フィリピン,REIT
(画像=r.nagy/Shutterstock.com)

フィリピンREITの歴史

フィリピンREITを発展させるための法的な枠組みを確立し、そのための市場環境を整える共和国法No.9856、通称・不動産投資信託(REIT)法が、2009年12月に成立、2010年2月9日に施行されました。

証券取引委員会(SEC)はREITの施行規則(Implementing Rules and Regulations(IRR))を2010年5月13日にリリース、さらにIRRの改正版が2011年4月27日にリリースされました。

REIT法の主な目的は、規模の大小にかかわらず投資家に不動産の直接所有に参加する機会を与えることです。

これは、海外で働くフィリピン人労働者(Overseas Foreign Workers (OFW))だけでなく、外国人投資家にとってもオルタナティブ投資の手段となります。また、経済発展、観光業の成長、資本市場の流動性を促進する一方で、不動産会社は安く資本を調達することができます。

国内外の投資家に幅広い金融商品を導入するために、フィリピン証券取引所はフィリピン政府のREIT法の施行を積極的に支持しています。

しかし、高い浮動株比率要件や、REIT会社への不動産の移転にかかる課税のために、フィリピンREITは過去10年間、活性化しないでいました。

REIT法施行規則(IRR)の緩和

2020年1月20日に発表された、見直し後の施行規則(IRR)により、これらネックとなっていた要件がついに緩和されました。

主な変更点として、浮動株比率要件は以前の67%から大幅に下げて33%になり、不動産会社からREITへの不動産の移転にかかる付加価値税(VAT)12%が免税となりました。

これを受けて、1988年設立不動産開発大手アヤラランドの子会社AREITは、2020年2月7日、フィリピン初のREIT募集に向けてSECに届出を行いました。

アヤラランドは、AREITを通じて、一株当たり30.05ペソで株式を発行し、約150億フィリピンペソ(約320億円)を調達したい考えです。調達した資金は、将来のフィリピンの不動産投資に使用されるとのことです。

また、マニラにおけるオフィス需要をけん引する中国オフショア・ゲーミング運営会社を多くテナントにかかえるダブル・ドラゴンも、最高660億ペソ(約1,407億円)のREIT株式の売り出しを検討していると報じられています。

2020年から2025年にかけて、毎年110億ペソ(約234.5億円)相当の株式の売り出しを計画しているとされています。

このほかにも、ロビンソン・ランド、SMプライム・ホールディングス、センチュリー・プロパティーズ・グループなどが過去にREITへの関心を表明しており、アヤラランドやダブル・ドラゴンに続くかどうかが注目されます。

タイやマレーシアの市場規模に匹敵するまでに成長できるか

不動産投資信託(REIT)のフィリピンへの導入は、既存の投資家だけでなく、初めて投資をしようとする人も呼び込み、潜在的な可能性が高いとして期待が寄せられています。

2020年3月4日にフィリピン・マカティシティで行われたブリーフィングで、アヤラ系のフィリピン・アイランズ銀行(BPI)のコーポレートバンキング戦略・商品・ソリューションヘッドのレジナルド・カリアソ氏は、マレーシアのREIT(時価総額70億USドル(約7613億円))、タイのREIT(時価総額110億USドル(約1兆1,963億円))を引き合いに出し、フィリピンREITもそのレベルに達する潜在的な可能性があると述べました。

シンガポールや香港といった成熟市場と比べるとフィリピンREITは立ち上がりに時間はかかりましたが、カリアソ氏は、フィリピンの人口と急成長中のGDPが、マレーシアやタイなどの国々に追いつけるのではないかと考えています。

カリアソ氏は、株式市場が新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で不安定となっている今、投資の多様化を求める投資家にとってREITは「よりコンサバな手段」として魅力的な資産クラスとなるだろうと述べています。

2020年3月27日現在、フィリピン政府は、ルソン地域全域において「強化されたコミュニティ隔離措置(Enhanced Community Quarantine)」を実施中です。

各家庭における厳格な自宅隔離措置や、大量輸送用の公共交通機関の運行停止、スーパーや病院、銀行等を除く商業施設・公共施設の業務停止など幅広い措置が実施されています。

フィリピン証券取引所も、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、トレーダーや職員の安全を確保するためとして3月17日に取引を停止しましたが、19日より取引を再開しています。

以上