観光業が大きく貢献するタイ経済。政府は、新型コロナウィルス流行の影響を受けて、タイ政府は2020年の成長見通しを下方修正しました。
GDP成長率の低迷で、タイ中央銀行は金利引き下げ
新型コロナウィルスが広まる前からすでにタイ経済には緊張感が漂っていました。2020年度(19年10月~20年9月)の予算成立の遅れ、過去10年で最悪と言われた干ばつ、そしてタイバーツが比較的強いことなどが重なり、成長率は圧迫されていました。
▼USドル/タイバーツの為替レート変動(過去5年)
(出所:xe.com)
2019年第4四半期、タイのGDP成長率は1.6%でした。これは、前期の2.6%、市場予想の2.1%よりも低い結果で、2014年第3四半期以来の最低レベルとなっています。2019年通年では、GDP成長率は2.4%でした。一方で、2018年の通期成長率は上方修正され4.2%となっています。2019年通期の結果も、2014年以来最低レベルとなっています。2020年について、国家経済社会開発庁 (NESDB)は2月17日、2019年11月に発表した成長率予想2.7~3.7%から、今期の予想を1.5%~2.5%に下方修正しました。
また、経済成長のメインドライバーである、輸出見通しも昨年11月の見通し2.3%から1.4%に引き下げました。
2020年2月初め、経済を支えるべく、タイ銀行は、政策金利を過去最低レベルの1%に引き下げました。一方で、政府は国内観光と消費を促進するような方法を検討しています。
▼タイ政策金利の推移
(出所:Trading Economics)
中央銀行が更に政策金利を引き下げて、今年の成長率を支えようとするのではと予想しているアナリストもいます。
中国人観光客が激減
タイの観光収入に最も貢献している中国人観光客が減り、打撃を与えることになりそうです。
観光業はタイのGDPの約5分の1を占めています。観光業は、低迷する他の産業をオフセットする唯一の光と思われてきました。
ところが、中国が新型コロナウィルスの拡大を食い止めるべくグループ旅行を禁止し、タイを訪れる観光客は激減しています。タイ旅行業協会のデータによると、協会メンバーのサービスを利用した中国人観光客数は、2020年1月1日~2月10日の期間で、前年同期比で40.8%減少しています。2019年1月~12月の同協会のデータで国別の観光客数を見ていくと、同協会のサービスを利用した観光客の実に半数以上が中国人であったことがわかります。
▼年初の国別観光客数の増減
▼タイ旅行業協会メンバーのサービスを利用した
国籍別外国人観光客の割合(2019年1月~12月)
タイのTMB銀行の経済分析部門である、TMBアナリティックスによると、タイを訪れる中国人観光客数は、新型コロナウィルス流行の影響で、今年前半だけで240万人減ると予想されています。
新型コロナウィルス流行にともなう観光客の減少により、観光および関連産業の収入は、今年1,000億バーツ(約3,537億円)以上の影響を受けるものとみられています。特に、今年の第1四半期は大打撃を受けるでしょう。中国のカレンダーでは年前半に大型連休がかたまっています。年央には、状況が改善するとみられていますが、TMBアナリティックスは、タイを訪れる外国人観光客数について、通期でも当初予想の4,080万人から、3,870万人に減少するとみています。実際に、2月に入って、バンコクのスワンナプーム国際空港はかつてのにぎやかさを失っています。
▼観光客がぐっと減ったスワンナプーム国際空港
観光関連収入の損失予想1,000億バーツのうち、700億バーツは、ホテル、レストラン、およびリテール業の損失です。業種別では、ホテル業が284億バーツ、リテール業が28.4億バーツ、レストラン業が189億バーツの損失を被るとみられています。7,500軒のホテルが影響を受けるとみられており、特に影響を受けるエリアは、首都であるバンコクをはじめ、リゾートとして人気のプーケット、チョンブリー、クラビ、スラタニー、パンナー、そして北部の古都でありタイ第2の都市チェンマイです。これら7県は、中国人観光客に人気で、ホテル施設は合計4,763軒、タイのホテル合計の65%を占めています。
タイの経済成長は、2019年、輸出と公共投資が低迷し、過去最低レベルを記録しました。2020年、新型コロナウィルス流行の影響で、東南アジア第2の経済圏にさらなる圧力がかかることになりそうです。
タイ保健省疾病管理局が発表する、2020年2月23日午前11時時点のタイの新型コロナウィルス感染者件数は35件、うち21件が完治、14件が入院中、死亡者数は0となっています。