不動産投資において社会情勢の変化による土地価格の変動は悩みの種といえます。家賃収入などからキャピタルゲインを形成するために行う中長期の投資においては大切な要素です。近年、技術発展が目覚ましい自動運転も長い目で見れば不動産価格に影響を与える可能性があります。本稿では、自動運転が不動産価格に与える影響について解説します。
自動運転の発展段階とは?
2010年代を通してGoogleやテスラモーターなどの米国企業を中心とした自動運転の技術開発が行われてきました。遠い未来のように思われていた自動運転ですがすぐそこまで実用化が迫ってきています。自動運転の技術レベルは、1~5の5段階です。自動運転普及による不動産価格の変動について知る前にまずは自動運転の実用化レベルについて把握しておきましょう。
レベル1:自動車の操作ミスの防止サポート
レベル1にカテゴライズされる自動運転は、ブレーキアシストや前者追従などの運転サポートシステムです。この段階では、ドライバーも必須で2020年半ばにはすでに実用化されています。
レベル2:AIによるハンドリングサポート
レベル2の段階になるとレーンキープのための加速減・ハンドリングを自動で行う機能です。2015年からすでに実用化が始まっていて2020年現在では普及が進んでいる段階です。
レベル3:AIによる一部運転代行
レベル3になると運転をAIが一部代行できるようになりドライバーはAIの補助を行う役割となります。技術的には実現可能な域に達しており、高速道路限定のレベル3車両が各メーカーから提供されると見られています。
レベル4:AIによる運転の代行、ドライバーは座ったまま
レベル4の自動運転では、ドライバー座席に座っているだけで完全にAIが運転を代行してくれます。2020年現在では、2025年ごろにはタクシーやMaasなどでの活用が見込まれていて市販車でも一部展開が予想されています。レベル4まで普及すると、移動に関する常識が大きく変わる可能性があり、それにより人々の暮らしのあり方にも変化が訪れるかもしれません。
レベル5:ドライバーは完全に不要
レベル5の段階になると車両の中にハンドルやアクセルがなくなり運転席そのものが消失します。レベル5の自動運転車両も、一部市場での展開が見込まれていますが詳しいことはまだ不明瞭な段階です。
自動運転の普及で一等地の土地価格が下がる可能性がある
ここまで自動運転の概要について説明してきました。レベル3~4段階まで普及しセクセシビリティが高度化すると駅近などのいわゆる「一等地」といわれる土地の価格が下がる可能性があります。そもそも都市の多くは交通の要衝を中心として商圏を形成し発展してきたため、主要駅近くの土地に優位性がありました。近年では、郊外の整備も進んでいるものの一等地の価値に変化はありません。
しかし自動運転が普及し従来よりも簡便な移動が可能になると移動にかかるストレス・コストが緩和されます。さらには、車内環境次第では移動そのものにも価値が生まれる可能性もあるでしょう。「都市の中心部からの移動距離」というマイナス面が改善されればコストパフォーマンスの観点から少し離れた場所にオフィスを構える企業も増えると予想されます。
それに伴い飲食業などの実店舗ビジネスも徐々に街の中心部から広まっていき「土地価格の平準化」が起こる可能性があるでしょう。つまり自動運転の普及に伴い一等地の不動産価格が加工し郊外の土地の価格が上がる可能性が考えられます。一等地の価格は下がらずとも移動運転の普及に伴い少し郊外の住宅用地の価値は、上昇する可能性が高いともいえるでしょう。
少なくとも自動運転に適したインフラ整備は順次進んでいくと予想されるのではないでしょうか。
自動運転普及はまちなかの駐車場価値も変える
自動運転の普及に伴い大きな影響を受ける要素の一つが「駐車場」です。自動運転車が増えて個人が所有する車両台数が現象すると必然的に必要な駐車場の数も減少します。自動運転社会では「離れた場所に車両を待機させ必要に応じて車を呼び出し利用後はまた自動で戻っていく」というサービスが確立される可能性もあるでしょう。
そうなると都市の中心エリアなどに点在した駐車場の需要も減っていきます。国土交通省の公表している「駐車施策の最近の動向」によると日本の駐車場台数は1991~2013年の23年間で約2.6倍でした。しかし車両保有の増加台数は減少しています。これらを踏まえると日本において駐車場は供給過多の状態にあるといえるでしょう。
日本では、商業地など駐車場需要が見込まれる地域では、施設の規模に応じて敷地内に必要台数の車両を停められるだけのスペースを確保する附置義務があります。そのため都心部であっても各地に駐車場が点在するのが現状です。しかし自動運転車の普及が進むと徐々に駐車場の「集約化」を前提としてまちづくりが行われる可能性があります。
車を停めておく駐車場は、商圏エリアの縁辺部などに集約すればエリアの中心部ではより歩行者優先の整備がなされるでしょう。少なくとも自動運転普及によって移動コストが定価すれば都心部における駐車場に対するニーズは減少します。その場合、コインパーキングなどの駐車場経営を行う土地活用は、成立しなくなる可能性もおおいにあるのではないでしょうか。
全国では次世代型「スマートシティ」計画が進んでいる
自動運転普及に伴いインフラも自動運転社会に即したものに整備される可能性があると説明しました。日本では、すでにIT導入により街全体の利便性を高めた「スマートシティ」の計画が進んでいます。スマートシティでは、スマートフォンや街中のカメラを使って情報を分析しより必要とされるサービスを効率的に提供することに主眼が置かれています。
2020年3月には、トヨタ自動車とNTTが先んじて2021年に静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地(予定)に着工される予定です。タクシーやバスなどの移動手段をアプリで使用できるMaas以外にも燃料電池などのインフラの地下への設置、住民の健康状態のチェックなどで生活の質向上が図られます。
スマートシティ計画については、政府も導入を推進しており15の都市で試金石となる「先行モデルプロジェクト」が進められています。
上記の事例のようにスマートシティ開発の波が広がっていけば不動産投資において土地の価値を判断する基準も「駅近なのか」「人が集まるのか」以外にも「スマート化がされるか否か」といった要素も加わるかもしれません。
まとめ
ここまで自動運転社会の到来がもたらす不動産投資への影響について考察してきました。自動運転の普及に伴う移動に関する利便性の向上は、今まで価値が低かった土地の価格を上昇させる可能性がおおいにあるでしょう。自動運転以外にもITを活用したインフラ整備によるまちづくりは、政府も推進しています。
そのため不動産投資を行うにあたって今後は地方エリアの同行も注視する必要があるのではないでしょうか。
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