不動産価格は、経済や社会の状況に応じて常に変動しています。収益物件の購入を検討している人にとって「不動産価格がどのように推移しているか」は、気になる内容ではないでしょうか。不動産価格は、賃貸経営の収益に影響を与えるため、市場動向を定期的にチェックしておくことが大切です。今回は、不動産価格の推移や収益物件の買い時の見極め方について解説します。
目次
1.不動産価格が賃貸経営に与える影響とは
不動産価格は、賃貸経営の収益性や物件購入タイミングに影響を与えます。賃料が同じ場合、不動産価格が高くなると利回り(収益性)は低下し不動産価格が低くなると利回りは上昇するのが一般的です。また、不動産価格が低くなると物件の購入資金は、少なく済みます。収益物件を購入するなら不動産価格が下落したところで購入するのが理想的です。
不動産価格の推移を把握するには、国や不動産会社などが開示している指標や資料を確認する必要があります。
2.不動産価格の推移を確認する方法
不動産価格の推移を確認したい場合は、以下2つの指標をチェックするといいでしょう。
- 地価公示
- 不動産価格指数
2-1.地価公示とは
国土交通省が地価公示法に基づき、毎年1月1日時点の1平方メートルあたりの地価を判定して毎年3月に公示する価格のことです。一般の土地取引価格の指標として活用されます。全国の土地価格の動きを確認できるため、不動産市場全体や地域ごとの地価の傾向をつかむのに便利です。
2-2.不動産価格指数とは
年間約30万件の取引価格情報をもとに不動産価格の動向を指数化したものです。2010年平均を100として基準化し国土交通省が毎月発表しています。不動産価格指数は、地域・物件種類ごとに不動産価格の推移を把握できるのが特徴です。取引価格情報をもとにマンションと戸建住宅それぞれの指数が算出されているので、地価公示に比べると実勢価格に近いデータといえるでしょう。
地価公示と不動産価格指数は、両方確認することで不動産価格の推移をより詳しく把握できます。
3.全国の土地価格の推移(2022年地価公示より)
2022年地価公示から全国の土地価格の推移を確認していきましょう。直近5年間における全国と3大都市圏(東京、大阪、名古屋)の住宅地の変動率をまとめました。
住宅地 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
全国 | 0.3% | 0.6% | 0.8% | ▲0.4% | 0.5% |
3大都市圏 | 0.7% | 1.0% | 1.1% | ▲0.6% | 0.5% |
(東京圏) | 1.0% | 1.3% | 1.4% | ▲0.5% | 0.6% |
(大阪圏) | 0.1% | 0.3% | 0.4% | ▲0.5% | 0.1% |
(名古屋圏) | 0.8% | 1.2% | 1.1% | ▲1.0% | 1.0% |
2022年度は、全国・三大都市圏ともに0.5%でどちらも2年ぶりに上昇に転じました。三大都市圏では、東京圏(0.6%)、名古屋圏(1.0%)と上昇率が大きく大阪圏は0.1%です。2021年は、全国で5年ぶり三大都市圏では7~9年ぶりの下落となりましたが、全体的に回復傾向が見られます。地価上昇に転じた要因として考えられる主な理由は、以下の3つです。
- 景況感の改善に加えて低金利環境の継続や住宅取得支援策により住宅需要が回復した
- 都市中心部の希少性の高い住宅地、交通利便性に優れた住宅地には依然として高い需要がある
- テレワークの普及など生活スタイルの変化により都心の周辺部の人気が高まっている
2021年に比べると新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和されており、消費者の購買意欲も回復傾向にあると考えられます。また低金利環境が続いているため、不動産を購入しやすい状況にあるのもプラス要因です。新型コロナウイルス感染症の影響で東京では、人口が転出超過となっていますが都心部の希少性の高い住宅地は依然として高い人気があります。
また、テレワークの普及により都心に通勤可能な郊外に移り住む人が増えたことで、地価上昇が都心の周辺部にも波及していると考えられるでしょう。
4.全国の不動産価格の推移(2021年12月不動産価格指数より)
続いて2021年12月不動産価格指数(2022年3月公表)から全国の不動産価格の推移を見ていきましょう。全国および都市圏別の不動産価格指数(住宅)と前月比の変動率は、以下の通りです。
住宅総合 | 住宅地 | 戸建住宅 | マンション(区分所有) | |
全国 | 124.8(0.7%) | 104.9(▲0.4%) | 108.6(▲0.0%) | 173.4(1.2%) |
