【不動産投資初心者必見】効率よく賃貸需要を調べる4つの方法と注意すべきポイントをわかりやすく解説
(画像=AndriiYalanskyi/stock.adobe.com)
八木チエ
八木チエ
株式会社エワルエージェント 代表取締役|宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーなどの資格を持ち、中立的な立場で不動産投資に関連する情報をお届けします。書籍、メディアなどに記事掲載の実績多数。

不動産投資を行う際は、事前に賃貸需要があるエリアの物件や不動産会社が提示した家賃の適正さの調査が重要です。しかし「賃貸需要の調べ方がわからない」という方もいるかもしれません。

そこで本記事では、不動産投資の初心者や効率よく賃貸需要を調べたい人に向けて賃貸需要の調べ方や注意すべきポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 賃貸需要とは?
  2. 賃貸需要の4つの調べ方
  3. 賃貸需要を調べるときに注意すべきポイント
  4. 賃貸需要の調べ方を押さえて、安定した不動産経営を目指そう
  5. 賃貸需要に関するよくある質問

賃貸需要とは?

賃貸需要とは、自分が賃貸物件の購入を検討しているエリアで需要が見込めるかどうかを判断するものです。投資の可否を判断する際に賃貸需要を十分に把握することで安定した賃貸収入を得られる可能性が高くなります。

賃貸需要が高い物件には「利便性が高い」「住みやすい」などの特徴があるため、検討している物件が賃貸需要の高い物件に当てはまるかどうかを、まずは確認することが大切です

まずは賃貸物件の情報をまとめる

最初に以下のような賃貸物件の情報についてまとめます。

・寄り駅から賃貸物件までの距離
・賃貸物件の用途
・築年数
・間取り
・面積
・スーパーやコンビニまでの距離 など

自分が実際に生活することをイメージして情報をピックアップするとより詳細な賃貸需要を調べることが可能です。基本的に立地条件が良い物件は人気のため、賃貸需要は高い傾向にあります。

似た条件の物件をピックアップ

賃貸物件の情報をまとめた後は、似た条件の物件をピックアップします。似た条件の物件を調べるときは、同じエリア内で似た物件を調べるようにしましょう。なぜならエリアが違ってしまうと相場が大きく変わってしまい購入価格などに影響してしまうからです。ピックアップする物件の条件は、主に以下のようなものがあります。

【似た条件の物件を選ぶ際の主なポイント】

・寄り駅からの徒歩距離
・構造
・築年数
・広さ
・間取り
・階数
・部屋の向き
・オートロックなどの防犯システム
・インターネット無料などの付帯設備 など

賃貸需要の4つの調べ方

続いて、具体的に賃貸需要を調べる4つの方法について紹介します。

LIFULL HOME’Sなどの大手不動産ポータルサイトから空室率を確認する

大手不動産ポータルサイトとは、たくさんの賃貸物件情報を取り扱っている「LIFULL HOME‘S」や「SUUMO」などの不動産情報サイトのことです。ポータルサイトでは、エリアごとの空室率も確認することができます。

例えば「LIFULL HOME‘S」のサイトで空室率を検索すると、以下のキャプチャのように全国の空室率データが出てきます。

次により詳しく知りたい都道府県がある場合は、都道府県をクリックするとさらに細かい市区町村の空室率が出ます。例えば東京都をクリックした場合のキャプチャは以下の通りです。

さらに知りたい市区町村がある場合は、クリックすればより詳しい家賃相場などの賃貸情報が出るようになっています。なお1つのポータルサイトだけで確認すると情報が偏る可能性があるため、複数サイトの利用がおすすめです

市区町村の「人口動態統計」から人口の動きを確認する

賃貸需要を知るには、そのエリアの人口の動きについても把握しておくことが必要です。例えば厚生労働省が公表している「人口動態統計」を活用すれば1年を通しての出生数や死亡数、婚姻件数、離婚件数の集計データを確認することができます。人口の動きを確認することで市区町村から転出した人や転入した人の傾向がわかるため、今後の予想に有効活用ができるでしょう。

転出した人が多い市区町村は、人口減少に転じているため、住宅に対する需要も減少、一方で転入が多い市区町村は人口が増えて住宅に対する需要も増えると予測できます。例えば「令和3年の住民基本台帳人口移動報告」を見ると2020年と2021年の2年連続で転入超過になったのは、以下の6都道府県です。

【2020年と2021年の2年連続で転入超過になった都道府県】

・埼玉県
・千葉県
・東京都
・神奈川県
・大阪府
・福岡県

なお人口の推移は、単年度ではなく5年、10年など長いスパンで見ることが重要です。

市区町村の再開発事業計画を確認する

市区町村の再開発事業計画の情報を把握することで今後の人口増加や地価上昇などについて予測ができます。特に再開発で大規模な複合施設などの建設が行われた場合は、街が整備されて住みやすくなり、より多くの人が転入することが見込めるでしょう。転入人口が増えれば住宅に対する需要も高まり、不動産価格や家賃の上昇も期待できます。

