八木エミリーさんに聞く

26歳のときに不動産投資をスタート、約5年間で総額7.5億円まで投資物件を増やした八木エミリーさんのロングインタビュー。一般的に不動産投資は不労所得といわれますが、八木さんはその固定観念を完全否定されます。そこには、どんな独自の考え方があるのでしょうか。

【八木エミリーさんプロフィール】
新卒で野村證券に入社後、投資の勉強を開始。2016年より不動産を購入。現在、一棟マンション6棟、テナントビル1棟を所有。オンラインサロン「em会」主宰、バイリンガルスクール「WONDER KIDS BILINGUAL PREP SCHOOL」オーナーのほか、地域活性事業、保育スクール事業、障害児支援など活動の幅を広げている。「元証券ウーマンが不動産投資で7億円」(ダイヤモンド社)など複数の著書がある。

目次

  1. 「不動産投資は不労所得じゃない」という言葉の真意とは?
  2. 不動産投資家にとって重要なタスクが3つある
  3. 検討中の物件近くにスーパー銭湯があるのはプラス材料
  4. 黙ってコツコツ働いて欲しいから築古物件は買わない

「不動産投資は不労所得じゃない」という言葉の真意とは?

−八木さんは、 不動産投資だけでなく、株式や債券への投資、さらにさまざまな事業も手がけているそうですね。それだけに、不動産投資のメリットとデメリットを実感されていると思います。

不動産投資のメリットは、ある程度収入が安定しているところ。家賃相場は、短期間で大幅に上がり下がりしません。この安定性がメリットだと思っています。

あとは、リスクを自分の力でコントロールできるのもメリットですね。不動産投資の一番のリスクといえば空室リスクですが、これは自分の努力で解決できる問題です。これに対して、たとえば株式の相場は、自分がどうあがいても変えられるものではありません。

デメリットは、不動産は不労所得じゃない、それなりの手間がかかるという部分でしょうか。不動産投資は不労所得とよくいわれますが……その言葉に騙されてはいけません。

−不動産投資は一般的に不労所得といわれますが、それが違うという理由とは。

たしかに不動産投資は、管理業務のすべてを管理会社さんにお願いすれば不労所得になります。ただ、管理業務をすべて請け負う分、10%以上など割高な管理手数料を要求してくる業者もあるんですね。管理手数料の相場は 3%〜5%程度といわれますので、かなり割高な設定です。

このような割高な管理手数料を払っても、不労収入を得たいのであればそれでもいいと思います。ただ、もともとキャッシュフローが出ない物件を買った人が、さらに管理を丸投げして割高な手数料を支払ってしまうと、いいカモになってしまいます。

そうならないように、勉強したり、努力をしたりする必要があるので、不動産投資は不労所得とはいえないんですね。たとえば、住宅設備の入れ替えをする際も、設備の購入価格が適正か、工賃が適正かといったことをチェックする努力が必要です。

また、空室が発生したとき、管理会社によっては「入居者が決まらないから、家賃を下げましょう」と簡単に提案してくることもあります。こんなとき、不動産投資は不労所得という感覚の人であれば、「決まらないなら仕方ない」とすぐに応じるかもしれませんが、そうすることで収入が減ってしまいます。

これに対して、経営者感覚を持つ人であれば、家賃をキープしながら入居者付けをするために、こういう風にリフォームしてみようといった策を考えます。このような努力が必要なので、単純に「不動産投資は不労所得」とはいえないんですね。

不動産投資家にとって重要なタスクが3つある

−実際に不動産投資家の皆さんのお話を伺うと、かなりの努力をされていますね。八木さんが考える不動産投資家にとって重要なタスクとはなんでしょうか?