南関東圏 | 130.2(▲0.6%) | 112.1(▲3.7%) | 108.8(▲1.6%) | 166.7(1.0%) |
名古屋圏 | 114.4(1.4%) | 98.1(4.9%) | 106.5(▲3.2%) | 180.8(5.5%) |
京阪神圏 | 126.9(0.2%) | 97.7(▲9.1%) | 112.8(4.0%) | 173.5(▲1.0%) |
全国平均は、住宅総合が前月比0.7%の124.8となりました。内訳を見ると、マンションは増加し住宅地と戸建住宅は減少しています。3大都市圏で上昇幅が大きいのは、南関東圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)と名古屋圏(岐阜、愛知、三重)でマンションにおいてそれぞれに1.0%と5.5%でしたが、京阪神圏(京都、大阪、兵庫)のマンションは前月比▲1.0%でした。
一方で下落幅が大きかったのは京阪神圏の住宅地で▲9.1%、南関東圏の住宅地▲3.7%、名古屋圏は戸建住宅で▲3.2%となっています。長期間における不動産価格の推移も確認してみましょう。以下は、不動産価格指数(住宅)の推移をグラフで示したものです。
2009年以降、住宅地や戸建住宅は横ばいの状態が続いており不動産価格指数は100前後で推移しています。ただし2020年以降はやや上昇傾向です。一方でマンション(区分所有)は、2012年以降に大きく上昇しており2021年に入ってからも上昇傾向が続いています。
5.【不動産価格の推移】マンション編
続いて2021年11月不動産価格指数の地域別・物件種類別の推移を確認していきましょう。ここでは南関東圏、名古屋圏、京阪神圏のマンション(区分所有)の価格推移について解説します。
5-1.南関東圏の推移
直近1年間の南関東圏のマンション価格推移は以下の通りです。
南関東圏:マンション(区分所有) | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 151.0 | ▲0.1 |
2021年2月 | 153.5 | 1.7 |
2021年3月 | 153.7 | 0.1 |
2021年4月 | 155.6 | 1.2 |
2021年5月 | 158.0 | 1.5 |
2021年6月 | 158.1 | 0.1 |
2021年7月 | 161.2 | 2.0 |
2021年8月 | 163.0 | 1.1 |
2021年9月 | 163.7 | 0.5 |
2021年10月 | 161.9 | ▲1.1 |
2021年11月 | 165.1 | 2.0 |
2021年12月 | 166.7 | 1.0 |
南関東圏のマンション価格は、上昇が続いており1年間で指数は151.2から166.7へ増加しました。前月比の変動率がマイナスの月が少なく価格は安定的に推移しています。
5-2.名古屋圏の推移
直近1年間の名古屋圏のマンション価格推移は以下の通りです。
名古屋圏:マンション(区分所有) | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 160.9 | ▲0.5 |
2021年2月 | 160.9 | ▲0.0 |
2021年3月 | 158.2 | ▲1.7 |
2021年4月 | 160.3 | 1.4 |
2021年5月 | 159.4 | ▲0.6 |
2021年6月 | 167.6 | 5.1 |
2021年7月 | 165.2 | ▲1.4 |
2021年8月 | 166.9 | 1.0 |
2021年9月 | 166.7 | ▲0.1 |
2021年10月 | 172.9 | 3.8 |
2021年11月 | 171.4 | ▲0.9 |
2021年12月 | 180.8 | 5.5 |
名古屋圏のマンション価格は、2021年6月が前月比5.1%、2021年12月が前月比5.5%と大きく上昇したことから1年間で指数は161.7から180.8へ増加しました。しかし前月比でマイナスの月が多く2020年12月からは4ヵ月連続のマイナスとなっています。マンション価格の方向感が定まらず不安定な状況にあるといえるでしょう。
プラスの月とマイナスの月が交互に発生しているため、今後の推移を注視する必要があります。
5-3.京阪神圏の推移
直近1年間の京阪神圏のマンション価格推移は以下の通りです。
京阪神圏:マンション(区分所有) | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 164.0 | ▲0.4 |
2021年2月 | 165.8 | 1.1 |
2021年3月 | 162.7 | ▲1.9 |
