初めての人のための資産運用ガイド
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(本記事は、内藤 忍氏の著書『初めての人のための資産運用ガイド』=ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年11月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

金融業界にはびこるサギにひっかからない方法

▶︎運用の大原則は「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」
▶︎高いリターンに目がくらみ、リスクを取りすぎると失敗する
▶︎「ローリスク・ハイリターン」は実在しない「サギ」

金融業界にはびこる「サギ」

金融業界には「サギ」と「カモ」という2羽の鳥がいることをご存じですか?

まず、この項では、「サギ」=「金融詐欺」について見ていきましょう。

2013年4月、米国の金融業者MRIインターナショナルが資産の一部を消失した疑いがあると報道されました。1300億円といわれる、巨額の投資資金のほとんどが投資家に戻せないことが判明したのです。

日本でも、高利回りの金融商品として販売されました。その仕組みを理解しないまま、1000万円単位の投資をしていた個人投資家もいたようです。

少しでも高利回りで運用したいという投資家の気持ちはわかりますが、金融の世界のルールは「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」が大原則です。

また、中には仕組みの説明をいくら聞いても理解できない「ブラックボックス商品」があります。たとえば「海外の最先端の金融工学によって高いリターンを狙う」と言われても、何となくよさそうと思うだけで、本質的なことは何もわかりません。

しかし、投資に関する基本的な知識を持っていれば、このような金融詐欺に巻き込まれることはないでしょう。

「ローリスク・ハイリターン」の金融商品は、そもそも虫のいい話であって、金融の世界には実在しない「サギ」なのです。

リターンのためにリスクを取りすぎる危険をおかす

リスクとリターンの関係を理解しないまま投資を始めると、多くの場合、リスクの取りすぎによって失敗します。

たとえば、FX(外国為替証拠金取引)は少ない金額でレバレッジを使った取引ができる金融商品です。持っている資金の25倍までの取引ができるハイリスクの商品といえます。

はじめはリスクに注意を払いながら慎重に運用を開始しても、レバレッジによって利益を大きく増やせることに気がつくと、ついリスクを大きく取ってしまう傾向があります。10万円しか資金を持たない人が、250万円のリスクを取る──これは明らかにやりすぎです。

リスクについての理解が不十分だと失敗する

2005年頃に中国、ロシア、ブラジル、インドなどのBRICsと呼ばれる新興国の株式に投資する投資信託が高リターン商品として人気を博しました。

しかし、保有資産の半分以上を中国株ファンドに投資するようなリスクを取りすぎたため、リーマンショックによって、資産が一気に半分以下にまで減ってしまった人もいました。

リスクについての理解が不十分であったがために、投資に失敗してしまったのです。

【CHECK !】分配金を出すと、投資信託自体の価格は下がる

シニア層の年金生活者には毎月分配型の投資信託が人気です。しかし多くの人は、毎月受け取る分配金には注意を払っていても、保有している投資信託自体の価格(基準価額)の変化には鈍感です。

投資信託は分配金を出せば、そのぶん、基準価額は下がります。つまり、価格が上昇しないのに分配金を出し続ければ、保有している資産の価値が減るということです。

投資の世界に錬金術は存在しません。

初めての人のための資産運用ガイド
内藤忍(ないとうしのぶ)
株式会社資産デザイン研究所 代表取締役
1964年生まれ。東京大学経済学部卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院修士課程卒(MBA)。金融機関勤務を経て、1999年にマネックス証券株式会社の創業に参加。マネックス・ユニバーシティなどグループ会社の代表取締役を歴任後、株式会社資産デザイン研究所代表取締役就任。著作は40冊を超え、「初めての人のための資産運用ガイド」はシリーズ24万部のベストセラーに。 早稲田大学、明治大学などで、資産運用に関する講座を開講。 毎週金曜日配信の資産デザイン研究所メールは、配信数49000通を超える人気。ブログ「SHINOBY'S WORLD」も毎日更新中。

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