日本の資産家は世界各地のタックスヘイヴンで大規模節税できるか
(画像=joserpizarro/Shutterstock.com)

日本語で「租税回避地」と訳されているタックスヘイヴンには、「お金持ちが税金から逃れるために利用している国、地域」というイメージを持っている人が多いと思います。「お金持ちだけが使えるスキーム」という不公平感を含んだニュアンスであり、タックスヘイヴンを活用しているとなると悪いことをしているイメージを持たれがちです。

しかし、資産を持っている人たちにとってのタックスヘイヴンは、それとはまったく異なります。いつも悩みの種になっている高い税金を何とかしたいとお考えの人に、「タックスヘイヴンを使えば大幅に節税できる」と耳打ちしたら、どうするでしょうか。

日本の資産家が世界各地にあるタックスヘイヴンを利用して大規模な節税ができるかどうか、その現実味を探ってみたいと思います。

そもそもタックスヘイヴンとは?

タックスヘイヴンとは、租税回避地もしくは低課税地と訳されるように、税金がゼロもしくは限りなくゼロに近い国や地域のことです。バージン諸島やケイマン諸島などがよく知られていますが、世界にはこれ以外にもたくさんのタックスヘイヴンがあります。

例えば、世界的な大企業が本社だけをタックスヘイヴンに置き(もちろん登記上の本社で実際の本社機能は別の場所にあります)、限りなく低い税金を支払って節税するというスキームがあります。その他にも、相続税のない国に資産を移転し、そこで次の代の人に資産を承継すれば相続税を支払うことなく相続を完了できるというスキームもあります。

本来であれば、企業や資産家が実際に拠点を置いている国で納めるべき税金を徴収できなくなるため、タックスヘイヴンの存在は多くの国で問題視されています。

世界の資産家がこぞってタックスヘイヴンを利用している

資産家にとって税金は多額になりがちです。そこでタックスヘイヴンを利用した節税スキームが人気を集めており、すでに世界中の資産家がタックスヘイヴンを利用しています。

よくあるのは、タックスヘイヴンの現地に資産管理会社を設立し、そこに資産を保有させて利益を上げるというスキームです。これなら本国の所得税や法人税と無縁でいられるため、多くの資産を手元に残すことができます。

日本人も例外ではありません。2016年にパナマの法律事務所がまとめたタックスヘイヴン利用者のリスト(通称:パナマ文書)が流出しましたが、そこには世界の名だたる富豪の名前がありました。その中には多くの日本人企業経営者や富豪たちの名前もあったことから、日本人資産家も世界の例にもれずタックスヘイヴンを利用していることが明らかになったのです。

不動産を所有する日本人資産家はタックスヘイヴンで節税できるか

資産家にとっては、所得にかかる税金が限りなくゼロに近く、さらに相続税や贈与税がないというのは、夢のような話でしょう。この「夢のような節税」は、本当に実現できるのでしょうか。

世界的にタックスヘイヴン規制の動きが進んでおり、日本にもタックスヘイヴン対策税制があります。正式には「外国子会社合算税制」といい、タックスヘイヴンに資産管理会社を設立してそこで利益を発生させたとしても、最高で56%の税率が適用されます。また、海外資産による投資利益だと税率が20.315%で日本国内と変わらないため、タックスヘイヴンを使った節税を封じるための制度整備が進んでいると見ていいでしょう。

もう一つの問題として、日本人資産家の多くが資産を不動産で保有していることがあります。不動産はその名の通り動かすことができないため、タックスヘイヴンへ移転することができません。よって、不動産に係る税金はすべて日本国内で発生することになるため、タックスヘイヴンを使った節税はそもそも難しいでしょう。

こうした環境の中で多くの資産家が利用しているとされるスキームが、タックスヘイヴンで運用されているファンドへの出資です。税務当局が海外資産へ課税するには、海外資産の状況を把握する必要があります。そのため、5,000万円以上の海外資産を保有している人は国外財産調書の提出が義務付けられているわけですが、タックスヘイヴンのファンドは多くが匿名ファンドなので、報告することなく資産を移転している人が多いと言われています。

これはもちろん法に抵触する行為ですが、タックスヘイヴンの匿名性を利用しているため実態がなかなか明らかになりません。今後も税務当局と資産家のいたちごっこが続きそうです。

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