2021年4月 | 166.0 | 2.0 |
2021年5月 | 168.9 | 1.8 |
2021年6月 | 171.1 | 1.3 |
2021年7月 | 170.5 | ▲0.4 |
2021年8月 | 171.7 | 0.8 |
2021年9月 | 172.7 | 0.6 |
2021年10月 | 172.2 | ▲0.3 |
2021年11月 | 175.3 | 1.8 |
2021年12月 | 173.5 | ▲1.0 |
京阪神圏のマンション価格は、上昇傾向にあり1年間で指数は164.5から173.5まで増加しました。南関東圏に比べると前月比でマイナスの月は多いものの全体的にプラスの月が多く安定した推移が続いているといえます。
6.【不動産価格の推移】一戸建て編
次に南関東圏、名古屋圏、京阪神圏の戸建住宅の価格推移について解説します。
6-1.南関東圏の推移
直近1年間における、南関東圏の戸建住宅の価格推移は以下の通りです。
南関東圏:戸建住宅 | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 102.5 | ▲0.0 |
2021年2月 | 103.5 | 0.9 |
2021年3月 | 104.0 | 0.5 |
2021年4月 | 103.6 | ▲0.5 |
2021年5月 | 104.5 | 0.9 |
2021年6月 | 106.3 | 1.8 |
2021年7月 | 110.7 | 4.1 |
2021年8月 | 108.3 | ▲2.2 |
2021年9月 | 109.9 | 1.5 |
2021年10月 | 109.7 | ▲0.2 |
2021年11月 | 110.6 | 0.8 |
2021年12月 | 108.8 | ▲1.6 |
南関東圏の戸建住宅価格は、1年で指数が102.6から108.8に増加しました。マンション価格に比べると増加率は低いものの前月比でマイナスの月が少なく安定的に推移しています。緩やかな上昇傾向にあるといえるでしょう。
6-2.名古屋圏の推移
直近1年間における名古屋圏の戸建住宅の価格推移は、以下の通りです。
名古屋圏:戸建住宅 | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 105.5 | 0.4 |
2021年2月 | 104.9 | ▲0.6 |
2021年3月 | 107.7 | 2.7 |
2021年4月 | 107.9 | 0.2 |
2021年5月 | 106.6 | ▲1.2 |
2021年6月 | 106.9 | 0.3 |
2021年7月 | 107.2 | 0.3 |
2021年8月 | 109.8 | 2.5 |
2021年9月 | 107.2 | ▲2.4 |
2021年10月 | 108.9 | 1.5 |
2021年11月 | 110.1 | 1.1 |
2021年12月 | 106.5 | ▲3.2 |
名古屋圏の戸建住宅価格は、1年間で指数が105.2から106.5まで増加しました。2021年12月に大きく落ち込んだため、1年間としては微増となっています。しかし前月比でマイナスの月が少なく緩やかな上昇傾向のため、マイナスの月が多かったマンションに比べると価格推移は安定しているといえます。
6-3.京阪神圏の推移
直近1年間における、京阪神圏の戸建住宅の価格推移は以下の通りです。
京阪神圏:戸建住宅 | ||
年月 | 不動産価格指数(住宅) | 前月比(%) |
2021年1月 | 102.8 | ▲2.4 |
2021年2月 | 106.3 | 3.4 |
2021年3月 | 105.1 | ▲1.1 |
2021年4月 | 104.9 | ▲0.2 |
2021年5月 | 113.7 | 8.4 |
2021年6月 | 108.4 | ▲4.7 |
2021年7月 | 110.7 | 2.2 |
2021年8月 | 112.1 | 1.2 |
2021年9月 | 111.2 | ▲0.8 |
2021年10月 | 110.9 | ▲0.3 |
2021年11月 | 108.4 | ▲2.2 |
2021年12月 | 112.8 | 4.0 |
京阪神圏の戸建住宅価格は、2021年5月に8.4%増加した翌月に▲4.7%となるなど、1年間の間で大きく乱高下しているのが特徴です。結果的に2020年12月の105.4から112.8と大きく増加となっていますが、2021年1月には102.8まで落ち込んでいます。変動率は、マイナスの月が多く2021年9月からは3ヵ月連続のマイナスです。
不安定な推移が続いているため、今後の動向を注視する必要があるでしょう。
