不動産投資の初期費用の目安はどれくらい?項目と内容も交えて解説
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本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

初期費用のことを知らずに不動産投資を始めてしまうと、売買やローンの契約時に「こんなに出費がかさむのか…」「手元のお金が足りなくなった…」といった状況に陥りやすいです。後々トラブルにならないよう、不動産投資をはじめる前に初期費用の基本(項目、内容、ポイントなど)を理解しておきましょう。中級者も復習の意味でご一読ください。

初期費用の目安がメディアによってバラつく理由

はじめに不動産投資における初期費用とは何か、目安はいくらなのかを整理したいと思います。不動産投資に限らず、あらゆる投資は始めるときに元手となるお金が必要です。初期費用とはこの元手のことです。

不動産投資を始める人が気になるのは「初期費用がいくらか」ということでしょう。初期費用の目安について解説しているネット記事は相当数ありますが、メディアによって目安はバラバラです。たとえば物件価格の「8〜10%」という解説もあれば、「15%」という解説もあります。

初期費用の目安がバラつく理由のひとつは、頭金(自己資金)の設定や扱いがメディアによって異なることが挙げられます。住宅購入時の一般的な諸費用は物件価格の約5〜10%と言われます。この諸費用を初期費用と考えれば「初期費用は5〜10%程度」となるでしょう。ただし、この諸費用に購入価格の約10〜20%が目安と言われる頭金を足せば、「初期費用は15〜30%程度」になります。
※ ただし、区分マンション投資は頭金なしのフルローンのケースも多々あります。

つまり、頭金の設定によって初期費用は大きく変わってくるというわけです。そのため、初期費用がいくらかを確認するときは「頭金が含まれるのか」「含まれるとしたらどれくらいの設定なのか」など中身を把握することが大事です。

ちなみに、金融庁による全国の銀行・信金などを対象にしたアンケート調査によると「物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているか」の問いに対する回答は次の通りです。

不動産投資の初期費用の目安はどれくらい?項目と内容も交えて解説
画像:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(平成31年3月)

上記のように不動産投資の物件購入時に頭金が必要かはケースバイケースですが、本稿では初期費用には頭金が含まれるという前提で解説していきます。

不動産投資の初期費用の項目とその内容を知る

次に整理したいのは不動産投資の初期費用の項目(種類)です。これは次の2つの大枠に分けられます。それぞれの内容をくわしく見ていきましょう。

A:売買契約や決済に関わる初期費用
B:ローン契約に関わる初期費用

A:売買契約や決済に関わる初期費用

不動産投資の売買契約や決済に関わる主な初期費用の項目と内容は次の通りです。

項目内容
物件の購入費や頭金・不動産投資で運用する物件の代金
・不動産投資ローンを利用する場合は頭金(初期費用)が必要
印紙代・売買契約書や金銭消費貸借契約書(ローン契約書)に貼付する印紙の代金
・売買代金やローン債権額で金額が変わる
損害保険料・火災、地震、水災などに備える保険料
不動産登記費用・物件の所有者や所有権、あるいは抵当権などを登記するための費用
司法書士の報酬・上記の登記手続きを代行する司法書士に支払う報酬
・事務所によって報酬設定が違う
不動産取得税・物件取得の際に納める税金
・実際には登記から3〜6ヵ月後に課税されることが多い
仲介手数料・物件を仲介する不動産会社に支払う報酬
・新築物件(売主)は仲介手数料がない

このほか、中古物件の場合は固定資産税などの精算金(日割り計算が一般的)が必要になることもあります。

上記の項目のうち、負担する金額がとくに大きいのは「不動産登記費用」「司法書士の報酬」「不動産取得税」「仲介手数料」などです。これらの内容と計算方法は次の通りです。

・不動産登記費用の計算方法は?
不動産投資で物件を取得した場合、土地と建物などの不動産登記(以下、登記)が必須です。登記とはその土地や建物の基本情報や所有者などを国(法務局)のシステムに記録することをいいます。不動産の取得時に登記を怠ったり不備があったりすると、相続トラブルに発展しやすいため注意してください。なお、登記の際に納める登録免許税の税率は次の通りです。

対象になるもの登記内容税率
土地売買による所有権の移転登記固定資産税評価額の0.2%
建物
新築の注文住宅など
所有権保存登記課税標準の0.4%
建物
建売住宅や中古売買など
所有権移転登記課税標準の0.2%
土地と建物の抵当権抵当権設定登記債権金額の0.4%

※土地の登録免許税は 2023年(令和5年)3月31日までの軽減税率です。

・不動産取得税の計算方法は?
不動産取得税の土地分の計算方法は「取得した土地の価格×3%」から減額分がある場合はこれを差し引いた税金です。また、家屋(建物)分は「(取得した家屋の価格-特別控除額)×3%〈非住宅の場合は4%〉)」です。

ただ一般の人であれば不動産取得税の自動計算ツールを使うのが早いでしょう。一例として東京都主税局の計算ツールはこちらになります。

・仲介手数料の設定はどれくらい?
仲介手数料(売買)とは、新築の仲介物件や中古物件を仲介する不動産会社に支払う成功報酬です。仲介手数料の報酬額の設定は売買の取引額によって上限が変わってきます。

売買の取引額報酬額の上限(税抜)
200万円以下の部分取引額の5%以内
200万円超400万円以下の部分取引額の4%+2万円
400万円超の部分取引額の3%+6万円

・司法書士の報酬はどれくらい?
不動産登記の手続きは司法書士が代行するのが一般的です。このとき支払う報酬はエリアや事務所ごとに変わってきます。

目安としては日本司法書士会連合会が全国の司法書士を対象に行った報酬についてのアンケートが参考になります。土地1筆と建物1棟(固定資産評価額1,000万円)の所有権移転登記の手続きを代行した場合(売買契約書などの作成含む)のエリアごとの平均報酬額は次の通りです(有効回答数1,091人)。

エリア平均報酬額
北海道地区4万2,999円
東北地区4万2,585円
関東地区5万1,909円
中部地区5万1,065円
近畿地区6万4,090円
中国地区4万8,035円
四国地区5万1,369円
九州地区4万5,729円

日本司法書士会連合会の調査(2018年1月実施)より抜粋

エリアによって司法書士の報酬の相場が変わってくることをご理解いただけたと思います。同じエリア内でも個々の事務所で設定は違います。「報酬が高いのでは?」と感じたら、複数の事務所に相見積もりをとってみるのも1案です。

B:不動産投資のローン契約に関する初期費用

物件の購入費用をローンでまかなう場合、下記の初期費用も必要になります。

項目内容
融資事務手数料・事務取扱手数料とも言われる
・融資をしてくれる金融機関に支払う
・設定は金融機関によって異なる
・定率型/定額型がある
団体信用生命保険料・ローン契約をする際にほぼ強制で加入要請される保険料
・無料/有料がある
融資保証料・融資の保証会社に支払う
・融資期間などによって保証料が変わる

不動産投資の初期費用は早めに計算を

ここまで本稿では、不動産投資の初期費用の目安がメディアによってバラつきがある理由から始まり、売買契約や決済に関わる初期費用、そしてローン契約に関わる初期費用についてお話ししてきました。

不動産投資の初期費用には実に多くの項目がありました。これらの項目を積み上げた結果、初期費用がトータルでいくらになるのかはケースバイケースです。「初期費用は物件価格のこれくらい用意すればよい」といった思い込みはトラブルのもとですのでやめましょう。

不動産会社にサポートしてもらいながら、初期費用の総額を早めに計算しておくのが無難です。

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