【相談】不動産の共有者が所在不明となりました。不動産投資の好機を逃したくないのですが、どのような手段を採ることが考えられるでしょうか。
私は、1筆の土地を知人と共有していましたが、その共有者が所在不明となり、土地の管理に困っています。
また、現在、その土地の価格が上昇しており、なるべく早期に売却したいとも考えています。
私は、どのような方法を採ることが可能でしょうか。
【回答】共有者の所在調査を行った上で、事案に応じて、不在者財産管理人制度や失踪宣告の制度を採ることが考えらえます。
共有者の所在調査を行った上で、事案に応じて、不在者財産管理人制度や失踪宣告の制度を採ることが考えらえます。
共有関係にある場合の管理・処分
共有不動産を管理するためには、共有持分の過半数の持分を有する共有者が管理に関して決定することになります(民法252条)。
そして、共有不動産を売却する場合、売却行為は共有物の「変更」(民法251条)に当たり、共有者全員の同意が必要になります。
共有者が所在不明の場合
共有者の所在調査の方法について簡単にご説明した上で、取り得る方法についてご説明いたします。
なお、共有者の所在調査の方法の詳細については、令和元年12月に国土交通省が策定した「所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン」においても説明されていますので、ご参照ください
(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001328670.pdf)。
(1)共有者の調査方法
共有者が所在不明であることの確認方法としては、以下の流れとなります。
①不動産登記簿謄本を取得し(※1)、所有者の氏名等を確認します。
②不動産登記簿謄本で共有者を確認し、住民票を取得し、共有者の所在を確認します。そして、共有者へ文書を郵送したり、現地居住確認を行ったり、また、必要に応じて現地での聞き取り調査を行ったりします。
③上記方法をとっても共有者の所在が把握できない場合には、共有者の所在が不明ということになります。
※1 本人以外の第三者(同一世帯人は除きます)が、本人の委任状なしに、住民票を取り寄せることはできません。弁護士は職務上必要と認められる場合には、他人の住民票を取り寄せることが認められていますので、事案に応じて弁護士への依頼をご検討ください。
(2)不在者財産管理人制度
共有者が生存していることは分かるものの、住民票上の住所には所在しておらず、行方不明である場合、不在者財産管理人制度(民法25条以下)を利用することが考えられます。
○不在者財産管理人制度とは
土地所有者等が不在である場合に、家庭裁判所により選任された不在者財産管理人により、土地等の管理及び保存等を行う制度です。
○制度活用の流れ
①利害関係人等(※2)は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任の申立てを行います。
②家庭裁判所は、不在者財産管理人を選任します。
③不在者財産管理人は、不在者の財産を調査した上で、財産目録や財産状況に関する報告書を作成して、家庭裁判所に提出します。
④その後も、不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するとともに、家庭裁判所に対して定期的に不在者の財産状況を報告します。
※3「利害関係人」には、不在者と共に共同相続人となっている者や、不在者の債権者、不在者の財産の共有者等が該当します。
○共有不動産を売却する場合には
共有不動産を売却する場合には、不在者財産管理人が裁判所の許可を受けた上で進めることになります。
共有者は、不在者財産管理人との間で、売却金額やその分配等を協議し、売却活動を行います。
(3)失踪宣告制度
共有者の所在が不明であり、その生死が不明である場合には、失踪宣告制度(民法30条以下)を利用することが考えれます。
○失踪宣告制度とは
失踪宣告制度は、不在者で生死不明の者(遺体が確認できていない等)を死亡したものとみなし、その者に関わる法律関係を一度確定させるための制度です。
失踪宣告により、不在者は法律上死亡したものとみなされ、不在者について相続が開始します。
○制度活用の流れ
①利害関係人等は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に、失踪宣告の申立てを行います。
②家庭裁判所は、要件を満たした場合、失踪宣告を行います。
具体的には、不在者の生死が7年間明らかでないか(普通失踪)、戦地に臨んだ者や沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危機に遭遇した者の生死が危難の去った後1年間明らかでない(特別失踪)ときに、失踪宣告をすることができます。
③失踪宣告がなされた場合、死亡により相続が発生します。そして、相続人を共有者として取り扱うことになります。
○共有不動産を売却する場合には
上記の通り、失踪宣告がなされて相続が発生すると、相続人を共有者として取り扱うことになります。その共有者と売却に関する協議等を行なえばよいことになります。
最後に
共有者が不在となった場合、他の共有者は、共有物の保管(持分の比率によります)や処分について、勝手に進めることができないという事態に陥ります。
その場合には、すみやに所在調査を行った上で、事案に応じて、不在者財産管理人制度や失踪宣告制度などを活用し、不動産投資の好機を逃さないようにしてください。
本記事は不動産投資DOJOの転載記事になります。
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