7.不動産価格の推移から見る首都圏のマンション価格の動向
続いて首都圏の新築・中古それぞれのマンション価格動向を見ていきましょう。
7-1.新築分譲マンションの動向
株式会社不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向(2022年2月)」によると2022年2月における首都圏の新築マンションの発売戸数は、2,287戸(前年同月比+2.0%)でした。平均価格は、7,418万円(前年同月比16.3%)、1平方メートルあたりの単価は約109万5,000円(前年同月比15.5%)でいずれも大幅上昇となっています。
地域別では、東京23区の平均価格が9,685万円(前年同月比30.3%)、1平方メートルあたりの単価は約148万4,000円(前年同月比26.0%)。その他の地域(東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県)は、平均価格が東京都下と神奈川県でマイナスですが埼玉県と千葉県では前年同月比20%超の大幅上昇となりました。
1平方メートルあたりの単価は、前年同月比でマイナスとなったのが東京都下のみ(▲1.3%)で神奈川県(0.4%)、埼玉県(18.5%)、千葉県(11.9%)はプラスです。首都圏の新築マンション価格は、2021年8月以降下落傾向でしたが2021年12月から上昇に転じており2022年2月には2021年8月の水準まで回復しています。
月単位で見ると、首都圏の新築マンション価格は上昇と下落を繰り返していますが、東京23区については需要の高さが顕著です。またテレワークが普及して働き方が多様化したことで埼玉県や千葉県といった都心の周辺部に位置する新築マンションの人気も高まっています。2021年以降は変動幅が大きい月もありますが、首都圏の新築マンションの需要は依然として高く安定しているといえるでしょう。
7-2.中古マンションの動向
東日本不動産流通機構の「Market Watchサマリーレポート(2022年2月度)」によると首都圏の中古マンションの成約件数は3,146件で前年同期比▲12.3%でした。1平方メートルあたりの単価は62万5,100円(前年同期比8.4%)、価格は4,023万円(前年同期比6.6%)。1平方メートルあたりの単価は2020年5月から22ヵ月連続、価格は2020年6月から21ヵ月連続で前年同期を上回っています。
地域別の成約件数は、横浜市・川崎市が前年同期比▲19.6%、千葉県が▲15.3%、東京都区部▲14.1%と大きく減少しました。一方で1平方メートルあたりの単価は、すべての地域が前年同月比で上昇。埼玉県で13.3%、千葉県で9.3%、東京都区部で9.1%、横浜・川崎で8.9%となりました。2021年は、新型コロナウイルスの影響で需要が減少した反動で上昇率が大きくなっています。
しかし、2022年に入ってからも首都圏の中古マンション市場は堅調です。また新築分譲マンションの人気は根強いものの価格が高い状況が続いているため、簡単には手を出せない人もいるでしょう。割安な価格でマンションを手に入れたい層を中心に中古マンションへのニーズが高まっているといえます。
8.都心の不動産価格は堅調に推移している
ここまで確認してきたように、2022年地価公示では全国の土地価格が上昇に転じています。2021年12月不動産価格指数においても、住宅地や戸建住宅価格は2021年に入ってから上昇傾向です。区分マンションの価格は上昇が続いており、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降も勢いは衰えていません。景況感が改善しており低金利環境が続いているのもプラス要因です。
特に首都圏は、新築・中古ともに需要が旺盛で東京23区の物件を中心に1平方メートルあたりの単価が大きく上昇しています。これらのデータを踏まえると都心の不動産価格、特に区分マンション価格は新築・中古ともに堅調に推移しているといえるでしょう。
9.不動産価格の推移に今後影響を与えそうなもの
2021年8月に東京オリンピックが終了しましたが、今後も不動産市場に影響を与える可能性のあるイベントが予定されています。不動産価格の推移を予測するには、どんなイベントが控えているかを把握して不動産市場への影響を見極めることが大切です。ここでは、不動産価格の推移に今後影響を与えそうなイベントを4つ紹介します。
9-1.東京オリンピックの選手村
東京オリンピックの選手村(東京都中央区晴海)は、大会終了後に改修され「HARUMI FLUG」として大規模マンションが分譲される予定です。ただ、東京オリンピックが1年延期された影響で引き渡し時期が延びてしまい一部の購入者が損害賠償を求める訴訟を起こしています。今のところ不動産価格に大きな影響は出ていませんが、今後の動向を注視する必要があるでしょう。
