ワクチン開発により、新型コロナ感染の出口が少しずつ見えてきました。コロナ後を意識して、海外不動産に目を向けはじめている個人投資家もいるのではないでしょうか。この記事の前半では、不動産投資の各国共通のメリット・デメリットを解説。後半では、国別の不動産投資の魅力やリスクなどの傾向を紹介します。
目次
海外不動産投資のメリット
高い利回り
海外不動産は、インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売買差益)のハイリターンによって高い実質利回りが期待できます。高利回りを狙うのであれば、その国や都市の経済成長率(GDPなど)と人口増加に着目するのがよいでしょう。これらが上向きであるほど賃貸ニーズが高まり、それに伴って投資物件の価格も上昇しやすいからです。
グローバルな多様化(分散投資)
不動産ポートフォリオを多様化することによって、特定の不動産市場に特有の市場リスクを緩和することができます。これは非常に重要です。私たちはすべての資金を一つの市場に投入すべきではありません。なぜなら、経済的条件が逆行した場合に負担するリスクが非常に高く、投入した資金を簡単に失うことになってしまうからです。国際不動産市場は、それぞれ異なる方向または反対方向に移動します。さらに、海外の新興市場は、成長スピードが速く、大きな財産形成をすることも可能になります。
新興市場の成長の機会
海外不動産、特にベトナム、フィリピン、タイなどの新興市場に投資すると、「インカムゲイン」(=賃料による収入)と「キャピタルゲイン」(=資産価値の上昇による収入)の両方の成長の機会を見込むことができます。これらの国々では、人口は絶えず増加しており、経済成長も継続的で、投資家にとってより収益性の高い市場と言えるでしょう。
通貨の多様化
通貨についても、ポートフォリオと同じように、一国の通貨だけを保有するのは危険です。なぜなら、投資がその特定の通貨のパフォーマンスのみに依存するからです。その通貨の価値が下落した場合、利益または利回りが減少します。したがって、通貨のエクスポージャーを多様化することで、リスク分散をするのが良いでしょう。
より低いコスト
新興国、例えば、マレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジアの不動産価格は先進国と比べとても低い水準となっています。日本と比べると約3分の1でシンガポールと比べ約6分の1といった物件もあります。また、人口増加も長期的に続くことから、安定的な住宅需要の拡大が見込まれるとして、新興国は海外の不動産投資家から非常に人気となっています。
海外不動産投資のデメリット
遠隔管理
海外で不動産を購入する場合、効果的に遠隔管理する方法を見つける必要があります。投資不動産の価値を維持するために資産の定期的なメンテナンスを行うことが大切になってきます。そのためには、信頼のおける不動産管理者を雇うことも有効かもしれません。
為替変動リスク
これは、海外不動産への投資の最大の欠点の1つです。日本円と現地通貨との為替レートの変動は避けられず、一般的には予測ができません。現地通貨の価値が下がった場合、利益を日本円に換算した時に、利益が元より少なくなります。
(例)初期為替レート:1フィリピンペソ=2円
10万フィリピンペソの利益で、最初のリターンは日本円で20万円です。しかし、為替レートが変動し1フィリピンペソ=1.5円になると、たとえ同じ10万ペソの利益でも、日本円でのリターンは15万円と減少してしまいます。
外国市場の理解が必要
新興市場を活用するためには、投資家が外国の不動産法、税制、所有制限その他の法規制を十分に理解することが重要です。法制度が変わったり、グレーな部分があったりする場合もあります。こういった情報を入手するためには、現地の事情に精通した不動産弁護士または代理店を通すことをお勧めします。これは、不必要な支払いや詐欺の被害を防ぐのにも役立ちます。
安定性の不足
新興国においては、政治情勢が不安定なところもあります。暴動、テロリズム、デモなどの発生リスクがありますので、考慮しなければいけない点です。
送金制限
外国の中には、不動産投資から得られた利益の海外送金を制限するところがありますので、注意が必要です。
税制改正により節税効果が弱くなる
2020年度(令和2年度)税制改正では、海外中古不動産の減価償却を利用する節税スキームが封じられることになりました。これまで海外の中古不動産は、国内と比べて住宅価格における建物割合が高く、そのぶん短期間で多くの減価償却費を計上できました。この減価償却費を利用して不動産所得の赤字を増やし、給与所得などと損益通算(=所得税を圧縮)をするのが海外不動産による節税スキームでした。税制改正によって今後、この手段が使えなくなります。
世界各国の不動産投資のメリット・デメリット
アメリカ
アメリカの不動産投資のメリットは、超大国だからこその安定感です。もちろん、不景気や経済危機もありますが、新興国と比べると絶対的な安定感があります。それだけに不動産投資でも安定経営がしやすい環境といえます。過去40年のデータを振り返ってみても、住宅価格は年平均4%増加、賃貸物件の空室率は5〜8%前後で安定推移しています。
デメリットは、近年アメリカで急増している自然災害リスクです。これは世界各国の共通リスクですが、とくにアメリカでは大型ハリケーンの襲来が毎年のように発生しているため要注意です。過去のデータを調べて、大型ハリケーンの少ないエリアを選ぶなどの工夫が必要です。
イギリス
イギリスの不動産投資のメリットは、世界的に見ても透明性の高い不動産市場です。外国人でも安心して不動産投資ができるビジネス環境といえるでしょう。不動産市場が安定的に拡大しているのも安心材料で、前年比をベースにした「英国国家統計局の住宅価格指数」は2016年〜2020年10月ですべてプラスとなっています。
デメリットは、新興国の投資物件のように短期間の売買価格の上昇がないことです。あくまでも、長期投資によるローリスク・ローリターンが基本です。
タイ
タイの不動産投資のメリットは、インカムゲインとキャピタルゲインの両方が期待できる市場環境です。それを支えるのは製造業の急速な発展で生まれた中間層や世界中から集まる駐在員などです。とくに世界有数の経済圏であるバンコク、国内最大級の工業地帯のシラチャの投資物件はニーズが高まっています。
デメリットは、新型コロナ感染以降、バンコクを中心に激化する反体制デモです。これが収束しないと、バンコクへの新規の不動産投資は難しい面もあります。
マレーシア
マレーシアの不動産投資のメリットとしては、長期的な経済成長率による有利な市場環境があります。1990年以降、平均成長率5%超という高い経済成長率をキープしてきました。それと共に、首都クアラルンプールなどを中心に不動産価格も好調でした。また、マレーシアは長く首相の地位にあったマハティール首相が親日家であったことから、日本人がビジネスをしやすい環境です。
デメリットは、政情不安です。比較的、政治・経済が安定していたマレーシアですが、新型コロナ拡大によって経済が悪化し、与野党の政争が激化しています。この動向を見極めた上での投資が安全かもしれません。
フィリピン
フィリピンの不動産投資のメリットは、 加熱するアジア不動産のなかでも割安感があることです。そのぶん、高利回りが期待できるのも魅力です。たとえば、日本のサラリーマン投資家が首都マニラの高級コンドミニアムなどを購入するのも可能です。フィリピンでは高額物件の家賃を前払いする慣例もあるため、家賃滞納のリスクが低いのもメリットでしょう。
デメリットは、他の東南アジア各国と同様、深刻な新型コロナの影響です。2020年のフィリピン経済はマイナス成長と予想され、ニノイ・アキノ国際空港の拡張事業など大型開発が白紙になるなど不透明感があります。やはり経済の動向を見極めた上で投資をするのが賢明でしょう。
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