下回ると実質上、資産が目減りしてしまいます。
1000万円を低リスクで運用すると、10年後、20年後はいくらになるのか
物価上昇率が2%台として、これを上回る利回り3〜5%で1,000万円を運用したとき、将来いくらになるかをシミュレーションしてみましょう。
はじめに、1,000万円を利回り3〜5%の低リスクで「10年間」運用した結果は次のようになります。
利回り | 10年後の資産額(元本+運用益) |
---|---|
3% | 1,349万3,536円 |
4% | 1,490万8,327円 |
5% | 1,647万95円 |
次に、1,000万円を同じく利回り3〜5%の低リスクで「20年間」運用した結果は次のようになります。
利回り | 20年後の資産額(元本+運用益) |
---|---|
3% | 1,820万7,550円 |
4% | 2,222万5,821円 |
5% | 2,712万6,403円 |
老後資金がいくら必要かは人によってそれぞれ異なりますが、低リスクで運用した場合であっても長期で運用していけば、資産額が十分増えることを確認できたのではないでしょうか。
1000万円の低リスク運用に向いている投資商品は?
ここから先は、1,000万円を低リスクで運用するための具体的な投資商品(利回り3〜5%を狙いやすい商品)を紹介していきます。
※本稿はこれらの商品や銘柄を推奨するものではありません。購入により元本割れ、または元本を上回る損失が発生する可能性があります。ご自身の判断と責任に基づいて慎重に運用をしてください。
物価連動国債ファンド
インフレ局面で有利な国内の金融商品に「物価連動国債」があります。これは日本の消費者物価指数(CPI)の値動きと連動して元本と利子が増減する債権です。この物価連動国債で運用する投資信託が「物価連動国債ファンド」です。
ファンドの性格上、期待インフレ率が上がらないとリターンを得られませんが、インフレ局面では物価上昇率を吸収する値動きが期待できます。他の低リスクの投資商品と組み合わせて、リスクヘッジのための投資先として活用することもできます。
物価連動国債をテーマにしたファンドには、以下のような銘柄があります。それぞれの直近1年または3年のリターンは次の通りです。
ファンド名 | 1年騰落率 | 3年騰落率 |
---|---|---|
日本物価連動国債ファンド | 2.43% | 3.50% |
MHAM物価連動国債ファンド | 2.43% | 3.24% |
東京海上セレクション・物価連動国債 | 2.43% | 3.40% |
eMAXIS 国内物価連動国債インデックス | 2.17% | 3.14% |
不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングも、低リスクで運用しながら物価を上回る利回り(3〜7%程度)を確保しやすい投資商品です。
不動産クラウドファンディングの仕組みは、インターネットで大勢から集めた資金(1口あたり10万円ほどが主流)で不動産を購入・運用し、利益を投資家に配分するというものです。運用期間や利回りなどの一例は次の通りです。
運用期間 | 想定利回り | 一口金額 | 応募方式 | |
---|---|---|---|---|
A社 | 18ヵ月 | 4% | 1万円 | 先着式 |
B社 | 18 ヵ月 | 8% | 10万円 | 先着方式 |
C社 | 6ヵ月 | 3% | 1万円 | 抽選式 |
D社 | 3ヵ月 | 9% | 10万円 | 抽選式 |
運営事業者やファンドの対象物件によってリスクは変わりますが、銘柄を厳選することで低リスクでの運用が可能です。低リスクのファンドを厳選する際のポイントは次の通りです。
・上場企業や社歴の長い企業がファンドを組成している
・運用物件が住居系である
・賃貸ニーズの高いエリアで物件を運用している
・優先劣後方式を採用しており、劣後出資割合が高い
・インカム型を採用している など
優先劣後方式とは、空室や売却損などの影響で損失が出た場合、ファンドを組成した事業者が投資家よりも優先して損失を引き受ける仕組みのことです。つまり、投資家の元本が一定の範囲で守られることになります。
優先劣後方式やインカム型について詳しく知りたい人は、下記の関連記事をご参照ください。
関連記事①:不動産クラウドファンディング選びで「優先劣後方式」を重視すべき理由
関連記事②:キャピタル型とインカム型の違いとは?不動産クラウドファンディングの事例を紹介
不動産小口化商品(任意組合型)
富裕層から人気を集める低リスクの投資商品の1つが不動産小口化商品(任意組合型)です。1口あたりの投資額で比べると、不動産クラウドファンディングの10万円程度に対し、不動産小口化商品は100万円程度からとなっています。