9-2.新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、2021年の地価公示は全国平均で5年ぶりに下落に転じ不動産価格指数も一時的に下げる場面がありました。しかし、その後の不動産価格は堅調に推移しています。ワクチン接種開始後も感染者数は増加と減少を繰り返していますが、景況感の改善や低金利環境の継続もあって不動産への需要は高いといえるでしょう。
ただし、テレワークが普及するなど働き方が多様化したこともあり、2021年には東京23区の人口が初めて転出が転入を上回る「転出超過」となりました。東京の近隣へ移り住む動きが加速すれば東京都心やその周辺部の価格に影響を与える可能性があります。
9-3.生産緑地の2022年問題
生産緑地とは、1992年に改正された生産緑地法により固定資産税や相続税などの税制優遇を受けられる農地のことです。30年間は農地として土地を維持する必要がありますが、2022年は1992年の生産緑地法改正から30年が経過する年となるため、大量の農地が売却されることが懸念されています。大規模な農地売却により地価が暴落するリスクのことを「生産緑地の2022年問題」といいます。
生産緑地を巡っては、2017年の生産緑地法改正により「特定生産緑地指定制度」が創設されました。生産緑地に指定されている農地について自治体から新たに「特定生産緑地」に指定されると買い取りの申し出ができる時期が10年延期され税制優遇も継続されます。また10年経過前に自治体が所有者の同意を得ることで繰り返し10年の延長が可能となりました。
そのため「生産緑地の2022年問題」による地価暴落の可能性は低いと考えられます。
9-4.2025年の大阪万博
2025年には、大阪の夢洲(ゆめしま)で国際博覧会(万博)の開催が予定されており想定来場者数は約2,820万人、経済波及効果は約2兆円が見込まれています。万博開催で公共交通機関などのインフラ整備や再開発が進めば、大阪の広い地域で不動産価格の上昇が期待できるでしょう。
10.収益物件の買い時はいつ?今は買うべき?
都心の不動産価格は、堅調に推移していることが分かりました。しかしこの状況で収益物件を買うべきなのでしょうか。冒頭でも触れたように賃貸経営では、不動産価格が下がったタイミングで収益物件を購入することが理想的です。ただし不動産価格が将来どのように推移するかを正確に予測するのは専門家でもできません。
不動産価格は、さらに上昇する可能性もあれば下落に転じる恐れもあります。つまり収益物件の買い時は、誰にも分かりません。売却益を目的に不動産を購入するなら「価格が下がるタイミングを待つ」という選択肢もあるでしょう。しかし家賃収入を目的に収益物件を長期保有する場合は、現在の価格推移にかかわらず優良物件が見つかったら今すぐに投資を検討すべきです。
入念に収支シミュレーションを行ったうえで利益が見込める場合は、現在も買い時といえます。
11.まとめ
都心の不動産価格は上昇が続いているため、収益物件を買うべきか判断するのは難しいかもしれません。しかし将来の不動産価格がどうなるかを予測するのは不可能です。不動産価格が下がったところで買おうと思ってもそのタイミングはいつ訪れるか分かりません。物件の売却益ではなく家賃収入を目的に長期保有を検討している場合は、優良物件が見つかったら今すぐに購入を検討しましょう。
12.不動産価格の推移に関するよくある質問
最後に不動産価格の推移に関するよくある質問をまとめておきます。
12-1.Q.全国の土地価格の動きはどうなっていますか?
2022年の地価公示によると住宅地の地価は全国・3大都市圏ともに0.5%でどちらも2年ぶりに上昇に転じました。新型コロナウイルスの感染症の影響が徐々に緩和され景況感の改善を背景に住宅需要が回復傾向にあります。
12-2.Q. 首都圏の不動産価格はどうなっていますか?
2021年12月時点の不動産価格指数によると新築・中古ともに需要が旺盛で東京23区の物件を中心に1平方メートルあたりの単価の上昇が続いています。
12-3.Q. 首都圏マンションの動向はどうなっていますか?
東日本不動産流通機構の「Market Watchサマリーレポート(2022年2月度)」によると2021年以降に埼玉県や千葉県、神奈川県の中古マンション価格が大きく上昇しています。テレワークの普及で都心の周辺部に移り住む人が増えているため、マンション価格の上昇が都心周辺部にも波及している傾向です。
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