REITとは?
REITとは、不動産投資信託のことです。REITに投資すると、あなたが投資したお金は、他の投資家のお金とともに集合投資スキームにプールされ、ショッピングモール、オフィス、ホテル、サービスアパートなどといった収益を生む不動産のポートフォリオに投資されます。
これらの資産はプロによる管理がされ、資産から生まれた収益(主に賃料収入)は、REITマネジメント料、不動産マネジメント料といった費用を差し引いたのちにREIT保有者に定期的に分配されます。
REITの投資目標は、所得の配分と長期的な値上がりの可能性です。
REITは、ブローカーを通して、株式を購入するのと同じ方法で購入することが可能です。
シンガポールで初めての不動産投資信託(S-REIT)が上場したのは、2001年11月。日本初のREIT(J-REIT)が上場した2001年9月から2か月後のことでした。
2019年12月末時点で、シンガポール証券取引所に上場している不動産投資信託(REIT)およびプロパティ・トラスト(不動産を資産に持つトラスト)は44あります。大まかなREITおよびプロパティトラストの区分とその所有不動産タイプは次の通りです。
REITタイプ | 保有資産 | 数 |
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商業REIT | オフィスビル | 8 |
リテールREIT | ショッピングモール | 10 |
工業REIT | 倉庫、物流施設、データセンター | 9 |
ホスピタリティREIT | ホテル、サービスレジデンス | 7 |
ヘルスケアREIT | 病院および養護施設 | 3 |
その他(多様型・特化型) | 7 |
(出所:シンガポール証券取引所)
不動産投資信託(REIT)に投資しようとしたときに何を知っておくべきか。シンガポールの国家金融教育プログラムであるMoneySense(マネーセンス)が、S-REITのしくみと投資の際の利点とリスクについてまとめています。本日はこちらをご紹介していきましょう。
S-REITのしくみ
(出所:Money Senseウェブサイトを元に作成)
新規公開株(IPO)を通じてユニットホルダー(ユニット保有者)から集められた資金は、REITが不動産物件のプールを購入するのに使用します。
購入された不動産は、テナントに賃貸されます。
ユニットホルダー(投資家)には、所得の分配(配当金のようなもの)という形で還元されます。
ほとんどのREITは、REITマネジャー手数料、不動産マネジャー手数料、トラスティー料、その他分配前に収益から控除される費用がいくつかあります。
外国に不動産を持っているREITの中には、その国で課税されるものもあります。投資家はこれらの費用について、REITの目論見書や財務諸表で確認することができます。
投資する前に気を付けること:
REITが必ずしも低リスクで配当金が保証されているというわけではありません。必ず目論見書とリサーチレポートをよく読み、投資しようとするREITの投資目的と戦略をよく理解する必要があります。
1. REITマネジャーに関する情報: 経験や実績。該当する場合は、REITのスポンサーと資産の出所。
2. REITに組み込まれる物件に関する情報:
特に、投資しようとするREITの地理的・セクター環境
3. その他投資情報:
配当ポリシーおよび手数料・料金。
REITはそれぞれ、構造や重点を置く場所やセクターが異なります。REITによっては、他のREITと比べて、政治リスク、規制リスクなど、より多くのリスクを伴うものもあります。
目論見書の「投資アプローチ」「リスク」の部分を読み、投資しようとするREITが持つリスクに関する情報を把握しましょう。投資目的や戦略、重点を置くロケーションやセクター、保有する不動産の質、物件の所有権(リースホールドかフリーホールドか)、REITマネジャーの経験、および所得分配ポリシーなどにより、リスク要素はREITによって異なります。
REITの利点
多様化 | REITを通して複数の不動産(物件プール)に投資をすることで、1件の不動産に投資するよりもリスクが希薄化します。 |
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手軽さ | 個人投資家として投資するには、オフィスビルやショッピングモールといった大型物件への直接投資は資金が必要です。REITに投資をすることで、大型資産の一部に投資をすることができます。 |
流動性 | 不動産そのものを売買するよりも、REITのユニットの売買の方が簡単です。REITは証券取引所に上場されていますので、取引日ならいつでも取引ができます。 |
税制優遇 | 毎年少なくとも課税所得の90%を配当するREITには、シンガポール内国歳入庁(IRAS)より税の透明性措置(tax transparency treatment)を受けることができます。 |
透明性と柔軟性 | 取引日を通じて、REITの価格情報にアクセスでき、REITを取引することができます。 |
REITの持つリスク
REITへの投資に関連するリスクには以下のようなものがあります。
市場リスク | • REITは証券取引所で取引されるもので、価格は需要と供給に基づきます。 • 価格は一般的に投資家の経済、不動産市場とそのリターン、REIT管理、金利、その他の要素への信頼度を反映します。 |
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所得リスク | • 分配金は保証されておらず、REITの収益変動に左右されます。たとえば、REITの不賃料収入は、賃貸契約の更新時に賃貸料率が下がったり、稼働率が下がったりした場合に影響を受けます。 • REITが前払いを受けたかどうか、もしくは賃貸料率の固定その他の条項を賃貸契約に盛り込んでいるどうかを確認しましょう。 • 対象物件の資金繰りが負債で賄われている場合、負債コストが変動すると、借り換えリスクがあります。負債コストが高くても、ユニットホルダーへの分配金が少なくなります。 |
集中リスク | • REITの価値の大部分が、少数の物件または少数のテナントからのものである場合、それらのうちのいずれかに何か起こった場合、大きな損失リスクがあります。 |
流動性リスク | • REITは、所有する物件の売り手・買い手を探すのに苦労する場合があります。 • 経済状況がよくなかったり、例外的な状況の場合、REITが短期間で投資ポートフォリオを多様化させたり、その資産を売却させたりするのが困難なことがあります。 |
レバレッジリスク | • REITが借入をして物件の取得を行う場合、レバレッジリスクがあります。 • REITが解散される場合、その資産はまず債権者への弁済に充てられます。残余価値があれば、ユニットホルダーに分配されることになります。 |
借り換えリスク | • REITは所得の大部分をユニットホルダーに分配するため、期限の到来した融資の返済に必要な資金を貯める能力がない場合があります。 • 借り換えのために、さらにお金を借りる(銀行融資または社債の発行)ことになるか、株主割り当てや私募などの資本の調達を行うことになります。 • 融資の更新時期が来ていると、借り換えコストも高くなります。 • もう一つのリスクは、REITが借り換えをすることができず、融資の際に物件を担保にしている場合、それらを売却しなければならなくなります。 • これらのリスクは、REITのユニット価格および収益分配金に影響を与えます。 |
土地リース満了リスク | • REITがリースホールドの物件を保有している場合、時間の経過とともに土地のリースの残りの期間が短くなり、物件は土地のリースが満了となったら賃貸主に返却されなくてはなりません。残りの期間が短くなってきたり、土地のリースが満了となったりするとREITの価格は影響を受ける可能性があり、ひいてはユニット価格の下落にもつながります。 |
その他のリスク | • 物件タイプや投資地域などに応じて多様性をもつREITがある一方で、このような多様化が、セクターや国の規制などの別のリスクを呼び込むこともあります。 |
S-REITのしくみとその利点・リスクをよく理解したうえで投資をする。これは、S-REITだけでなく、日本のJ-REITにも言えることですね。投資しようとするREITの構造とリスクプロファイルが、自身のリスク選好度や投資期間とマッチするかを検討しましょう。REITの仕組みが分からない、もしくは投資目的や戦略に違和感を覚える場合には、一度立ち止まって投資を再考することも必要そうです。