

不動産投資に携わる人なら、サブリース契約という言葉を聞いたことがあるでしょう。サブリースを利用するにあたっては、メリット・デメリットを把握しておかなければ、大切な資産を減らすことになりかねません。この記事では、不動産投資におけるサブリース契約について詳しく解説していきます。
1.サブリースの基本と仕組み

サブリースのメリット・デメリットや注意点などを解説する前に、まずサブリースについて概要を解説します。
1-1.サブリース契約とは
賃貸経営・不動産投資におけるサブリース契約は、「転貸借」や「又貸し」とも呼ばれます。一般的な賃貸経営においては、マンション・アパートオーナーと入居者が、管理会社を介して賃貸借契約を締結するケースが多くなっています。
それに対してサブリース契約では、サブリース会社がオーナーから物件を一括して借り上げ、入居者に転貸借を行うことによって投資物件を運営します。したがって、サブリース契約ではオーナーと入居者には直接の契約関係がないのが一般的です。
通常であれば物件オーナーと入居者が直接賃貸契約を交わしますが、そこにサブリース会社が介在し、オーナーと入居者それぞれがサブリース会社と契約を結ぶのがサブリース契約です。
1-2.サブリースの種類
一口にサブリースといっても、契約の形態によって2種類あります。
①賃料固定型
サブリース会社が物件オーナーに支払う賃料が固定されている契約形態です。オーナーにとっては契約時に賃料収入が確定するため「収支計画を立てやすい」「リスクヘッジになる」といったメリットがあります。
②実績賃料連動型
実績賃料連動型は、契約時に賃料を固定することなく不動産市場の相場に応じて賃料が変動する契約形態です。賃料相場が上昇すればサブリース会社から支払われる賃料も上昇しますが、相場が下落すれば賃料収入も減ってしまいます。
1-3.サブリース費用の相場
サブリース契約はサブリース会社が家賃保証という形でリスクテイクをするため、費用が発生します。サブリース会社がオーナーに支払う金額の相場は、満室時の想定賃料の85~90%程度です。つまり、満室時の想定賃料の10~15%がサブリース費用の相場ということになります。
1-4.どんな会社がサブリースを提供しているのか
サブリースを提供しているのは、主に建設会社やハウスメーカー、大手不動産会社、賃貸管理会社などの系列会社です。本業は別業態ながら、サブリース部門を子会社化している会社も少なくありません。
1-5.サブリースに近い各種サービス
サブリースは家賃保証だけでなく、賃貸物件管理や家賃の回収、空室の解消に向けた集客などさまざまなサービスがパッケージ化されたものです。サブリース契約ではなく、以下のような部分的なサービスを選ぶこともできます。
①物件管理
物件そのものの維持管理や入居者募集、賃料回収などを一括して委託できるサービスです。サブリースを利用していない物件オーナーでも、その多くが利用しています。
②滞納保証
入居者が賃料滞納した時に、その賃料を保証するサービスです。
これはオーナー向けのサービスの側面はもちろんですが、おもに入居者が保証人の代わりに利用するサービスとして位置づけられています。
③空室保証
不動産投資における最大のリスク、空室に対する保険のようなサービスです。一定以上の空室が発生した場合、契約に基づいて不足分の支払いを受けることができます。
2.サブリース契約のメリット6つ

サブリース契約の主なメリットは、以下の6つです。
2-1.賃貸経営の手間が省ける
サブリースは物件を一括で借り上げるため、オーナーの契約相手はサブリース会社のみです。サブリース会社がオーナーに代わって入居者対応や物件管理、家賃出納などの業務を行ってくれます。多くの入居者が契約相手になる場合と比べると、はるかにオペレーションが楽になります。
所有物件数が多い場合や不動産投資が副業である場合など、特定の物件経営に多くの時間を割くことができないオーナーにとって、手間が省け業務効率が上がることは大きなメリットです。
2-2.投資物件運営のノウハウがなくても賃貸経営ができる
不動産投資や物件管理に関する専門知識やノウハウがなくても、プロの知見に頼れるため、安心して不動産投資を始めることができます。
2-3.空室が発生しても一定割合の賃料が保証されている
サブリース契約により、賃料の一定割合(85~90%程度)が保証されるため、空室が増えた場合でも収入が大幅に減ることがないことがメリットです。
長期的な賃料収入の見通しが立ちやすいため、安定した不動産投資を行うことができます。
2-4.入居者が退去した後の原状回復はサブリース会社の責任で行われる
入居者が退去した後の原状回復に関しては、オーナーと入居者の間に介在するサブリース会社が責任を持つため、退去時にオーナーと入居者との間でトラブルが発生する心配がありません。
2-5.トラブルに強い
賃貸経営では、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。サブリース契約の場合はオーナーと入居者とのトラブルだけでなく、入居者同士のトラブルについてもサブリース会社が責任を負うため、オーナーは関与する必要がありません。
問題が深刻化して訴訟に発展した場合でも、入居者の契約相手はサブリース会社になるため対応はサブリース会社が一括して行います。
2-6.会計処理をシンプルにできる
一般的な賃貸経営では、入居者によって賃料が異なる場合があります。また入退去時に発生する費用の清算・計上など、税務を含めた会計処理にかかわる事務が煩雑になりがちです。サブリース契約であれば契約相手が1社だけなので、会計処理が非常にシンプルになります。
3.サブリース契約のデメリット3つ