例えばSUUMO主催の「住みたい街ランキング2022」で5位にランクインした浦和の駅前は、西口・東口とも敷地が狭い上に大量のバスが発着し、道路には歩道もない状態でした。西口から東口へ移動するために駅の中を通ることができず、回遊性に課題がありました。そこで、さいたま市の前身である浦和市は埼玉県初の再開発事業として、駅前地区を長期間かけて一体的に改造する計画を立てたのです。

浦和駅も高架化され、2022年12月現在は西口の伊勢丹・コルソ、東口のパルコ、駅ビルのアトレの4つの商業施設に地下道で直接行き来できるようになっています。そのような利便性の高さも、ランキングの上昇につながっているのかもしれません。再開発事業によって街の人気や価値が上がった典型的な例といってよいでしょう。

このような再開発事業計画を知った段階でマンションなどの購入に踏み切れば、その後の賃貸需要の伸びや資産価値の向上が期待できます。しかし計画は、あくまでも計画です。そのため必ずしも実現されるわけではない点は理解しておきましょう

不動産会社に確認する

不動産会社に直接聞きに行くことも有効な方法の一つです。特に地元の不動産会社は、地域に密着しているため、一般的に公開されていない情報や実態も把握している可能性があります。そのため非常に効率よく有益な情報を得られることが期待できるでしょう。どうしても遠方で直接訪問することができない場合は、電話で確認することも方法の一つです。

不動産会社は、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営するレインズ(不動産流通標準情報システム)と連携しています。このシステムを利用して、購入したい物件のエリアにおける賃料や件数、建物面積、㎡単価などの賃貸需要の目安になるデータも調べてくれます。平均賃料相場を知ることで、平均より安くすればより賃貸需要が高くなり、高くすれば需要が少なくなるなど、あらかたの目安はつくでしょう。

賃貸需要を調べるときに注意すべきポイント

賃貸需要が高ければ必ず入居希望者が多いとは限りません。なかには、空室率が目立つ物件もあります。賃貸需要を調べるときに注意すべきポイントを押さえておきましょう。

空室率

賃貸需要を調べるときは、まずは空室率に注目しましょう。空室率が高い場合は、例えば「最寄り駅から遠い」「コンビニが近くにない」「路線のアクセスがよくない」などさまざまな原因が考えられます。近隣エリアであっても空室率には高低差があるため、具体的にどのエリアが高いのか調べることが必要です。

株式会社LIFULLが運営する「LIFULL HOME'S」では、賃貸需要ヒートマップというサービスがあり、どのエリアの賃貸需要が高いのかなどを調べることができます。

新築ではできませんが、中古物件を購入したい場合、確実に当該物件の需要を知りたいなら、トラックレコードを不動産会社に聞くのも有効です。トラックレコードとは過去の実績や履歴のことで、金融機関の融資審査時に必要書類として提出を求められることもあります。収支実績や入居率、稼働率などのデータがわかるため、逆算すれば空室率を知ることもできます。

ただし、すべての不動産会社が教えてくれるとは限りません。逆にいえば、きちんと教えてくれる不動産会社なら頼りになる会社と判断することができます。

人口増加率や駅の利用者数

人口の増加率が上がると駅の利用者数も増加傾向となるため、安定した賃貸需要を得られる可能性があります。人口の予測に関してはさまざまなデータが発表されているほか、駅の利用者数もインターネットで調べることができるため、チェックしましょう。

人口によって賃貸需要を見る基準には、人口増加率と人口増加数があります。国勢調査を参考に違いを確認しておきましょう。

人口増加率で見ると、規模が小さくあまり知られていない市町村で伸びているエリアを知ることができます。しかし、人口の規模が小さいため、わずかに人数が増えただけでも極端に大きな増加率になってしまうのが難点です。人口規模が大きい東京や大阪は増加率が低いため、ランキングには入りにくくなります。

一方、増加数で見るとランクインしているのは有名な都市がほとんどで、やはり東京23区の圧倒的な強さが目立ちます。こちらは人口が増えている実数なので、賃貸需要を見るならこちらのほうがわかりやすいかもしれません。ただし、人数だけなのでどの程度伸びているのかが判断しにくいという難点があります。やはり両方のデータを確認するのが理想で、2つのデータでともにランクインしている千葉県流山市の物件は、今後資産価値が高まる可能性を秘めています

