2つの用途地域にまたがる土地の建築制限
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佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

土地活用を検討する際、「どのような建物を建てられるか」ということは大切です。都市計画法に基づく用途地域は、用途の混在を防ぐことを目的としますが、複数地域にまたがる場合は少し複雑です。用途地域は13種類あり、4つの高さ制限もあります。ここでは、土地活用における用途地域の建築制限、建ぺい率・容積率、高さ制限などを解説します。

目次

  1. 1. 用途地域とは
  2. 2.用途地域にまたがる場合
    1. 2-1.建築制限
    2. 2-2. 建ぺい率・容積率は加重平均
    3. 2-3.建物全体が片方の地域に収まっていたら
    4. 2-4.建築基準法での取り扱い
  3. 3. 用途地域は13種類
    1. 3-1.住居地域8種類
    2. 3-2.商業地域2種類
    3. 3-3.工業地域3種類
  4. 4. 4つの高さ制限
    1. 4-1.斜線制限
    2. 4-2.日影規制
    3. 4-3.絶対高さ制限
    4. 4-4.高度地区・高度利用地区
  5. 5. 防火・準防火規制の判断基準
  6. 6. 建物のプランは不動産会社とよく相談して決める
  7. 用途地域に関するよくある質問
    1. Q.用途地域とは?
    2. Q. 用途地域にまたがる土地の場合にどのような制限があるのか?
    3. Q. 用途地域は全部で何種類あるのか?

1. 用途地域とは

用途地域とは
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用途地域とは、建築できる建物の種類や用途・制限のルールをあらかじめ定めている土地のことをいいます。各自治体が都市計画法にもとづいて定める地域区分です。ただし、すべての土地に定められているわけではありません。市街化を抑えようとする市街化調整区域には設定されません。用途地域は都市計画図に掲載されており、役所や自治体によってはホームページで見ることができます。土地が一つの用途地域内にあれば、建ぺい率や容積率などの計算、建てられる建物の種類などの判断は簡単です。

2.用途地域にまたがる場合

用途地域にまたがる場合
(画像=amosfal/Adobestock.com)

土地のなかには用途地域にまたがる立地もあるでしょう。用途地域にまたがる場合にどのような制限があるのかを確認しておきましょう。

2-1.建築制限

計画用地が用途地域にまたがっている場合は、過半を占める地域が建築制限の適用を受けます。例えば、「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」にまたがっているケースでは、まずそれぞれの地域の敷地面積を算出します。敷地面積が220平方メートルで、第一種低層住居専用地域が140平方メートル、第二種低層住居専用地域が80平方メートルの場合は過半を占める第一種低層住居専用地域の建物用途の制限が適用されます。

2-2. 建ぺい率・容積率は加重平均

土地のうち建物を建てられる面積の上限である「建ぺい率」と建物の総床面積の上限である「容積率」は、それぞれの用途地域で土地面積に応じて別々に計算し平均します。これを「加重平均」といい、面積ベースで計算すると以下のようになります。

例えば、500平方メートルの土地で、そのうち300平方メートルは建ぺい率60%、容積率120%の第一種住居地域内に、残りの200平方メートルは建ぺい率80%、容積率300%の近隣商業地域内にあるとします。

用途地域,建築制限

この土地における最大の建築面積の式
300平方メートル×60%+200平方メートル×80%の340平方メートル

この土地における建ぺい率の式
340平方メートル÷500平方メートル=68%

最大の延床面積の式
300平方メートル×120%+200平方メートル×300%=960平方メートル

という風に計算されます。

2-3.建物全体が片方の地域に収まっていたら

建物全体が片方の地域に収まっていたら
(画像=amosfal/Adobestock.com)

では、第一種住居地域と第二種住居地域にまたがっている土地で、片方の地域に建物全体が収まっている場合はどうなるのでしょうか。たとえ建物が第二種住居地域にすべて収まっていたとしても、過半を占める第一種住居地域の建物用途の制限が採用されます。したがって、第一種住居地域に建てられない建物を第二種住居地域に建てることはできません。

用途地域,建築制限

2-4.建築基準法での取り扱い

建築基準法第91条では次のように定められています。
「建築物の敷地がこの法律の規定による建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する禁止又は制限を受ける区域、地域又は地区の内外にわたる場合においては、その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の建築物に関するこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定を適用する」(条文のカッコ書きを除いて簡略化したもの)

敷地の半分以上を占める部分が、属する地域や区域の制限を受けることになります。

3. 用途地域は13種類

用途地域は13種類
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用途地域は全部で13種類あり、建てられる建物の種類はそれぞれに異なります。大きく分けると「住居地域」「商業地域」「工業地域」の3つの区分があります。では、13種類の特徴や制限、建てられる建築物の種類などを見てみましょう。

