前回に引き続き、不動産投資の初心者向けに不動産所得の確定申告のやり方をお伝えします。
不動産所得における必要経費欄の書き方
青色申告決算書と収支内訳書の1ページ目は「収入金額-必要経費=不動産所得」を計算するところです。この必要経費の欄を見て、混乱する人がいます。自分が実際に払った経費と決算書や内訳書に書いてある必要経費の名前が一致しないからです。そのため、「司法書士に手数料を払ったけど、これは『給料賃金』に書くの?」「運営管理費を管理会社に支払ったけど、どこに書けばいいかわからない」といった疑問が出てきます。
1ページ目に書いてある必要経費の名称のそれぞれの意味は、以下のとおりです。
・給料賃金
従業員として雇っている家族以外の人に支払った給料や手当
・貸倒金
売上に計上したが回収できなくなった家賃収入、更新料、礼金
・地代家賃
建物や土地を誰かから借りている場合に支払う地代や家賃
・借入金利子
賃貸事業を行うにあたって借りたお金の利息(借入金の元本は必要経費ではないので対象外)
・損害保険料
建物の火災保険料や地震保険料を指し、月数に応じて按分する
・租税公課
印紙代や不動産取得税、固定資産税や事業税などの税金(個人の所得税と住民税は必要経費ではないので対象外)
・減価償却費
建物を使った期間に応じて計上する建物の経費化部分を指し、「建物」「付属設備」は定額法、それ以外は定率法で計算する(土地は減価償却しないので対象外)
・修繕費
建物の原状回復のためのメンテナンス代を指し、資産価値が上がるような修繕費は必要経費にならず、「建物」「付属設備」などの資産として貸借対照表に記載する
・雑費
その他の経費という意味で、振込手数料などにおいて使うことが多い
・専従者給与(青色申告決算書)
青色事業専従者として届け出た家族への給料
・専従者控除(収支内訳書)
家族へ支払った給料の一部を経費として差し引ける金額
司法書士などへ支払った専門家手数料や管理運営費などは、別途「支払手数料」「管理運営費」など科目を自分で決めて空欄に書き込みます。減価償却費は自分で計算しましょう。なお専従者給与や専従者控除は、不動産賃貸事業を1人で運営できない規模でないと、原則認められません。
参考:「不動産賃貸業で家族への給与を必要経費にする条件」
「不動産投資で押さえておくべき減価償却費の計算と3つの節税方法」
青色申告決算書・収支内訳書でこの2つの明細は必ず書く
不動産所得の青色申告決算書・収支内訳書では、損益計算や収支計算以外に最低限、以下の2つの明細を記載します。
・不動産所得の収入の内訳
・減価償却費の計算
不動産収入の内訳は、賃借人との契約書や不動産の売買契約書、管理会社からの収支報告書をもとに記載します。
減価償却費の計算は、建物の取得価額を記載した上で計算します。なお、青色申告をする人は30万円未満の固定資産、白色申告(青色申告以外)をする人は10万円未満の固定資産については、明細を記載する必要はありません。
決算書・内訳書の項目はこう対応させよう
「決算書や内訳書で所得(利益)は計算できたけど、確定申告書Bにどう書いたらいいかわからない」という人もいるでしょう。青色申告決算書または収支内訳書と確定申告書Bは、以下のように項目を対応させます。
・「青色申告決算書の『収入金額計④』」または「収支内訳書の『収入金額計⑤』」→「確定申告書B」の第一表「収入金額等(緑色)『不動産(ウ)』」
・「青色申告決算書の『所得金額㉓』」または「収支内訳書の『所得金額⑮』」→「確定申告書B」の第一表「所得金額(青色)『不動産③』」
・「青色申告決算書の『専従者給与⑳』」または「収支内訳書の『専従者控除⑭』」→「確定申告書B」の第一表「その他(ピンク色)『専従者給与(控除)の合計額㊿』」
・「青色申告決算書の『青色申告特別控除額㉒』」→「確定申告書B」の第一表「その他(ピンク色)『青色申告特別控除額(51)』」
また、確定申告書Bの第二表「事業専従者に関する事項」の欄に、青色事業専従者や専従者控除の対象となっている家族の氏名や生年月日、マイナンバーなどを記入します。
納付や還付の手続き
税額を計算して源泉所得税の還付が受けられるならば、第一票の右下に自分名義の銀行口座を記入します。納税額が出たら、納付書をもらって税務署や郵便局、銀行で納付するか、クレジットカードでオンライン納付をします。このほか、QRコードによるコンビニ納付や振替納税もできます。ただし、別途手続きが必要です。
税務署に提出すべき書類
税務署に提出するのは、以下の3つです。
・青色申告決算書または収支内訳書
・確定申告書B
・マイナンバー関連書類
マイナンバーカードを持っている人はマイナンバーカードを、通知カードを持っている人は「通知カード+身分証(運転免許証など)」を提出
なお、社会保険料控除や医療費控除を受ける場合は、控除証明書や明細書を添付する必要があります。
提出方法
提出方法には、以下の3つがあります。
【税務署に直接提出】
税務署や確定申告会場に行って提出する方法です。その場で相談しながら申告書を作成することもできます。
【郵送】
自分の住所を管轄する税務署に郵送して提出する方法です。申告書の控えを返送してもらいたいときは、切手を貼り付けた返信用封筒を同封します。次年度以降も過去の申告書をもとにして作成する可能性が高いので、控えを返送してもらうといいでしょう。
【e-tax】
オンラインで申告が完結する方法です。e-taxでの申告は事前にID・パスワードの取得手続を税務署で行う必要があります。思い立ってすぐe-taxで申告することはできません。
昨今は「スマホで申告」が宣伝されていますが、不動産所得はスマホで申告することができません。パソコン経由のオンライン申告のみです。
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