不動産売却で登録するレインズの活用法と注意点
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

不動産を売却する際に登録する情報ネットワーク「レインズ」。売主はその仕組みやメリットを知っておくと、売却の結果が大きく変わる可能性があります。不動産会社任せにしがちなレインズへの登録ですが、今回紹介する主なポイントを知ると物件がより多くの人の目に触れ、早期に売却できるかもしれません。

レインズとは不動産情報のネットワーク

レインズ(REINS)は「Real Estate Information Network System」の略称で、国土交通大臣から指定された不動産流通機構が運営しています。ここに物件情報が登録されると、他の不動産会社が閲覧できるようになります。

レインズの利用には登録が必要で、現在は不動産会社の利用に限られています。

レインズに物件を登録する3つのメリット

レインズに物件情報を登録する主なメリットは、以下の3つです。

物件情報が多くの目に触れるため早期売却につながる

売主と物件の売却仲介契約をした不動産会社が物件をレインズに登録すると、他の不動産会社がその情報を目にします。その結果チャンスが増え、スピーディーに売却できる可能性が高まります。

物件の売却価格相場を調べられる

レインズには、過去に売買された物件の売買成立年月日や取引価格などの情報も蓄積されています。これを閲覧することで、不動産会社は依頼物件の適正な売却価格を判断できます。その相場を教えてもらえば、売主も相場と乖離した価格設定を回避できるでしょう。

登録することで囲い込みを回避できる

レインズに登録することで、後述する他の不動産会社が見つけてきた買主に物件を買わせない「囲い込み」を防げます。囲い込みをされると物件を売却できる機会が減ってしまい、売主にとっては大きな損失となります。

契約の種類とレインズへの登録条件

レインズへの登録条件は、売却を依頼するときの契約の種類によって変わります。

契約の種類契約内容登録条件
専属専任媒介契約媒介契約できる不動産会社は1社
自分で見つけた買主との直接取引は不可
契約締結の翌日から5日以内にレインズに登録
専任媒介契約媒介契約できる不動産会社1社
自分で見つけた買主との直接取引は可
契約締結の翌日から7日以内にレインズに登録
一般媒介契約複数の不動産会社と媒介契約ができる
自分で見つけた買主との直接取引は可
レインズに登録する義務はない(任意登録は可)

レインズへの登録義務がある専属専任媒介契約と専任媒介契約は、成約になれば利益を得られる可能性が高いため、「不動産会社が買主を積極的に探す」という売主側のメリットがあります。

専属専任媒介契約では週に1回以上、専任媒介契約では2週間に1回以上、売主への販売状況報告が義務付けられます。この点でも、活発に販売活動が行われることが期待できます。

どのような情報が掲載されているか

レインズに登録できる物件情報の項目は約500ありますが、必須項目は「売り出し価格」「専有面積」「住所」「間取り・部屋数」「取引形態」の5つ。「引き渡し入居時期」「建物階数」「築年月」「都市計画」「用途地域」「建ぺい率」「容積率」の登録率は、50%以上です。

一方で、売買の際に確認したい「権利関係」「不動産の環境」「設備状況」「図面」などは登録率が50%未満と、情報が不足している項目です。

売り主のレインズ活用法

物件の登録は不動産業者しかできませんが、売主が自分の物件がどのように登録されているかを確認することはできます。登録された項目に相違がないか、売主にとって大きな機会損失である「囲い込み」がされていないかも確認できます。

「囲い込み」を防ぐ

売却を依頼された不動産会社は、「できれば自分が見つけてきた買主に物件を買ってもらいたい」と考えます。売主と買主の双方を仲介できれば、それぞれから手数料を受け取れるためです。

しかし、別の不動産会社が見つけてきた買主に売却することになれば、売主側の仲介手数料しか手にできません。

そのため、他の不動産会社から「買いたい人がいる」と問い合わせがあっても、「すでに商談中のため紹介できない」と虚偽の回答をする「囲い込み」を考える不動産会社があります。これは売主にとっては売却機会の損失であり、自社の利益を優先した悪質な手口です。

囲い込みの確かめ方

売主はレインズのステータス管理ページに表示される物件の取引状況で、囲い込みがされてないか確認できます。取引状況は、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のいずれかが表示されます。

いつでも取引可能な状態であれば「公開中」と表示され、他の不動産業者からの紹介依頼を拒めません。しかし「公開中」でない場合は、囲い込みをされている可能性があります。

ただし「公開中」となっていても、問い合わせに対して「購入希望者がいて商談中」と答えられてしまうと売却機会は失われます。仲介を頼む不動産会社を選ぶ際は、信頼できる相手かどうかしっかり確かめるようにしましょう。

レインズに登録しないほうが売れる?

不動産を探している人の中には、レインズに登録されていない情報を求める人もいます。「お宝情報はレインズに登録されない」「レインズの物件は売れ残り」と考えているようです。この噂が広まり、売主の中には「レインズに登録しないでほしい」とリクエストする人もいます。

確かにレインズに載せない物件はありますが、それは不動産業者が以前から物件を探している人を知っていて、その希望に合う物件の仲介を依頼されたときです。

あるいは、本当に優良な物件は不動産会社が買い取り、賃貸などに出すためレインズに登録されないこともあります。つまりレインズに登録されない物件は、すでに買い手が決まっていることが多いのです。このようなケース以外は、レインズに登録したほうが多くの不動産業者の目に触れるため、売れる確率は高まります。

レインズが抱える3つの課題

メリットの多いレインズですが、課題もいくつかあります。

網羅性が低い

1つ目の課題は、日本の不動産情報をすべて網羅していないことです。レインズに登録する義務があるのは、専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合のみです。そのため、一般媒介契約の物件情報は登録されないことが多く、取引できる物件がすべてレインズで探せるわけではありません。

また、空き地や農地、森林、公的不動産などは登録されません。そのため、これらの物件を探すときはレインズ以外も調べる必要があります。

情報項目が少ない

2つ目の課題は、情報の項目が少ないことです。2016年から物件の性能や住宅履歴、リフォーム状況などが追加されましたが、一般購入者の関心が高いハザードマップや学校区、周辺施設、上下水道の整備状況などの項目はありません。

また、前述のとおり項目があっても未登録のものが多く、レインズだけで物件を絞り込むのは難しいのが現状です。

速報性が低い

3つ目の課題は、速報性が低いことです。レインズへの登録条件は契約締結から5日後・7日後となっており、自社で買主を探したい不動産会社はあえて期日まで登録しないこともあります。するとその間は情報が共有されないため、他社経由の買主を逃していることになります。

また、その間に物件の状況が変わっている可能性もあり、登録されている情報が正確ではないことも考えられます。

課題を理解しつつ積極的に活用

レインズに登録すれば、不動産を売却するチャンスが増えることは明らかです。しかも、囲い込みのような売却のチャンスを阻む行為を防止できます。不動産を売却する際は不動産会社に丸投げせず、自分でもレインズの仕組みを理解して、より有利な条件で売却できるように活用しましょう。

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