不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
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不動産所得を節税するには、さまざまな必要経費を計上することが必要です。しかし支払った費用の中には経費になるものとならないものがありうまく利用すれば節税につながる方法もあります。本稿では、不動産所得の節税に欠かせない必要経費に関する3つの知識について紹介します。

目次

  1. 1.「必要経費」の概要と不動産所得にかかる税金
    1. 1-1.必要経費とは
    2. 1-2.必要経費になる税金
    3. 1-3.必要経費にならない税金
  2. 2.不動産所得の必要経費にできる13の費用とできない2つの費用
    1. 2-1.必要経費にできる13の費用
    2. 2-2.必要経費にできない3つの費用
  3. 3.必要経費計上による不動産所得の節税
    1. 3-1.節税の基本的な考え方
    2. 3-2.不動産所得における具体的な4つの節税例
    3. 3-3.節税対策時の注意点
  4. 4.まとめ

1.「必要経費」の概要と不動産所得にかかる税金

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不動産所得を節税するためには、「必要経費」とは何かをきちんと把握することが必要です。ここでは必要経費の概要と、不動産の保有・売却で発生する必要経費について解説します。

1-1.必要経費とは

必要経費とは、所得税法上で収入を得るために必要な経費のことです。10種類ある所得の種類のうち事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得を計算する際に計上します。
個人所得の場合は家事のために消費した分は除外し、事業に要した分のみを案分して計上しなければなりません。また必要経費は単年で処理するものと、減価償却費のように耐用年数に合わせ複数年で処理するものがあります。

国税庁が示した「必要経費に算入できる金額」は次の2点です。
・総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
・その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

1-2.必要経費になる税金

(1)固定資産税
毎年1月1日現在の土地・建物所有者に対し市区町村が課税する地方税です。課税額は固定資産税評価額を標準として1.4%を乗じることで計算され、支払いは年一括または年4回分納から選択できます。

(2)都市計画税
都市計画区域内にある土地・建物所有者が固定資産税と一括して納税する税金で最高限度0.3%の範囲内で課税されます。

なお、中古住宅で年の途中で所有者が変わった場合は、固定資産税・都市計画税を売り主と買い主が所有期間により按分して負担するのが一般的です。

1-3.必要経費にならない税金

(1)所得税
不動産賃貸で利益が出た場合は、「不動産所得」として給料など他の所得と合算して総合課税されます。家賃収入から経費を差し引いたものが所得です。そのため経費のほうが多ければ赤字となります。副業として行っている場合は、給与所得から赤字分を差し引く損益通算が可能です。

(2)住民税
住民税は確定申告の結果によって「所得割額」と「均等割額」を合算したものが納税額となります。所得割額の税率は、原則として市区町村民税が6%、都道府県民税が4%の合計10%です。均等割り額は2014~2023年度まで市区町村民税が3,500円、都道府県民税が1,500円の合計5,000円ですが、そのうち各500円は復興財源確保のために期間限定で加算されるものです。

2.不動産所得の必要経費にできる13の費用とできない2つの費用

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必要経費にできる費用とできない費用を具体的にみてみましょう。

2-1.必要経費にできる13の費用

(1)租税公課
いわゆる税金のことで毎年かかる固定資産税、都市計画税と賃貸物件を購入したときにかかる登録免許税、不動産取得税、賃貸の収益にかかる事業税などがあります。税金といっても所得税や住民税などは租税公課になりません。

(2)損害保険料
不動産投資をした場合、火災保険は必須です。またオーナーによっては地震保険に加入することもあるでしょう。これら保険料は必要経費となります。

(3)減価償却費
不動産(建物・設備など)は、年々老朽化します。その老朽化を数値にし必要経費としたのが「減価償却費」です。減価償却費は、建物の構造や素材などにより税法で決められた耐用年数で計算することとなります。

(4)修繕費
不動産は、時間の経過や使用の度合いに応じて老朽化します。部屋のクリーニングや壁紙の貼り直し、給湯器やエアコンの交換といった修繕費は必要経費に計上可能です。また大規模修繕に備えて支払う修繕積立金も修繕費として必要経費になります。ただし修繕費として認められるものはあくまでも「原状回復程度に収まるもの」のみです。その修繕により価値が向上した場合には、必要経費ではなく資産として計上する必要があります。(減価償却費の対象)

(5)借入金利息
賃貸用物件の購入のために銀行から融資を受けた場合、月々のローン返済には元本と金利を払うことになります。元本は必要経費になりませんが金利は「支払利息」として経費になります。

(6)管理費
賃貸物件の管理会社に支払う管理費・修繕積立金や不動産管理会社へ支払う管理費などは経費へ参入可能です。

(7)広告宣伝費
入居者募集で不動産管理会社などに支払った費用が広告宣伝費に当たります。

(8)交通費
物件の視察や不動産セミナーへ参加するための交通費なども経費として計上できます。不動産業に関係ない交通費や出張費は経費となりませんので注意しましょう。

