どんな条件を満たすと地下緩和になるのか?地下室のおすすめ活用方法もご紹介
(画像=IrianaShiyan/stock.adobe.com)
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

住宅の建築やリフォームを検討している人の中には「地下緩和とは何か?」「地下室のメリットやデメリットを知りたい」など、地下室や地下緩和に興味を持っている人もいるのではないでしょうか。地下緩和を利用すれば容積率の緩和を受けられ、建築できる建物の延床面積の上限を変えることができます。

ただし、土地の有効活用にもなる地下室ですが、作成するには多額の費用がかかるなどのデメリットもあるため、注意が必要です。

この記事では、地下緩和の詳細や地下室のメリット・デメリット、おすすめの活用方法などについて詳しく解説します。併せて、地下室を作るのにかかる期間や費用の目安、知っておきたい湿気対策も紹介します。

目次

  1. 地下緩和とは?
  2. 地下緩和を受けるための条件
  3. 地下室のメリット
  4. 地下室のデメリット
  5. 地下室のおすすめの活用方法
  6. 地下室を作るのにかかる期間と費用
  7. 知っておきたい地下室の湿気対策
  8. 地下室のメリットを活かせば、ゆとりある住まいの建築が可能
  9. 地下緩和に関するよくある質問

地下緩和とは?

地下緩和とは、住宅に地下室を作ることで容積率の緩和を受けられる制度のことです。地下室は、住宅全体の延床面積の3分の1を上限として容積は計算されません。例えば敷地面積100平方メートルで容積率100%の家の場合、50平方メートルの地下室を作ることで最大150平方メートルの延床面積の家を建てることができます。

地下緩和
著者作成

地下室を作らなければ延床面積100平方メートルまでしか建築できませんが、地下室を作ることで50平方メートルも広い住宅を建築することができるのです。

ただし地下緩和を受けるためには、後で述べる条件を満たす必要があるため、注意するようにしてください。

容積率とは?

容積率とは、敷地面積に対して建てることができる建物における延床面積の割合のことです。例えば100平方メートルの土地で用途地域の容積率が100%の場合、延床面積100平方メートル(地下室がない部屋の合計)が建てられる家の広さの上限になります。

上記の例を、2階建ての住宅を建てる場合の容積率に当てはめると、計算式は以下のようになります。

容積率=(1階床面積+2階床面積)÷敷地面積×100

1階を50平方メートルにした場合、2階の床面積の限度は50平方メートルです。
この場合、容積率=(50㎡+50㎡)÷100㎡×100=100%となり、用途地域の容積率の条件を満たします。

地下緩和
著者作成

用途地域によって容積率が違う

前述した容積率は、用途地域によって上限が異なります。用途地域とは、都市計画において用途に応じて13の地域に分けられたエリアのことです。では、用途地域ごとの容積率を紹介します。

地域容積率(%)
第1種低層住居専用地域50、60、80、150、200のうち都市計画による
第2種低層住居専用地域
田園住居地域
第1種中高層住居専用地域100、150、200、300のうち都市計画による
第2種中高層住居専用地域
第1種住居専用地域200、300、400のうち都市計画による
第2種住居専用地域
準住居地域
近隣商業地域
商業地域200、300、400、500、600、700、800、900、1,000のうち都市計画による
準工業地域200、300、400のうち都市計画による
工業地域
工業専用地域住宅建築不可

用途地域によってこのように容積率の上限が定められています。所有している土地の容積率が知りたい場合は、次に述べるように建築会社や所有している土地がある自治体などに問い合わせるようにしてください。

容積率の調べ方

容積率は建ぺい率と一体で調べる必要があります。両方の制限がどれくらいかは、市役所や区役所の建築指導課または都市計画課に問い合わせると調べることができます。両者の違いは下表のとおりです。

建ぺい率敷地面積に対して、上から見たときに建物が土地の何割を占めるかを表す指標
容積率敷地面積に対して、建物の延床面積が土地の何割を占めるかを表す指標

建ぺい率と容積率をオーバーした建物は違法建築になるため、注意が必要です。建物を増築する場合は、現在の建物の建ぺい率と容積率を確認する必要があるので、建築会社に相談するとよいでしょう。

また、これから土地活用でマンションなどの建築を考えている場合は、最初から不動産デベロッパーに相談したほうが安心かつ効率的です。

地下緩和を受けるための条件

地下緩和を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

・地下室であること(床面から地盤までの高さが地階の天井高の3分の1以上あること)
・地盤から出ている地階の天井高が1メートル以下であること
・住宅として使われ、地下室の面積が延べ床面積の3分の1以下であること

