(本記事は、水上克朗氏の著書『50代から老後の2000万円を貯める方法』アチーブメント出版の中から一部を抜粋・編集しています)
生前からできる相続税対策①
「生前贈与」と「宅地特例」で相続税ゼロへ
相続税は、基礎控除額以上に遺産をもらった場合に課せられる税金です。基礎控除額の計算式は、「定額控除3000万円+600万円×法定相続人の数」です。法定相続人の数によって変わってくるのです。
たとえば、父親が亡くなって、母親と子ども2人が残されたとすると、法定相続人は3人なので4800万円(=3000万円+600万円×3人)の基礎控除額が認められています。預金、持ち家など父親名義の財産(課税価格)をプラスして、4800万円を超えなければ、相続税はかかりません。
また、基礎控除額以上の遺産があれば、必ず相続税がかかってくるというわけではありません。
相続人が配偶者の場合は、どんなに多額でも法定相続分まで、もしくは1憶6000万円までは無税で相続できます。いわゆる一次相続には、通常、ほとんど相続税がかかりませんが、その後の二次相続のときが大変だと言われるのはこの点です。
相続税の基礎控除額が引き下げられて「3000万円+600万円×法定相続人の数」に改訂されました。これにより東京23区の居住者は5人に1人が課税対象とされます。もはや相続対策はお金持ちだけが考えるべきことではなくなったのです。
相続税を減らす鉄則は、親が生きているうちに財産を使い切ってもらうことです。相続税対策には、おしどり贈与、相続時精算課税制度、教育資金一括贈与など、家族構成や用途(教育資金など)によって節税になる制度はさまざまですが、基本は次の2つです。
時間をかけて「生前贈与(暦年贈与)」
年間110万円までの贈与は非課税になるため、配偶者や子どもの口座に毎年110万円を振り込んでいくのです。耳にしたことがある方も多いでしょう。誰にでも贈与可能で、申告の必要もありません。収支の先行きが見通せるようになる65歳から考えましょう。
贈与者が亡くなった時点から遡って3年分までは相続税の課税対象となってしまうため、男性の平均寿命81歳から逆算して78歳までに終えておくことが目安になります。
生前贈与する場合は、受取人本人の口座に振り込む、通帳や印鑑は受取人が管理するなど、いくつか注意点があります。孫のためにと、勝手に口座をつくってコツコツ貯めていく、いわゆる「名義預金」は税逃れとみなされかねません。この対策方法は次項で説明します。
生前から同居で「小規模宅地等の特例」を活用する
親と同居していれば、「小規模宅地等の特例」の活用も、相続税対策として有効です。
同居する子どもが親の死後に自宅を相続すれば、土地の評価額が8割減となります。仮に、1億円の土地を所有しているとして、生前に子どもと同居しておけば基礎控除額の範囲内に収まるので相続税がゼロになります。一方で別居する子どもが相続すると、およそ770万円(相続人は子のみ2人の場合)の相続税がかかります。
なお、この特例は、親が老人ホームに入居している場合や二世帯住宅の場合、別居していても家なき子特例に該当する場合などは、適用できる場合もありますので、詳しくは専門家に必ず相談しましょう。わたしの場合は、弟も、親と同居していませんでしたが、自己所有の家に住んだことがなかったため、この特例を適用することができました。
1957年山梨県生まれ。慶応義塾大学卒業後に大手金融機関で40年間勤務し、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、二度の会社合併を経験したが「会社一筋一社の人生」を貫く。56歳のときに執行役員待遇から社外出向となり、収入が激減。同じタイミングで家族の病気が悪化、実家の父親は認知症で2年半の介護状態。母親も老老介護で疲れ果て胃がんで3ヵ月の余命宣告。両親が立て続けに他界し、ダブル相続にも直面した。ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、自身のライフプランを見直して老後資金を捻出。専門雑誌のコラムや講演活動で50代から同世代のリタイア世代にエールを送る。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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