サブリース契約を検討している人は、デメリットについてもしっかり押さえておきましょう。
3-1.実質的な家賃収入は減ってしまう
サブリース会社に支払う費用がある分、実質的な賃料収入は減ってしまいます。例えば、満室の場合毎月100万円の賃料収入が得られる物件でも、サブリース契約だと収入は85万~90万円程度になります。
ただしこれについては、空室リスクをヘッジできるための保険料のようなものと考えるべきでしょう。
3-2.サブリース会社の倒産・経営破綻リスク
サブリース会社は民間企業なので、経営不振などによる倒産や経営破綻のリスクがあります。管理を委託しているだけであれば、管理会社が倒産してもオーナーと入居者の契約が直接的な影響を受けることはありませんが、サブリースの場合は介在しているサブリース会社が倒産してしまうと、契約相手であるオーナーと入居者の両方が影響を受けます。
一般的に、サブリース会社が倒産した場合はオーナーと入居者の直接契約に引き継がれるのですが、問題はサブリース会社が預かっていた敷金(保証金)や賃料などの現金です。企業の倒産時にこれらが保全される可能性は高くないため、本来であればオーナーに渡されるはずだった現金を回収できないおそれがあります。
3-3.問題のある人が入居してしまうリスク
オーナーと入居者の契約であれば、入居者としてふさわしくない人とは賃貸契約を結ばないようにすることができます。しかしサブリースの場合、サブリース会社が問題ないと判断すれば契約するため、場合によっては問題のある人が入居してしまうリスクもあります。
4.オーナーが知っておくべきサブリースの注意点6つ

安定的な家賃収入が見込め、オーナーはほとんど手間なく投資物件を運営することができるサブリース契約は、非常にメリットが大きいと思われるかもしれません。しかし、サブリースにはいくつかの注意点があります。ここでは、注意点を5つの項目に分けて解説します。
4-1.定期的に保証額の見直しがある
家賃保証に関しては、物件の周辺状況や社会情勢の変化などにより変更される可能性があります。最初は85%や90%といった保証が受けられていても、数年後の見直しによって大幅に減額されることもあります。これについては過去に裁判でも争われており、「減額は有効」とする最高裁判所の判例があります。つまり、保証額が減額されたらオーナーはそれを受け入れるしかないのです。
4-2.修繕を含めて保証範囲を事前確認しよう
「修繕費用に関してはオーナー負担」など、完全に任せっきりにはできないような契約もあるため、事前に契約内容をきちんと把握しておきましょう。
4-3.保証家賃は必ず事前にポータルサイトなどで適正かどうか確認しよう
サブリース会社の家賃保証額が物件周辺の相場に照らして適切かどうかは、必ず確認しておきましょう。
4-4.入居時の敷金、礼金、更新時の手数料などの取り決めも事前に確認しよう
入居者が支払う敷金、礼金などの諸費用をオーナーが受け取ることができるかどうかも確認する必要があります。
4-5.原状回復の費用負担について事前に確認しよう
入居者が退去する際に必要となる「原状回復にかかる費用を誰が負担するのか」については、しっかり確認しておきましょう。
4-6.サブリースを使うかどうかの判断材料
①保証される賃料が適正である(納得できる)
②サブリース会社の経営が安定している
③原状回復や敷金(保証金)などの取り扱いに不利がない
④家賃保証の免責期間がない、もしくは短い
このような場合は、サブリースの利用を前向きに考えてよいと考えられます。
5.まとめ
不動産投資や賃貸経営の経験がないオーナーにとっては、手間なく投資物件を運営することができ、ある程度の安定的な家賃収入が見込めるサブリース契約は魅力的といえるでしょう。利用に際してはメリット・デメリットを踏まえつつ、オーナーにとって不利な条件で契約を結ぶことがないよう、細心の注意を払うことが重要です。
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