3-1.住居地域8種類

住居地域には以下の8つの種類があります。

・第一種低層住居専用地域
低層住宅を建てるための地域で、高さが10メートルまたは12メートル以下に制限されます。床面積合計50平方メートルまでの店舗兼用住宅や、小さな公共施設、小中学校、診療所などを建てることができます。用途地域のなかでは最も厳しい規制が課せられています。

・第二種低層住居専用地域
おもに低層住宅のための地域で、建築可能な建物は3階までと定められています。150平方メートルまでの一定条件の店舗の建築も可能です。第一種低層住居専用地域では難しいコンビニエンスストアも建てることができます。

・第一種中高層住居専用地域
中高層住宅を建てるための地域で、500平方メートルまでの一定条件の店舗や中規模の公共施設、病院、大学などを建てることができます。「絶対高さ制限」がないため、3階以上のアパート・マンションを建てることも可能です。

・第二種中高層住居専用地域
おもに中高層住宅を建てるための地域で、1,500平方メートルまでの一定条件の店舗やオフィスを建てることができます。第一種に比べ、小規模なスーパーや広い店舗、オフィスを建てられるため、賑わいのある街並みにすることも可能です。

・第一種住居地域
住居の環境を守るための地域で、3,000平方メートルまでの一定条件の店舗やオフィス、ホテルなどを建てることができます。また、環境への影響が少ない小規模の工場の建築も可能です。北側斜線が適用されないため、中高層住居専用地域よりも規制は緩やかといえます。

・第二種住居地域
おもに住居の環境を守るための地域で、1万平方メートルまでの一定条件の店舗やオフィス、ホテルなどを建てることができます。パチンコ店、カラオケ店や環境への影響が少ない小規模の工場の建築も可能です。第一種と同じく北側斜線の規制がありません。住居地域では最も規制が緩やかな地域といえます。

・田園住居地域
農地や農業施設などと調和した低層住宅の環境を守るための地域で、ビニールハウスや生産資材倉庫のほか、500平方メートルまでの一定の地域で生産された農産物を販売する店舗を建てることができます。10メートルまたは12メートル以下の高さ制限があり、第一種・第二種低層住居専用地域と同じような厳しい規制があります。

・準住居地域
道路の沿道等において、自動車関連施設などと住居が調和した環境を守るための地域です。1万平方メートルまでの一定条件の店舗やオフィス、ホテル、パチンコ店、カラオケ店などを建てることができます。また、小規模の映画館や車庫・倉庫、環境への影響が少ない小規模の工場の建築も可能で、用途が広い地域といえます。

3-2.商業地域2種類

商業地域には以下の2つの種類があります。

・近隣商業地域
周辺住民が日用品の買い物などをするための地域で、ほとんどの商業施設、店舗、事務所などを建てることができます。延床面積の規制がないため、場合によっては中規模以上の商業施設を建てることも可能です。近隣商業地域は住居系地域よりもかなり規制は緩やかといえます。

・商業地域
商業などの業務の利便増進を図る地域で、ほとんどの商業施設、店舗、事務所などを建てることができます。延床面積の規制がなく、容積率の限度もかなり高いため、高層ビル群の建築も可能です。都心部の繁華街やオフィスビル街などが該当します。

3-3.工業地域3種類

工業地域には以下の3つの種類があります。

・準工業地域
工業系の用途地域で、危険が大きく著しく環境を悪化させる工場(花火工場、石油コンビナートなど)の建築は禁止されています。住宅や店舗も建てることができます。商業系より規制が厳しく、住宅系よりは緩やかな傾向があります。

・工業地域
大規模な工場も立地している工業を中心とした地域です。どんな工場でも建てることができます。住宅・店舗は建てられるものの、学校、病院、ホテルなどは建てることができません。大きな工場の近隣に社員寮やスーパーなどがある状態が該当します。

・工業専用地域
工場業務の利便増進を図る地域で、どんな工場でも建てることができます。住宅を建てられない唯一の地域です。学校、病院、ホテル、福祉施設なども建築不可となっており、京浜工業地帯のような湾岸地域が該当します。

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4. 4つの高さ制限

4つの高さ制限
(画像=frenta/Adobestock.com)

建物の高さには「絶対高さの制限」や「道路斜線制限」、自治体によっては「日影規制」などさまざまな規制によって上限を設けられています。2つの地域にまたがる場合、それぞれの地域ごとに適用されます。 例えば屋根の高さが2段になっている住宅を見かけることはないでしょうか。このような形状になったのは、土地が2つの用途地域にまたがっているという可能性もあります。規制や制限の種類は以下の4つです。

