不動産投資における災害リスクとは?災害リスクを軽減するための5つの方法
(画像=АндрейЯланский/stock.adobe.com)
八木チエ
八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

「不動産投資における災害リスクや軽減するための方法を知りたい」といった人はいませんか?不動産投資を検討している人の中には、災害のリスクについて不安を感じている人は少なくありません。なぜなら日本は、地震や台風など自然災害のリスクが非常に高い国だからです。実際に不動産投資をするうえで自然災害を理解して対策を講じることは重要となります。

例えば投資した不動産が倒壊し家賃収入が得られず融資の返済ができない事態に陥る可能性もゼロとはいえません。そこでこの記事では「不動産投資の災害のリスク」「災害のリスクに対する対策」について詳しく解説していきます。不動産投資で災害のリスクについて不安を感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資における災害のリスクとは?

不動産投資における災害のリスクには、主に以下の3つがあります。

  • 地震による倒壊のリスク
  • 火災によって建物が損傷するリスク
  • 洪水といった水害によって浸水するリスク

地震による倒壊のリスク

地震による倒壊は、日本における最大の災害リスクです。日本は、大規模な地震災害が多数発生しており2010~2021年の間では、以下のような最大震度7の地震が3回も起きています。

  • 2011年3月11日:東日本大震災(最大震度7)
  • 2016年4月14日:熊本地震(最大震度7)
  • 2018年9月6日:北海道胆振東部地震(最大震度7)

これらの地震では、不動産の倒壊だけでなく液状化現象よる不動産の傾きなどによって非常に多くの不動産に被害を出している状況です。こういった大規模な地震は、今後も首都直下型地震や東海地震、南海地震で起こることが予測されています。そのため日本で不動産投資を行う際には、地震に対する対策を講じることが重要です。

火災によって建物が損傷するリスク

火災が発生することで不動産が損傷したり倒壊したりするリスクも不動産投資における災害リスクの一つです。火災は、入居者が原因で発生したり隣の建物の出火が原因で発生したりするなどいつ発生してもおかしくありません。また地震によって火災が発生するリスクもあるため、火災は起きる可能性が高い災害といえます。

そのため火災に対しても備えを検討しておくことが重要です。

洪水といった水害によって浸水するリスク

近年は、台風や大雨による洪水や土砂災害の被害も増加傾向です。2015~2021年には、主に以下のような豪雨に伴い多大な被害を及ぼしました。

  • 2015年:平成27年9月関東・東北豪雨
  • 2017年:平成29年7月九州北部豪雨
  • 2018年:平成30年7月豪雨(西日本中心)
  • 2019年:令和元年房総半島台風(台風第15号)
  • 2019年:令和元年東日本台風(台風第19号)
  • 2020年:令和2年7月豪雨
  • 2020年:台風10号による暴風・大雨
  • 2021年:7月の静岡県熱海市の土砂災害

これらの災害では、洪水や土砂災害が発生しており多くの住宅が被害に遭いました。被害を受けて倒壊した住宅も少なくありません。このように日本では、大規模豪雨や台風による被害も毎年のように発生しているため、洪水などによる災害のリスクについても理解して投資を行うことが必要です。

災害のリスクを軽減するための5つの方法

不動産投資における災害のリスクを軽減するための方法は、以下の5つです。

  • 火災保険に加入する
  • 地震保険に加入する
  • ハザードマップを確認する
  • 耐震等級の高い物件を購入する
  • 中古物件の場合は購入前に住宅診断を行う

火災保険に加入する

不動産投資において金融機関から融資を受ける場合、融資条件として火災保険の加入を条件にしていることが多い傾向です。そのため金融機関から融資を利用している場合には、火災保険に加入していることが多いでしょう。しかし融資を受けていない場合、火災保険の加入はオーナーの自己判断となるため、加入していない人もいます。

前述したように火災による被害は、リスクの中でも比較的大きいため、火災保険への加入がおすすめです。ちなみに賃貸アパートなど1棟投資を行っている場合に火災保険に加入する際は、建物の全体に対しての火災保険に加入するのが一般的。各部屋の火災保険については、入居者に加入義務があるためです。

・火災保険の補償の範囲
一般的な火災保険の補償の範囲は、以下の通りです。

  • 火災や落雷、破裂、爆発による被害
  • 台風・風災・雹(ひょう)災・雪災による被害
  • 家財の盗難・水濡ぬれ・車両の飛び込みなどによる家財や建物の被害
  • 家財の破損・汚損など

このような被害は、火災保険で補償されます。ただし火災保険の適用範囲は、建物と家財に分かれるため、建物のみに火災保険をかけた場合、家財の補償がされないため、注意が必要です。なお以下の被害に関しても補償されないケースが多いため、留意するようにしてください。

