不動産オーナーがコロナ禍で最も注目しているのが、家賃補助対策ではないでしょうか。自粛要請により店子の売上が急減した今、家賃減額や解約を心配する貸手は多いでしょう。そこで今回は、先日閣議決定したテナント救済策「家賃支援給付金」についてお伝えします。
第二次補正予算案「事業主への家賃補助策」が閣議決定
新型コロナウイルス感染症を受けて様々な経済対策を打ち出してきた政府ですが、「不十分だ」という国民の批判が止まりません。そのため総額33兆円規模の第二次補正予算案を編成、5月27日に閣議決定しました。予算案の中では、売上が急減したテナントの家賃についても救済策が設けられました。
事業経営で最もお金がかかるのが、人件費と地代家賃です。人件費については、すでに「雇用調整助成金」「小学校休業等対応助成金」「働き方改革推進支援助成金」で手当てがなされています。
一方、地代家賃については「2020年度分の固定資産税の納税の猶予」「2021年度分の固定資産税の減免」「コロナによる家賃減額についての法人税の損金算入」くらいしかありません。つまり、「返さなくていい国のお金」による手当てがないのです。持続化給付金はありますが、あっという間に使い切ってしまうでしょう。
そこで今回の第二次補正予算案では、テナント家賃を補助するための「家賃支援給付金」が2兆円を超える規模で編成されました。
コロナ禍対策の「家賃支援給付金」の仕組み
家賃支援給付金とは、コロナ禍によって売上が急減した中小企業や個人事業主に対し、半年分のテナント家賃の一部を給付するというものです。ただし、売上が減っていれば誰でも受けられるというものではなく、売上減少の度合いに条件があります。また、法人・個人の違いや月額家賃によって、上限額や給付率が変わります。
売上減収のテナントが対象
家賃支援給付金の給付対象となるのは、以下のいずれかに該当する中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業主です。
- 令和2年5月から12月までの間のいずれか1ヵ月間の売上高が前年同月比で50%以上減少していること
- 令和2年5月から12月までの間のいずれか連続する3ヵ月間の売上高が前年同月比で30%以上減少していること
法人のテナントは最大600万円支給
中小企業などの法人については、保有する店舗数によって上限額が変わります。1店舗のみなら月額50万円(総額300万円)が、複数店舗なら月額100万円(総額600万円)が上限です。
さらに、月額家賃によって給付率が変わります。月額75万円までの部分については2/3、75万円超の部分については1/3です。
個人のテナントは最大300万円支給
個人事業主についても、保有する店舗数で上限額が変わります。
1店舗のみなら月額25万円(総額150万円)が、複数店舗なら月額50万円(総額300万円)が上限です。
法人と同様に、月額家賃によって給付率が変わります。月額家賃37万5,000円までの部分については2/3、これを超える部分は1/3です。
具体例:1店舗経営の個人事業主のケース
少々わかりにくいので、例を挙げて考えてみましょう。月額家賃50万円の個人事業主が1店舗を経営しているケースで計算します。
(1) 37万5,000円(※)×2/3=25万円
※37万5,000円≦50万円 ∴37万5,000円
(2)(50万円-37万5,000円)×1/3(※)=4万1,666円
(3) (1)+(2)=29万1,666円>25万円 ∴算定給付額は月額25万円
(4) 25万円×6ヵ月=150万円 ∴家賃支援給付金の総額は150万円
売上急減のテナントは解約せず、給付金活用をすすめよう
テナントの家賃支払の先延ばしや減額は、コロナ禍であっても避けたいものです。家賃収入が減ってしまうことはもちろん、売却時の評価額も下がってしまうおそれがあるからです。解約は、なおさら受け入れがたいでしょう。できるだけ現状の家賃収入を維持するためには、テナントから家賃減額や解約の申し入れがあった際、本記事で紹介した家賃支援給付金を勧めてみることをおすすめします。
ただし、この制度はまだ閣議決定の段階です。6月17日に閉会する予定の国会で、予算案が可決されることで成立します。申請受付は6月下旬から7月初旬、給付は7月以降になるはずです。正確な情報は、予算成立後に経済産業省のウェブサイトなどで確認するようにしてください。
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