特に地下室の天井が地盤面から1メートル未満であることは、地下室を作る際に気をつけるべきポイントです。仮に1メートル超えてしまうと地下緩和を受けることができないので、設計段階から確認しておくようにしましょう。

地下室の条件

建築基準法で地下室は「地階」と呼ばれており、床面から天井までの高さの3分の1以上が地盤面よりも下にある部屋のことを指します。つまり部屋のすべてが地下にない部屋でも地下室となります。例えば地下室の高さが3メートルで地下室の床から地盤面までの高さが1メートル以上あれば、法律上は地下室に該当するのです。

地下室の種類

地下室の条件に当てはまる部屋は、全地下室と半地下室の2種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

・全地下室
全地下室とは、部屋のすべてが地盤に埋まっている状態の地下室のことです。全地下室のメリットは遮音性や断熱性が高いことで、音楽室や楽器・ワインの保管室に適しています。その半面、地下なので採光が取りにくく、換気がしにくいというデメリットがあります。

・半地下室
半地下室とは、部屋の一部が地上に出ている状態の地下室のことです。地下室の定義については、建築基準法施行令の第1条2項で「床が地盤面下にある階で床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のものをいう」と定められています。したがって、地階の床面から地盤面の高さが3分の1以上あれば、地下室と認定されます。

半地下室のメリットは、地上に出ている部分の壁に窓を付けることによって、採光や換気を得られることです。デメリットは地上に出ている部分があるため、音楽室などの場合は遮音対策が必要になることです。また地下と寒暖差がある外気温に対応するため、断熱対策も必要です。

地下室のメリット

容積率が緩和される以外の地下室のメリットは、以下の3つです。

・音が漏れず外の騒音も聞こえにくい
・耐震性がアップする
・気温や湿度が安定した部屋ができる

音が漏れず外の騒音も聞こえにくい

地下室のメリットの一つは、防音性が高いことです。地下にあるため外の騒音も聞こえにくく部屋の音も漏れにくい特徴があります。そのため、楽器演奏のための部屋やシアタールームなど大きな音が出る部屋に最適です。

耐震性がアップする

地下室があることで建物の耐震性がアップするといわれています。これは、地下室が地面の下に深く埋まっていることで、建物の基礎としての役割を果たすためです。つまり通常の建物よりも深い位置に基礎があることになります。また地下室は、土からの圧力に耐えるべく強固なコンクリート壁などを利用するため、地下室自体の耐震性も高いです。

気温や湿度が安定した部屋ができる

地下室は、外気温の影響を受けにくいため、1年を通して温度が安定しています。そのため夏は涼しく冬は暖かいです。ただし、温度は安定していますが周囲の土から来る湿気があるため、換気や湿度対策が必要になります。

地下室のデメリット

地下室には、以下の3つのデメリットがあります。

・費用がかかる
・地下室が作れる土地でないといけない
・結露や浸水に注意が必要

費用がかかる

地下室の最大のデメリットは、費用がかかることです。主にかかる費用は、調査費や土留の費用、土地の処分費用などがあり通常の建物を建てるよりも多額の費用がかかります。なお費用は、工事をする会社や地下室の広さ、工事内容によって大きく変わるため、事前に見積もりをとるようにしましょう。

地下室が作れる土地でないといけない

地下室を作るのに適していない土地の場合は、地下室を作ることができません。例えば「地面のすぐしたに水脈があるエリア」「新しく道路ができる計画がある土地」などが挙げられます。

このように所有している土地が地下室に適していない場合は、地下室が作れません。そのため、事前に適している土地かどうかを建築会社などに確認する必要があります。

結露や浸水に注意が必要

地下ならではのデメリットもあります。夏場は外気が高温多湿になるのに対し、地下はひんやりしているため、温度差が生じて結露が発生します。地下がコンクリートの場合は、水が完全に抜けるまで時間がかかります。また台風や集中豪雨の際は、地下が浸水被害に遭うリスクもあります。

地下室のおすすめの活用方法

地下室の活用方法としておすすめしたいのは、以下の4つです。

・ホームシアター
・音楽部屋
・収納部屋
・トレーニングルーム

ホームシアター

前述したように地下室は、防音性が高いため、音響設備にこだわったホームシアターはおすすめの活用方法として挙げられます。自宅にいながら映画館のような臨場感を味わえるため、人気の活用方法です。