災害内容被害内容
地震損壊や埋没、流失、火災による損害
噴火損壊や埋没、流失、火災による損害
地震や噴火によって発生した津波損壊や埋没、流失、火災による損害

ただし補償される範囲は、保険会社や加入する保険商品によって異なるため、加入する前に「どういったケースが補償されないのか」についてよく確認することが重要です。

地震保険に加入する

火災保険は、地震を起因とした被害を補償してくれないため、地震に対するリスクを軽減するには地震保険に加入することが必要です。例えば火災保険に加入していて地震保険に加入していない状態で地震に伴う火災で建物が被害を受けた場合、火災保険では保険金が下りません。金融機関で地震保険を義務付けているケースは少ないですが地震が発生するリスクが高い日本では、加入がおすすめです。

ちなみに地震保険は、火災保険に加入していることが前提となるため、地震保険だけでは加入できません。

・地震保険の補償の範囲
地震保険の補償の範囲は、居住用の建物と家財になります。ただし以下は、補償の対象外です。

  • 事務所や工場など事業用に使用されている建物
  • 1個または1組の価値が30万円を超える貴金属や宝石、有価証券、印紙、切手、自動車、現金など

また地震保険で保証される金額は、火災保険の保険金額の30~50%の範囲です。さらに保険金額の限度額は、「建物5,000万円」「家財1,000万円」となるため、押さえておきましょう。地震保険は、火災保険のようにすべてをカバーするための保険ではありません。あくまでも「地震発生時における生活の安定に寄与すること」が目的の保険です。

ハザードマップを確認する

不動産を購入する前にハザードマップを確認することで災害が起きる可能性がある場所を知ることができます。ハザードマップとは、国や自治体などが洪水や津波、地震、地震による液状化現象などの自然災害による被害範囲を予想して地図化したもののことです。購入前にハザードマップを確認することで災害のリスクが高い不動産を購入するのを防ぐことができます。

ただしハザードマップで災害のリスクが高くない地域でも災害による被害が起きる可能性はあるため、油断は禁物です。ちなみにハザードマップは、市区町村のホームページや国土交通省が運営するハザードマップポータルサイト、市区町村の役所で確認することができます。

耐震等級の高い物件を購入する

災害のリスクの中でもリスクが高い地震のリスクに備えるために有効なのが耐震等級の高い不動産を購入することです。耐震等級とは、地震による建物の倒壊などを防ぐ耐久力を表した基準で1~3の耐震等級があり数字が高いほど耐震性が高いとされています。耐震等級が高い不動産は、地震に対して強い耐震性を持っているため、地震リスクに対して有効です。

なお各耐震等級の地震に対する基準は以下になります。

等級基準
耐震等級1新耐震基準である数百年に1度程度の大規模な地震で倒壊や崩壊しない耐震性を有している
耐震等級2耐震等級1の1.25倍の地震に対する耐久性を有している
耐震等級3耐震等級1の1.5倍の地震に対する耐久性を有している

上記の「耐震等級1」に記載されている「新耐震基準」は、1981年に建築基準法の改正に伴って見直された基準です。1981年以前に建築された建物は「旧耐震基準」と呼ばれており耐震性が低い建物になります。そのため旧耐震基準の建物は、地震によって倒壊するリスクが高いため、購入する際に検討が必要です。

ただし旧耐震基準の建物でも耐震補強などによって新耐震基準をクリアしている場合もあります。そのため購入する際は、耐震補強の有無を確認することが重要です。

中古物件の場合は購入前に住宅診断を行う

中古物件を購入して不動産投資を行う場合は、建物の劣化状態や耐震性が判断できる住宅診断(ホームインスペクション)を行うことが災害リスクを軽減するために有効です。ちなみに住宅診断とは、第三者の住宅診断士(ホームインスペクター)に建物の基礎や外壁など建物全体の状態をチェックしてもらう診断のこと。

中古物件を購入する前に住宅診断を実施することで耐震性の低い不動産を購入するのを防ぐことが期待できます。また住宅診断によって重大な瑕疵が見つかった場合は、売り主に修繕を依頼することも可能です。このように中古物件を購入する際は、住宅診断を行うことでリスクを下げることができます。

エリアなど分散投資することでリスクヘッジができる

不動産投資をする際、災害のリスクだけでなく家賃滞納のリスクなどのさまざまなリスクを軽減するために有効な方法は、エリアを分散する投資です。例えば東京と大阪のように離れた地域に投資することで災害が起こったときに両方の不動産が同時に被害にあうことを防げます。このようにエリアを分けて不動産を購入し投資を行うことは、さまざまなリスクを軽減するために非常に重要です。

まとめ

日本は、自然災害が非常に多い国です。そのため不動産投資を行う場合は、災害のリスクに対する対策を講じることが必要になります。災害のリスクに備えておけば「自然災害で建物が崩壊し融資返済ができない」という事態を避けることも可能です。そのため災害のリスクを軽減する方法についてよく理解をして実施することが大切になります。

不動産投資を検討している方は、この記事を参考にしていただけると幸いです。

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