賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
(画像=NicoElNino/Shutterstock.com)
木崎涼
木崎涼
大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパートの資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。

スマホ1つで簡単に入居できる「OYO LIFE」。2019年3月28日、インド発のホテル会社OYOがYahoo!Japanとともに、一風変わった賃貸サービスの提供を開始しました。日本の賃貸業界を大きく変える可能性のある「OYO LIFE」の実態に迫ります。

「OYO LIFE」で日本の賃貸市場が変わる

「旅するように暮らそう」という魅惑的なキャッチコピーをかかげたOYO LIFE(オヨライフ)が、サービス提供を開始しました。「OYO LIFE」では、敷金礼金不要で、スマホ1つで簡単に入居することができます。家具家電つきでWi-Fi完備なので、手ぶらで入居しても問題ありません。食器やタオル、シーツや枕カバー、掃除機、物干しざお、カーテンなど生活に必要なものは一通りそろっています。

「OYO LIFE」の公式ページでは「東池袋駅から徒歩6分1K、15万7,000円」など駅近の物件が多数紹介されています。2019年4月時点は首都圏のみですが、順次拡大予定とのことです。今後は、地方都市をはじめ全国的にサービス展開していくと予想されます。「OYO LIFE」のサービスは、インドのホテル運用会社OYOとYahoo!Japanが設立した合弁会社によって運営されています。

OYOはインドのベンチャー企業で、世界8ヵ国に不動産事業を展開するグローバル企業です。「OYO LIFE」という新たなサービスによって、日本の賃貸市場は大きく変革のときを迎えているといえるでしょう。

「OYO LIFE」のサービスの特徴

「OYO LIFE」では、31日以上90日以内のショートステイと91日以上のロングステイの2種類を選択することができます。最短の契約期間は31日です。また、「OYO LIFE」には数日間のお試し期間が設けられているため、安心して契約することができます。「OYO LIFE」では、スマホで物件探し・契約・決済のすべてを行うことができ、最短30分で入居可能です。

敷金礼金だけでなく、仲介手数料も発生しません。また、家事代行や公共料金、通信費などがサービスに含まれています。「OYO LIFE」の賃料は、首都圏の駅近物件であることから、マンションタイプで10万円超からと少し高めな印象です。しかし、引越しにかかる費用や入居までの手続きの煩雑さなどを差し引けば、「OYO LIFE」の方が安くすむ可能性もあります。

また、「OYO PASSPORT」という定額サービスに加入することで、家事代行やシェアオフィス、カーシェアなどOYOの提携企業のサービスを1カ月無料体験することが可能です。OYOは、今後も積極的に提携企業を増やしていく姿勢で、「OYO PASSPORT」はさらに充実していくことが予想されます。「OYO LIFE」が提案するように、仕事や気分に応じてあちこちの物件を渡り歩く生き方はもちろん、旅行や出張などの短期滞在でも活用できそうです。

「OYO LIFE」は賃貸市場だけでなく、人々の暮らし方や余暇の過ごし方にも大きな影響を与える可能性があります。最近では、断捨離の流行やモノを所有しないミニマリストの生き方が注目されるなど、「所有」から「共有」へと時代が移行しつつある傾向です。豊か過ぎる現代社会において、所有がステータスとなる時代は終わり、身軽に自分らしく生きることこそが憧れの対象となっています。

そんな人々の意識の移り変わりに対応した新たな不動産経営のあり方を、「OYO LIFE」は示してくれているといえるでしょう。

関連記事

  • 不動産で儲けている意外な企業 老舗企業や世界遺産も?

    あまり知られていないかもしれませんが、実は日本マクドナルドホールディングスやサッポロホールディングス、松竹などの大企業が不動産事業で売上をあげています。今回は、これらの企業の実態に迫るとともに、不動産事業が本業を補てんするリスクヘッジとして適している理由や、隠れ不動産会社の見つけ方を解説します。

「OYO LIFE」は不動産オーナーにもメリットがある

「OYO LIFE」は不動産オーナーに対して賃貸物件の登録を促しています。「OYO LIFE」と契約することで、長期借り上げによって空室リスクがなくなることや、管理会社への手数料支払いがなくなること、定期的なメンテナンスで賃貸物件の価値が保たれることなど、不動産オーナーにとってもメリットが多い傾向です。「OYO LIFE」は、人工知能をはじめとしたITのスペシャリストを数多く抱え、宿泊データの分析によって最適な賃料設定や空室リスクの低減に日々努めています。

ホテル事業においては、ホテルオーナー向けに収益や入居率をスマホで管理できるツールも提供。今後、入居者向けのサービスが拡充されるとともに、オーナー向けサービスも向上していく可能性があります。首都圏の駅近の賃貸物件はもちろん、地方都市の物件を所有する不動産オーナーも、「OYO LIFE」の動向には注目しておきたいものです。

【あなたにオススメ】