1つ目の重要タスクは、物件購入前の銀行の開拓です。銀行が融資してくれないと不動産投資はできません。私は営業職出身なので、開拓はがむしゃらに行います。いろいろな銀行にあたるのはもちろん、ときには同じ銀行の支店ごとの開拓を行うこともあります。

私は、名古屋の賃貸物件も買っているのですが、名古屋の銀行は融資基準が厳しいことで有名です。とくにこういったエリアでは、がむしゃらに開拓しなければ、不動産投資はできません。

2つ目の重要なタスクは、書類を読み込むことです。ここでいう書類とは、物件概要書、重要事項説明書、売買契約書、サブリース契約書などのことです。たとえば、不動産投資の初心者は、売買契約前に宅建士さんと重要事項説明書の読み合わせがあるので、それで大丈夫と思いがちです。しかし、買主にとって不利な内容が書かれている可能性があるため、それぞれの書類の中身をしっかりチェックすることが大事です。

とくに重要事項説明書の説明は、宅建士さんが難しい内容をずっと読み上げているから、それを聞いている買主のほうは思考停止に陥りやすいです。宅建士さんがいるから大丈夫、そんな思い込みを捨てて集中するべきでしょう。

3つ目が、中古の一棟物件を購入される人はレントロール(不動産の賃貸借条件をまとめたもの)のチェックも欠かせません。これは、現地に行って実際の物件を見ながらチェックしてください。私自身、物件購入時に現地には絶対行きますね。行かないことは、ありえないです。

検討中の物件近くにスーパー銭湯があるのはプラス材料

−八木さんは今までに計7棟の物件を購入されていますね。購入前に、エリアデータを分析されるのでしょうか?

エリアデータは公示価格ぐらいしか見ないです。地価が上昇しているか、下降しているかはチェックします。理想は、地価が上昇していることですね。少なくとも地価が下降しているエリアの物件は買いません。

−エリアデータは重視しないのであれば、物件選びのポイントは何でしょうか?

周囲がどんな雰囲気か、周囲に何があるかが重要です。わかりやすい内容でいえば、交通手段が電車中心のエリアであれば、駅前のロータリーが整備されていて賑わっていることはプラスですね。具体的には、駅前のロータリーがあって、すぐ近くにカフェやスーパーがあって賑わっているようなイメージです。こういった雰囲気だと、賃貸ニーズが見込めます。

あとは、出来れば、物件の近くにファミリータイプの分譲マンションがあって欲しい。近くにファミリータイプの分譲マンションがあると、競合になるのでマイナスと考える人もいるかもしれませんが、決してそうではありません。なぜなら、私が購入することの多いのはエレベーターなしの一棟マンションですが、こういった物件とファミリータイプの分譲マンションは競合関係ではないからです。ファミリータイプの分譲マンションがあることで、道が整備されたり大型スーパーができたりなど居住環境がよくなる可能性があります。

−郊外エリアの賃貸ニーズを見極めるポイントはありますか?

イオンなどの店舗が近くにあるかも指標のひとつです。といっても大型モールではなく、広めの駐車場がありつつ日常のお買い物ができるスーパー、クリーニング、ATMなどが一体化したタイプの店舗ですね。イオンなどの店舗は、商圏人口や街の発展性・持続性をしっかりリサーチして出店しているので、そこに乗っかるって感じですね。

あとはスーパー銭湯があるとプラス。なぜなら、私が購入することの多いエレベーターなしの一棟マンションは、単身男性が入居者の中心だからです。スーパー銭湯が近くにあるということは、近隣に単身男性がたくさんいる可能性があると考えられます。

黙ってコツコツ働いて欲しいから築古物件は買わない

−購入を検討している物件にこれがあったらプラス、というような設備や機能はありますか?

宅配ボックスは、あったらプラスですね。購入した物件に宅配ボックスがなかったら、後付けするケースもあります。最近は、ECショッピングを皆さん使いますから、あるだけで入居者から喜ばれたりします。あとは、自転車置き場はマスト、駐車場は車の所有率が高い地域であれば必要です。

−購入されている物件の築年数の傾向はありますか。

おおむね築10年から20年程度の物件を購入しています。築年数は古くなるほど高利回りになりますが、修繕や入居者付けなどの手間がかかります。つまり、労働の部分の割合が増えてくるわけです。この労働をどこまで許容できるかは人それぞれ違いますので、事前に考えておいたほうがよいでしょう。

たとえば、私の場合でいえば、もちろん高利回りやキャッシュフローも欲しいですが、不動産投資にそれほど時間を使いたくない。だから、中古物件のなかでも比較的、手間のかからない築年数が浅いものに絞っていいます。物件には黙ってコツコツ働いてほしい(笑)。この基準で築年数を選んでいます。

八木エミリーさん公式ブログ:https://yagi-emily.com/
今年出版の新著はこちら:https://yagi-emily.com/archives/979

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