4-1.斜線制限

斜線制限は、通風や採光等を確保し良好な環境を保つために、建築物の各部分に設けられている高さに関する制限です。「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3つの種類があります。斜線制限は建築基準法第56条で定められており、制限される高さの算出方法は用途地域によって異なります。例えば、道路斜線制限の場合、住居系地域については敷地が接する道路の反対側の境界線から1メートルにつき1.25メートル、その他の用途地域については1メートルにつき1.5メートル上がる斜線の内側に建築物を収めなければならないと規定されています。

4-2.日影規制

日影規制は、中高層建築物によってできる日影が近隣の敷地に一定時間かからないようにすることにより、日照を確保するための制限です。日影規制は建築物の高さ制限があり、区域・建物によって下表のように定められています。

用途地域区分対象建築物
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
軒の高さが7メートルを超える建築物または地階を除く階数が3階以上の建築物
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
高さが10メートルを超える建築物
商業地域
工業地域
工業専用地域
日影規制なし

4-3.絶対高さ制限

絶対高さ制限とは、上表の用途地域のうち「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」のみに適用される高さ制限です。低層住居の環境保護や日照・通風確保を目的とした制限です。原則として10メートルか12メートルのうち都市計画で規定されている高さの限度を超えることはできません。建物の外壁または代用になる柱の面と敷地の境界線の間に都市計画で定められた後退距離を確保する必要があります。後退距離は1メートルまたは1.5メートルが限度です。

4-4.高度地区・高度利用地区

高度地区・高度利用地区について都市計画法では以下のように定めています。

「高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする」(都市計画法第9条18項)

「高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の制限を定める地区とする」(都市計画法第9条第19項)

両地区の違いは、高度地区が建築物の高さの最高限度又は最低限度のみを定める地区であるのに対し、高度利用地区は「建築物の容積率の最高限度及び最低限度」「建築物の建蔽率の最高限度」「建築物の建築面積の最低限度」「壁面の制限」の4つを定める地区であることです。

5. 防火・準防火規制の判断基準

防火・準防火規制の判断基準
(画像=rosifan19/Adobestock.com)

用途地域以外の都市計画法にもとづく規制として、防火地域と準防火地域が定められることがあります。対象となるのは主に市街地です。これらの地域では、建物の階数や面積に応じて一定の耐火性能を持った構造にしなければなりません。

例えば防火地域では、3階建て以上の建物は(鉄骨)鉄筋コンクリート造や耐火被覆をした鉄骨造などの耐火建築物にする必要があります。同じ3階建てでも準防火地域で延床面積が1,500平方メートル以下であれば耐火被覆をした木造のような準耐火建築物でも認められます。

防火地域に関する規制は、土地ではなく建物ごとに判断します。2つの地域にまたがっている場合は、より厳しいほうが適用されます。しかし、土地の一部が防火地域であっても建物のすべてが準防火地域内にあれば、準防火地域の要件が適用されます。

用途地域,建築制限

6. 建物のプランは不動産会社とよく相談して決める

建物のプランは不動産会社とよく相談して決める
(画像=ronstik/Adobestock.com)

ここまで用途地域にまたがる土地の建築制限について詳しく見てみました。建物の用途は敷地の過半数にかかる用途地域が適用されます。建物の大きさと建築部分の面積の上限は、それぞれの用途地域に応じた面積を合計して計算することが必要です。高さ制限はそれぞれの用途地域に対して規制を受け、防火地域・準防火地域は土地ではなく建物の位置によって判断します。このように建物の建築に関する規制は複雑です。

13種類の用途地域ごとの規制や、建築基準法や都市計画法による各種制限をすべて把握することは困難でしょう。例外や判断に迷うケースが出ることが考えられます。土地開発で一棟マンションの建築を考えているオーナーは、デベロッパーを兼ねた不動産会社に相談するとよいでしょう。不動産会社には法務関係の専門家がおり、用途地域における最適な物件の形を提案してくれるはずです。開発への第一歩として不動会社に気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

用途地域に関するよくある質問

Q.用途地域とは?

用途地域とは、建築できる建物の種類や用途・制限のルールをあらかじめ定めている土地のこと。

Q. 用途地域にまたがる土地の場合にどのような制限があるのか?

敷地面積が220平方メートルで、第一種低層住居専用地域が140平方メートル、第二種低層住居専用地域が80平方メートルの場合は過半を占める第一種低層住居専用地域の建物用途の制限が適用される。

Q. 用途地域は全部で何種類あるのか?

大きく3つの区分がり、「住居地域」で8種類、「商業地域」で2種類、「工業地域」で3種類と全部で13種類ある。建てられる建物の種類はそれぞれに異なる。