不動産小口化商品の利回りで目立つのは2〜3%程度。この商品が低リターンなのに注視される理由の1つは、実物の不動産と同様、相続税評価額が引き下げられるからです。相続時に資産を現金で所有していると評価額は100%ですが、不動産で所有していると以下のように評価額を抑えられます。
土地:公示地価の80%程度
建物:価格の60%程度
上記に加えて小規模宅地等の特例 など
不動産小口化商品の仕組みは、組合員(出資者)が出資額に応じて共有持ち分を取得し、分配金を得るというものです。物件の管理・運用は事業者が行い、予定していた運用期間を満了すれば物件が売却され出資金が返却されます。
米ドル定期預金
低リスクの金融商品としては定期預金がありますが、円建て預金は金利が非常に低いため、物価上昇率を大きく下回ってしまいます。一例として、住信SBIネット銀行で円建ての定期預金(個人)をした場合、金利は預け入れ金額(100万円以上〜3000万円以上)や期間(1ヵ月 〜5年)に関わらず、0.20%で統一されています。
一方、外貨建ての定期預金なら、物価上昇率を上回る金利が期待できます。一例としては、住信SBIネット銀行のドル建て定期預金は、以下のような金利に設定されています。
1ヵ月:2%
6ヵ月:5.4%
1年: 5.4%
3年:3.6%
ただし、外貨建ての定期預金には為替リスクがありますので、これを十分理解した上で預け入れましょう。
※記事内の金利はすべて2023年10月 23日時点の情報です。
投資信託(国内債券型)
投資信託は、ファンドの投資先によってリスクとリターンが変わってきます。主な分類には次の内容があります
・株式(国内、先進国、新興国、グローバル)
・債券(国内、先進国、新興国、グローバル)
・REIT(国内、海外)
・コモディティー
・バランス
このうち、一般的に低リスクといわれるのは「債券」に分類される、国債、公社債、社債などで運用するファンドです。一例は次の通りです。
ファンド名 | 1年騰落率 | 3年騰落率 |
---|---|---|
EXE-i 先進国債券ファンド | 1.21% | 3.20% |
日系企業海外債券オープン(為替ヘッジなし) | 2.48% | 7.01% |
東京海上・ニッポン世界債券ファンド | 5.62% | 5.13% |
ただし、債券ファンドは購入タイミングに要注意です。ローリスク・ローリターンと言われる債券ファンドですが、日本国債を中心に運用しているファンドは、直近1〜5年の騰落率でマイナスが目立ちます。
パフォーマンスが低調な原因として、直近の日本国債の金利が上昇傾向にあることが挙げられます。金利が上昇すると、ファンドで運用している、発行済みの国債の価値が下がってしまします。債券ファンドは組み入れ債券の利回り水準に加え、全体の金利動向を踏まえて買い付けるのが賢明でしょう。
より大きなリターンを目指す場合は、低リスク以外の商品も含めたい
ここまで、物価上昇率を超える(または物価上昇率と同等の)利回り3〜5%程度が期待できる低リスクの投資商品をご紹介してきました。ただし、利回り3〜5%程度を超えるインフレになる可能性もあります。これに備えて低リスク商品だけでなく、高リスク商品も含めて運用し、全体の利回りをアップするのも一案です。
ハイリスク・ハイリターンの投資商品例は次の通りです。
・FX
・暗号資産
・アクティブファンド
・小型株投資
・信用取引
・エンジェル投資 など
それぞれの投資商品の特徴や銘柄になどについては、 下記の関連記事をご参照ください。
関連記事:ハイリスク・ハイリターン投資とは?代表的な方法5選やポートフォリオの考え方
一方で、 株式市場が長期的に低調になる可能性もあります。その場合でも一定のリターンを確保できるよう、現物投資をポートフォリオに加えるのがよいでしょう。投資商品例は次の通りです。
・金、プラチナ、銀
・現物不動産
・高級時計
・コモディティー商品 など
NISAやiDeCoの活用で効率的な運用が可能に
今回紹介した運用方法の一部は、NISAやiDeCoの制度を活用でき、税制上のメリットを享受することができます。
とくにNISAは2024年から非課税投資枠が1,800万円(うち、株式投資もできる成長投資枠は1,200万円)に急拡大し、老後資金づくりにおいて有効なツールとなります。NISA口座の開設には一定の期間がかかるため、口座を開設していない人はまずは手続きを取ることをおすすめします。
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