駅の利用者数(乗降客数)を調べるには、Webサイト「統計情報リサーチ」に掲載されている「日本の駅別乗降客数ランキング」が便利です。鉄道会社別に乗降客数ランキングを調べられるので、すでにどの鉄道沿線の物件を買うか決まっている場合は参考になります。

ハザードマップ

近年は、大雨や台風、竜巻などの風水害が多発しているため、物件の所在地が災害危険エリアに該当していないか確認することも大切です。

災害の具体例としては、2019年10月に発生した台風19号によって、川崎市武蔵小杉のタワーマンションが台風による浸水で全棟停電となったことが挙げられます。電気・水道・エレベーターなどのインフラが使えないという事態になり、復旧に1ヵ月を要したといいます。武蔵小杉はハザードマップで多摩川が氾濫した際の浸水被害が想定されていましたので、ハザードマップを確認することの大切さがわかります。

各地方自治体のホームページに掲載されているハザードマップを活用すれば災害が発生した際にどこに避難するのか、浸水する可能性があるエリアはどこなのかなどを知ることができます。

例えば以下の渋谷区の洪水ハザードマップでは、浸水予想区域や避難方法などが記載されています。前述した武蔵小杉のタワーマンションのように浸水すると復旧に時間がかかるので、リスクが高いエリアは避けるなどの基準を作っておくとよいでしょう。

物件周辺環境

所有している物件が入居者ターゲットに合ったエリアかどうかを確認することも大切です。一人暮らし向けの物件の場合、近くにコンビニがあるかなど利便性を重視しましょう。また女性の一人暮らし向け物件の場合は、オートロックがあるのか、物件は2階以上なのかなど防犯について重視します。一方、ファミリー向けの場合は、近くに公園や病院があるなど子育て環境が重視される傾向です。

さらに、空室を避けるため入居者が敬遠するような施設が周辺にないかどうかの確認も重要です。特に騒音や悪臭、粉塵などを排出する工場などがあると、入居希望者が内覧する際に不安を覚えるかもしれません。

また、近隣にある競合の募集条件を調べることも大切です。自分が購入したい物件と似たような間取りの競合物件があれば、家賃や礼金、共益費などが競合より高くなっていないか確認しましょう。ただし、競合が中古で自物件が新築の場合は家賃が高いのは当然なので、同じ水準にする必要はありません。

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賃貸需要の調べ方を押さえて、安定した不動産経営を目指そう

賃貸需要の調べ方や注意すべきポイントについて解説してきました。不動産投資で安定した家賃収入を得るためには、賃貸需要の高い物件を選択することが欠かせません。区分所有の場合は空室が出ると家賃収入が途絶えて、ローンの返済に支障が出ます。賃貸需要が高い物件は空室リスクが低くなるため、必ず確認するようにしましょう。

また、賃貸需要を調べる際は不動産会社に協力してもらうことがあります。信頼できる不動産会社を見つけて、日頃から相談しやすい関係を築いておくことも重要です。空室率が低く安定した不動産経営を目指すなら、今回紹介した賃貸需要の4つの調べ方と注意すべきポイントをしっかり押さえておくようにしましょう。

賃貸需要に関するよくある質問

Q.賃貸物件に掲載されている主な情報とは?

店頭広告やインターネットの物件情報には、最寄り駅から賃貸物件までの距離や築年数、階数、間取りなどが掲載されています。サイトによっては、外観写真や室内写真を掲載している場合もあります。物件概要には家賃や共益費、礼金、敷金、駐車場の有無と料金、契約期間、初期費用、諸費用など詳細が記載されています。また、サイトによっては周辺情報が掲載されているものもあります。

Q.賃貸需要を調べる具体的な方法は?

たくさんの賃貸物件情報を取り扱っている大手不動産ポータルサイトから空室率を確認したり、市区町村の「人口動態統計」から人口の動きを調べたりする方法などがあります。

また、市区町村の再開発事業計画を確認することで人口増加や地価上昇を予測することもできます。不動産会社の店頭に出向いて、直接聞いてみるのもよいでしょう。災害を心配する人も多いので、ハザードマップを調べることも欠かせません。

Q.賃貸需要の調査時に注意するポイントは?

購入を検討している物件の空室率や物件があるエリアの人口増加率、最寄り駅の乗降客数、さらにハザードマップで浸水する可能性があるかどうかを確認する必要があります。

周辺環境では、単身者向け物件を購入するならコンビニやコインランドリー、ファミリー向け物件を購入するならスーパーや公園、学校、病院などがあるかチェックしましょう。似たような間取りの競合物件があれば、家賃や礼金、共益費などが競合より高くなっていないか確認してください。ただし、競合が中古で自物件が新築の場合は家賃が高いのは当然なので、同じ水準にする必要はありません。

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