「不動産投資をしている」「これからはじめる」といった人の中には、FIRE(※)を目的としている人もいるのではないでしょうか。実際にビジネスパーソンから専業オーナーに転身して早期リタイアを達成した人はたくさんいます。しかし成功の裏には挫折した人も少なくありません。両者を分けたものは何でしょうか。本記事では、不動産投資でFIREを達成するためのポイントを解説します。
※FIRE=Financial Independence,Retire Earlyの略。経済的自立、早期リタイアの意。
『FIRE』の著者クリスティー・シェンも賃貸経営を認めている
投資には、いくつもの手法があります。そもそも数ある手法の中で不動産投資(賃貸経営)は、FIREを達成するのに有効な手段なのでしょうか。この点について世界的なFIREムーブメントの第一人者となるクリスティー・シェンは、著書『FIRE』の中で以下のように語っています。
「誰かに賃貸しする目的で買えば、住居は優れた投資資産になり得ます」
引用:クリスティー・シェン&ブライス・リャン著『FIRE 最強の早期リタイア術』
クリスティー・シェンは、著書の中でマイホームとしての不動産を完全否定しつつも投資目的の不動産を上記のように肯定しています。つまり「不動産投資はFIREを達成するのに有効」ということです。クリスティー・シェン自身のFIREの原動力は、インデックス投資によるリターンでした。一方でインデックス投資と不動産投資は「安定したリターンを得やすい投資手法」という共通点があります。
根本の考え方は同じため、不動産投資を肯定しているのでしょう。ちなみにクリスティー・シェンは、著作の中で「ミリオネアになる方法は1つだけではなく、成功した人たちは自分の強みと弱みを理解した上で、自分に合ったアプローチを取り入れること」がポイントと述べています。
不動産投資でFIRE(早期リタイア)をするための5つのポイント
不動産投資がFIRE(早期リタイア)に有効といってもFIREを目指して不動産投資をはじめた人が全員成功するわけではありません。FIREを成し遂げた人とそうでない人を分ける要因は何でしょうか。不動産投資でFIREを達成するためのポイントを成功者の助言をもとにまとめました。
不動産投資でFIREのポイント1:目的に合った物件を選ぶ
TerraCoya大家の会メンバーの共著『不動産投資の羅針盤』では「目的によって取るべき戦略、買うべき物件は大きく変わってきます」と述べています。逆にいうと目的に合わない物件を選べば成功確率が大きく下がってしまうわけです。不動産投資の「主な目的」「それに合う物件」をまとめると以下の表のようになります。FIREが目的であれば1棟物件を選択するのが賢明でしょう。
目的 | 目的に合う物件の一例 |
---|---|
老後資金にしたい | 区分マンション |
現時点の副収入にしたい | 築古戸建 |
相続税対策をしたい | タワマン |
FIRE(早期リタイア)をしたい | 1棟物件 |
FIREの目的に1棟物件が合う理由は、まとまった家賃収入が期待でき経営規模を効率的に拡大しやすいからです。
不動産投資でFIREのポイント2:黒字申告・決算にこだわる
不動産投資で赤字が出た場合、所得税を軽減できる「損益通算」の仕組みは、多くの人がご存じでしょう。これは、不動産投資の赤字分とほかの収入(例:給与収入や事業収入など)を合算して申告・決算することで全体の所得を抑えるスキームです。ただし不動産投資でFIREを目指すなら赤字申告・決算は、絶対に避けたほうがよいでしょう。
なぜなら赤字決算では、金融機関からの融資が難しくなり賃貸物件の買い増しが難しくなるからです。区分マンションであればオーナーの属性重視のため赤字でも買い増しができるかもしれません。しかし1棟物件は、事業的な要素が強いため赤字決算では致命的です。現役の融資担当の銀行員かつ80億円以上の不動産を所有している河津桜生氏は以下のように述べています。(2019年時点)
「融資を受けたいなら、ともかく黒字決算を出し続けなくてはなりません」
引用:『現役融資担当者がかたる 最強の不動産投資法』
不動産投資でFIREのポイント3:金融機関の評価の高い物件を買う
TerraCoya大家の会メンバーの共著『不動産投資の羅針盤』では、規模拡大の注意点として「金融機関から評価されないような物件を買ってしまうと、それ以降融資が受けられなくなってしまう」と解説しています。なお賃貸物件の金融機関の評価は、主に以下の2種類です。
- 積算評価:土地と建物の価値に基づき評価する
- 収益評価:将来の予想収益に着目して評価する
両方で高評価の賃貸物件を買うのが理想ですが特に一般的なアパートの場合、多くの金融機関が重視するといわれるのが積算評価です。そのため不動産投資でFIREを目指すなら購入価格に対して積算評価が低すぎる賃貸物件は避けるべきでしょう。
不動産投資でFIREのポイント4:積算価格にこだわりすぎない
前項のポイント3では、積算評価を意識することの大切さを紹介しました。一方で「積算評価に執着しすぎないこと」も大事です。なぜならいくら積算評価が高かったとしても最終的に立地や建物が入居者ニーズに合っていないと高利回りが維持できないからです。著名な不動産投資家の赤井誠氏は、この点について以下のように解説しています。
「融資を受けやすい物件が、すなわちいい物件ではありません。積算価格はあくまで融資を受けるための指標でしかないのです」
引用:赤井誠『めざせ!満室経営 本気ではじめる不動産投資』
端的にいえば不動産投資はリアルなビジネスのため、すべてが教科書通りにいくわけではないということです。この本質を理解していないと赤井氏の伝える「不動産投資でお金の残らない人」になってしまいます。
不動産投資でFIREのポイント5:利回りの罠に引っかからない
不動産投資でFIREを目指すなら高利回り物件を購入することが条件となります。一方で以下のような「利回りの3つの罠」に引っかからないことも大事です。
・表面利回りの罠
賃貸物件を購入するときの目安になる「利回り」です。しかし最終的にここから経費や税金が差し引かれます。そのため経費を差し引いた実質利回りで「本当に儲かる賃貸物件か」を確認することが大事です。
・満室利回りの罠
満室になったら高利回りになる物件でも「実際は空室だらけで低利回り」というケースも少なくありません。ひどい場合は、入居者がいると見せかけて低利回り物件を高利回りに見せかけていることもあります。
・期待利回りの罠
レントロールを確認したときほぼ同じ条件なのに家賃差が大きい部屋が多い場合は、期待が外れて将来的に低利回りになるリスクがあるため、注意が必要です。楽待新聞のインタビューに対して年間家賃収入1億4,000万円の専業大家MOLTAさんは「賃料差が大きい場合、次の募集時には安い賃料で募集する必要があるかもしれない」と注意喚起をしています。
こんなタイプの人が「不動産投資でFIRE」に向いている
不動産投資でFIREを目指す人が勘違いしてはならないことがあります。それは、ビジネスパーソンなどから専業大家に転身した人たちは「リタイア後も賢明に経営努力をしている」ということです。1棟物件を複数保有した場合は、たとえ管理会社に実務の大半を委託してもオーナーのやるべきことはたくさんあります。例えば以下のようなものです。
- 入居者満足度を高める施策の研究
- オーナーにしかできない手続き
- 賃貸物件のさらなる購入を進める
- 物件ごとの出口戦略(売却)を進める
そのためリタイア後に「仕事をしたくない」「楽がしたい」というタイプの人は、別の投資手法でFIREを目指したほうがよいかもしれません。逆にリタイア後に「自由度の高い環境でやりがいのある仕事がしたい」という人にとっては、不動産投資でFIREを目指す選択は向いているといえます。
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