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(画像=beeboys/stock.adobe.com)
田中タスク
田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。

「FXを始めたばかり」「これから始めよう考えている」といった人にとって「スワップ」はどんな存在でしょうか。スワップは金利の高い通貨の買いポジションを持っておくだけで毎日金利収入が入ってくるため、非常に魅力的な投資方法の一つです。マイナス金利政策の日本では銀行に預金しても1年物の定期預金の利息が0.002%(メガバンク2020年7月時点)と雀の涙。

そのため年利数十%以上にもなるFXのスワップは目を引きます。しかしスワップはいくつかの注意点があることも忘れてはいけません。リスクを理解せずにスワップだけを狙ってFX投資をすると大損をしてしまう可能性があるため、特に初心者は注意しておきましょう。そこで本記事ではFX初心者や未経験者に向けてスワップ投資の罠ともいえるリスクを解説します。

リスクを踏まえたうえで「投資してみたい」という人には最もリスクの低い投資戦術についても紹介します。

FXのインカムゲイン、スワップの魅力とリスク

FXには大きく分けて「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」といった2つの収入があります。

  • キャピタルゲイン:為替レートの変動を利用して差益を狙う
  • インカムゲイン:金利が異なる通貨同士のポジションで調整のために支払われるスワップ

スワップはレート変動に関係なく発生するため、インカムゲインです。キャピタルゲインを狙うためにはチャート分析やファンダメンタルズ分析など勝つための知識や経験が必要になります。しかしスワップはただ通貨を買って持っておくだけ(バイ・アンド・ホールド)のため、FX初心者にも同じく利益のチャンスがあるのです。

例えばスワップ投資の人気通貨ペアとして長らく知られているトルコリラ対円についてスワップのシミュレーションをしてみましょう。2020年7月17日時点のレートは1トルコリラ15.5円近辺のため、15.5円とします。トルコリラを1万通貨分の買いポジションを持つためには15.5円×1万通貨=15万5,000円が必要です。

しかしFX特有のルールであるレバレッジを最大の25倍とすると証拠金は6,200円となります。これに1日25円のスワップがつくと仮定しましょう。スワップは毎日発生するため、1年分を計算すると「25円×365日=9,125円」となります。つまり6,200円の証拠金で年間9,125円のスワップ収入が発生するため、利回りはなんと約147%です。

10万通貨分を保有すると6万2,000円の証拠金に対して9万1,250円のスワップ収入が発生するため、まさに夢のような投資といえるでしょう。しかしこの単純な考え方に大きな落とし穴があります。なぜならFXには為替リスクがあるからです。仮にスワップが毎日発生し続けたとしても肝心の為替レートが下落してしまうとスワップ収入を吹き飛ばしてしまいかねません。

それだけでなくトータルでマイナスになってしまう可能性があるのです。

高金利通貨=新興国通貨であることを認識しよう

為替市場には回帰性といって「長いスパンでレート変動が一定のレンジ内に収まる」という法則があります。一時的に極端なレートに傾いたとしてもやがて同じレートに戻ってくるという意味です。これが成立しているのであればスワップ狙いでポジションを持ち続けているときに相場が逆行して含み損が拡大しても、いつかは戻ってくるとして持ち続けることができます。

しかしこれは先進国の通貨同士にのみ該当することです。そのためFXで高金利通貨として知られる南アフリカ共和国のランド、トルコのリラ、メキシコのペソなどにはこの回帰性がありません。一度下がると下がったままになってしまっている傾向のため、スワップをいくら稼いでも含み損の解消が難しいのです。

それでは、今紹介したFXの人気3大高金利通貨といわれる3通貨についてその特徴と月足の長期チャートを見てみましょう。

トルコリラ

日本人投資家にも人気の通貨です。しかしエルドアン大統領の意向もあって利下げの方針が打ち出されています。実際に利下げが行われるたびにスワップも減少しており通貨も長期下落トレンドのため、スワップの蓄積だけでは下落幅をカバーできていません。

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(出典:Tradingview)

南アフリカランド

金など天然資源を主な産業基盤とする国だけに通貨ランド相場も資源相場次第です。コロナショックで資源需要が減少して資源安となるとランドも下落しました。もとから治安面や脆弱な経済基盤など懸念材料も多く長期相場では下落トレンドが続いています。

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(出典:Tradingview)

メキシコペソ

多くのFX会社で取引可能な3大高金利通貨の中では「最もマシ」とされるのがメキシコペソです。隣国のアメリカや日本からの企業進出、さらに原油輸出が産業基盤となっており他の2国と比べると経済に安定感があります。ペソ相場もゆるやかなレンジを形成していますが、それでも先進国通貨に見られるような回帰性は見られません。

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(出典:Tradingview)

それでもFXスワップ投資をしたい方のための成功戦略

いくら毎日スワップが入り続けたとしても上記チャートでも確認したようにこれだけ通貨価値が下落してしまうとトータルで損になってしまうケースが大半でしょう。スワップ狙いの投資に対して否定論があるのは、このためです。「それでもスワップを収入源とする投資をやってみたい」という人には、以下のような方針を検討してみましょう。

これなら高金利通貨が持つ特有のリスクを抑えながらスワップ収入を資産増に結びつけることができる可能性が高くなります。

  • 投資通貨はメキシコペソを選ぶ
  • 安値圏(ペソ対円の場合は4.2~4.3円台)のみを狙い、この水準になったときだけ買う
  • 1回に買うロット数を変えない
  • 少なくとも5年スパンでの投資を考える

このルールを守ってスワップ投資をするのであれば買えるチャンスは多くはありませんが高値づかみをすることなくスワップ収入だけを確実に蓄積するトレードが可能になります。

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