マレーシア,不動産譲渡益税,RPGT
(画像=Kaie Lee/Shutterstock.com)

不動産譲渡益税(PRGT)とは?

マレーシアにおける不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax (RPGT))とは、不動産の処分時に住宅所有者や事業者が支払わなければならないキャピタルゲイン課税のことです。
保有している不動産を売却するときにもし利益が発生していたら、税金を支払うことになります。

もし売却時に損が出る場合は、RPGTを支払う必要はありません。益が出た場合は、売却が成立した日から60日以内にRPGTを支払う必要があります。売却時の弁護士に料金を支払って、RPGTの支払をすることもできます。弁護士に支払う報酬は、弁護士報酬令(Solicitors Remuneration Order)に規定されており、2016年の改正で、記入する様式の種類に応じて様式あたりRM100~RM400(約2,650円~10,700円)となっています。もちろん、内国歳入庁(Inland Revenue Board)の必要様式に自分で記入して、自分で支払うこともできます。

RPGTは住宅不動産だけでなく、商業不動産、分譲地、空地にも課されます。ここでは、レジデンシャル不動産の売却に焦点を当ててみていきましょう。

RPGTは、1976年、「1976年不動産譲渡益法(Real Property Gains Tax Act 1976)」に基づき、不動産投機とバブルの形成を防ぐために、初めて導入されました。2007年4月から2009年12月まで一時的に保留されましたが、2010年に再導入されています。2014年には、2009年から5年連続で税率が引き上げられ、2019年にもまた税率の見直しがありました。また2020年予算が発表され、今年も見直しをされることなりました。

RPGTの税率は?

2019年度予算でマレーシア政府は法人、外国人による保有期間5年超の不動産の処分にかかるRPGT税率を見直し、5%から10%に引き上げました。また、マレーシア人および永住権保有者については、0%から5%に引き上げられました。

▼不動産の処分にかかるRPGT税率

保有期間マレーシア人・永住権保有者外国人法人
3年以下30%30%30%
4年以下20%30%20%
5年以下15%30%15%
5年超5%10%10%

計算方法は?

RPGTは、1976年不動産譲渡益税法(Real Property Gains Tax Act 1976)に基づき、不動産売却時の課税対象利益にかかります。課税対象利益とは、不動産の売却価格が取得価格を上回った時にでる譲渡益です。RPGTは、有形固定資産の75%が不動産の不動産会社(Real Property Company(RPC))の株式の購入および処分にも適用されることには留意が必要です。RPGTは、マレーシア居住者、非居住者、双方に課されます。

売却価格から、取得価格とその他印紙税、弁護士費用、広告料などの費用を差し引いたプラスの譲渡益にのみ課されます。加えて、個人には(法人は除く)課税対象控除額が認められています。保有期間は、同不動産の売買契約を締結した日から、処分する日までを指します。

【計算方法】マレーシア人・永住権所有者の場合

  • 課税対象譲渡益=売却価格-取得価格-その他費用
  • 正味キャピタルゲイン=課税対象譲渡益-課税対象控除額(RM10,000(マレーシアリンギット)、または課税対象譲渡益の10%の、いずれか高い方)
  • 支払税額=RPGT税率(保有期間に基づく)×正味キャピタルゲイン

(例)12年前に、RM500,000で購入した一軒家を、今売却しようとすると市場価格はRM700,000です。課税対象譲渡益を計算するためには、RM700,000から当初購入価格であるRM500,000と弁護士費用などに要したその他費用RM10,000を差し引きます。

課税対象譲渡益
=売却価格-(購入価格+その他費用)
=RM700,000-(RM500,000+RM10,000)
=RM190,000

課税対象控除額を控除することができるので、
正味キャピタルゲイン
=課税対象譲渡益-課税対象控除額(RM10,000または課税対象譲渡益の10%)
=RM190,000-(RM190,000×10%)
=RM171,000

支払税金
=正味課税対象譲渡益×RPGT税率(保有期間に基づく)
=RM171,000×5%
=RM8,550

12年間不動産を保有しているので、適用されるRPGT税率は5%となります。

RPGT減免

RPGTの減免が認められる場合があります。

代表的な例には、以下のようなものがあります。

  1. マレーシア人と永住権(PR)保有者は、一生に一度だけ、私有の住宅の売却時の譲渡益への課税免除を申請することもできます。
  2. 夫と妻、親と子ども、祖父母と孫など家族間(兄弟間は除く)での不動産の移転にかかる譲渡益課税免除されます。
  3. 譲渡益の10%かRM10,000(約267,600円)のいずれか高い方は課税所得から控除されます。
  4. 低コスト、低-中コスト、アフォーダブル住宅に区分されるRM200,000(約535万円)未満の住宅もRPGTを免除されます。

2020年度予算-基準年の変更

マレーシア政府が発表している2020年予算では、保有期間5年以降の不動産の処分にかかるRPGTについて、不動産の取得価格とする市場価格の基準年を、以前の2000年1月1日から2013年1月1日に見直すとしています。

これにより、2000年1月1日以前に不動産を購入した人は、支払う税額が少なくなるのでメリットを受けることになります。

どういうことか例を使って具体的に見ていきましょう。

1990年にRM150,000で購入した住宅を、2020年1月にRM600,000で売却したとします。

不動産価値が年月とともに上昇し、2000年1月1日の市場価格がRM300,000、2013年1月1日の市場価格がRM480,000だったとします。また、弁護士費用など控除可能なその他の費用はなかったと仮定します。

  • 2020年以前:
    RM600,000-RM300,000=RM300,000
    RPGT=RM300,000×5%=RM15,000

  • 2020年以降:
    RM600,000-RM480,000 = RM120,000
    RPGT = RM120,000×5% = RM6,000

基準年が変わることで、長期不動産を保有していた人が売却、アップグレードしやすくなるため、市場活動を生み出すことができます。また投資家にとっても、長期保有資産をお金に換えて、次の投資へ回すことができることになります。よって、セカンダリー市場にも活気を与えることになりそうです。