(9)通信費
不動産事業に関する電話、インターネット、メールなどの通信費も経費になりますが、自宅で使用している場合は、個人使用分と按分して計上する必要があります。

(10)新聞図書費
不動産業に関する専門新聞や雑誌、書籍を購入した際も経費に計上できます。

(11)接待交際費
不動産管理会社や税理士などの関係者と打ち合わせをする際の喫茶代、飲食代などです。不動産業に関係ないものは接待交際費として国税庁から認定されない可能性があるため注意しましょう。

(12)消耗品費
不動産事業でよく使われるプリンター、デジタルカメラなども消耗品費として計上できます。

(13)税理士に依頼した場合にかかる費用
不動産オーナーの中には、登記手続きを司法書士に依頼したり確定申告業務や帳簿付けなどを税理士に依頼したりする人もいるでしょう。これら専門家に対する報酬は必要経費になります。

2-2.必要経費にできない3つの費用

不動産所得の計算においては「必要経費となるもの」だけではなく「必要経費とならないもの」もしっかり押さえておく必要があります。必要経費とならないものを経費計上すると税務署から指摘を受け経費として認定されず修正申告が必要になる場合があるからです。

(1)所得税・住民税
不動産所得を申告した結果発生した所得税と住民税は必要経費になりません。

(2)個人的な支出
不動産の視察のための昼食代などは経費になりません。また必要経費であると認められているものであっても、その支出が過度であるとみられた場合は、税務署から指摘されることがあります。指摘されてからあわてないためにも、「支出した内容がしっかりと事業に関連している」という客観的な根拠を明示できるようにしておきましょう。

(3)家族への給料
原則として不動産賃貸業に従事している家族に対する給料は経費計上できません。
ただし事業的規模の条件を満たした場合、その給料の全部あるいは一部を必要経費に算入することができます。事業的規模として認められるには、一戸建ての場合はおおむね5棟、アパート・マンションの場合はおおむね10室以上の「5棟10室基準」を満たすことが必要です。

3.必要経費計上による不動産所得の節税

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必要経費を計上することによって不動産所得を節税する方法について見ていきましょう。

3-1.節税の基本的な考え方

不動産賃貸経営において利益が出た際に、さまざまな必要経費を計上して不動産所得を少なくします。例えば新築マンションで賃貸を始めた場合であれば、当初は返済金の支払利息や減価償却費も多く計上(設備部分の定率法の場合など)できるため、赤字になることもあるでしょう。しかし年を追うごとに経費が少なくなり(税務上の)黒字が増えるのが一般的です。

不動産投資は長期的に安定した収益を得ることが目的ですので、節税を目的に経営するのは本末転倒といえます。黒字が出る順調な経営を目指したうえで適切な節税を行いましょう。

3-2.不動産所得における具体的な4つの節税例

節税の基本的な考え方を踏まえて具体的に節税になる例をみてみます。

(例1)
不動産賃貸で収入よりも経費のほうが多かった場合は、確定申告で総所得から「損益通算」により赤字分が差し引かれます。会社員の場合は、給与から所得税が天引きされているため、総合課税により赤字分を差し引くことで所得税・住民税を節税できます。

(例2)
減価償却費は必要経費の中でも大きな節税効果があります。建物や設備の法定耐用年数が終わるまで毎年経費として計上可能です。現金の支出を伴わないため、お金を使わずに節税できる点がメリットといえます。経費として損益計算書に記載した金額が手元に残るため、「自己金融機能」と呼ばれています。

(例3)
先述した事業用規模にすることで青色申告を利用すれば65万円の基礎控除を受けることができます(事業用規模以外は10万円)。他にも家族に専従者給与を払えるなどの特典があり可能であれば利用したほうがよいでしょう。
ただし、2020年度から青色申告は条件を満たさないと65万円満額の基礎控除は使えないため、注意が必要です。
参考:「令和2年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります‼️

(例4)
「小規模企業共済」に加入すると最高月7万円までの掛け金を所得から控除できます。また「個人年金」に加入すると年間保険料によって異なりますが所得税で上限4万円、住民税で上限2万8,000円までそれぞれに全額所得から控除可能です。

3-3.節税対策時の注意点

節税対策をするうえで注意しなければいけないのは、必要経費として計上できるものとできないものをしっかり把握することです。もし経費にできないものを計上すると確定申告の際に税務署から否認される可能性があります。また減価償却費の計上方法においては建物や設備によって法定耐用年数が決まっているため、品目ごとの耐用年数を間違わずに計上することが大事です。

4.まとめ

・収入が不動産所得のみで赤字であれば所得税は発生しない。
・給与所得がある場合は不動産所得の赤字分を損益通算で差し引くことができる。
・不動産投資は長く安定した収入を得るために行うものなので、節税のために赤字にすることを目的にするのは本末転倒。健全経営のうえで節税を考える。

節税するためには、減価償却費をはじめ必要経費にできるものはきちんと計上しましょう。その場合、経費にできないものとの区別を確認することが大事です。以上の点に注意しながら節税にも取り組み、早期に黒字経営できる状態を目指しましょう。

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