音楽部屋

音楽室も地下室の防音性を活かした方法の一つです。例えば子どものピアノの練習部屋や自身のギターなどの練習部屋として最適でしょう。またある程度の広さがあればバンドの練習場所としても活用できます。

収納部屋

家族が増えるなどライフスタイルの変化や月日が経つことで荷物が増えることはよくあります。そういった場合、地下室を収納部屋として活用することで地上階をすっきりと使用することが可能です。このように家全体の収納力がアップするのは、魅力的な活用方法といえます。

トレーニングルーム

地下室をトレーニングルームとして活用するのもおすすめです。例えば「忙しくてジムに通えない」「ジム通いが続かない」といった人などは、自宅にトレーニングルームを作成することで気軽に運動ができます。

地下室を作るのにかかる期間と費用

地下室を作るにはどれくらいの期間と費用がかかるのか、地下室を建築プランに入れている人は気になるでしょう。しかし、地下室の需要はあまり高くなく、面積によっても異なるため、工期や費用を公開している住宅メーカーはほとんどありません。

そのため、ここではあくまでも一例として、それぞれの目安を紹介します。

地下室を作るのにかかる期間

地下室を作るためには、まず地盤調査が必要です。次に土地を掘る工事や、地盤改良の工程があります。基礎的な工程を終えた後も浸水対策や結露対策、湿気対策など地下室には多くの作業工程があるため、工事期間は通常の住宅よりも2ヵ月程度長くかかると考えておきましょう。

ただし、コンクリートではなく鋼製地下室(ユニット型)という工法であれば、鋼製地下室専門メーカーである株式会社カメイの例では約2週間で地下室が完成します。同社は「RC造地下室の4分の1の工事期間」と説明していますので、通常の地下室の工事期間が2ヵ月程度という見込みは妥当と考えてよいでしょう。

地下室を作るのにかかる費用

地下室を作る費用については、一級建築士事務所長沼アーキテクツが「坪あたり100~200万円」と公式サイトで公開しています。10坪(約33㎡)の地下室なら、最低でも1,000万円はかかる計算です。

※一例であり依頼する住宅メーカーや建築会社によって実際にかかる費用や工期は異なります

知っておきたい地下室の湿気対策

地下室を作る際は、湿気対策が欠かせません。地下室で大きな問題になるのが結露とカビです。すでにカビが発生している場合は、カビを除去します。除去した後は再びカビが発生しないよう、業者に防カビ対策を依頼します。

地下室は湿気が貯まりやすいので、除湿器を使用するのも有効です。他にも壁や天井に結露防止塗料を塗る方法や、費用はかかりますが断熱リフォームを行う方法もあります。

地下室のメリットを活かせば、ゆとりある住まいの建築が可能

地下室を作ることで、地下緩和など多くのメリットを得られます。容積率の緩和で延床面積を1.5倍まで拡大できることは、ゆとりある間取りの実現にもつながります。

例えば、本来は延床面積100平方メートルまでしか部屋を作れない住宅でも、地下室を作ることで50平方メートル分広くなるので、文中で紹介したような趣味の部屋や収納に使うこともできるでしょう。

ただし地下室を作るには、多額の費用がかかるなどの注意点もあるため、活用方法をよく考えてから検討しましょう。

地下緩和に関するよくある質問

Q.地下緩和とは?

地下緩和とは、住宅に地下室を作ることで容積率の緩和を受けられる制度のことです。地下室の面積が全体の3分の1までなら容積率に算入されないため、例えば敷地面積100平方メートルで容積率100%の家の場合、50平方メートルの地下室を作ることで最大150平方メートルの延床面積の家を建てられることになります。

Q.地下緩和を受けるための条件は?

地下緩和を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。

・地下室であること(床面から地盤までの高さが地階の天井高の3分の1以上あること)
・地盤から出ている地階の天井高が1メートル以下であること
・住宅として使われ、地下室の面積が延べ床面積の3分の1以下であること

Q.地下室を作るメリットとデメリットは?

地下室を作る最大のメリットは、地下緩和によって地下室のない住宅よりも1.5倍まで広い住宅を建てられることです。遮音性が高いので部屋の音が漏れにくく、外部の音も入りにくいというメリットもあります。

さらに地下室を作ることで建物の耐震性が向上し、地盤に囲まれているので地震にも強いといわれています。気温や湿度が安定した部屋になることもメリットです。

デメリットは、通常の住宅に比べて費用が多くかかることです。また、工期も2ヵ月程度長くなります。さらに、地下室を作るのに適した土地でないと工事を行うことができません。結露や浸水といった、地下ならではのデメリットにも注意が必要です。

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