不動産投資に使えるコロナ融資・補助金・支援金【2021年9月最新版】
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

2021年8月で国内において新型コロナ感染拡大が本格化してから約1年半が経過しようとしています。この間、中小企業・中堅企業向けのさまざまな制度が打ち出されてきました。本記事では、その中でも特に重要と思われる以下の3つの内容について2021年8月時点の最新内容を紹介します。

  • 実質無利子・無担保融資
  • 事業再構築補助金
  • 月次支援金

あわせてこれらの制度と不動産投資(不動産賃貸業)との兼ね合いについても解説します。

【不動産賃貸業でも利用可】実質無利子・無担保融資(コロナ特別貸付など)

コロナ禍における中小企業・中堅企業の資金繰り支援の代表は「実質無利子・無担保融資 (コロナ特別貸付など)」です。「実質無利子・無担保融資」は、新型コロナウイルス感染症の影響により最近1ヵ月間の売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して「一定程度減少」していれば低金利で融資してもらえます。(当初3年間は基準利率が-0.9%、4年目以降は基準金利)

さらに要件を満たしていれば実質無利子や無担保で融資を受けることも可能です。(詳細は後述)実質無利子・無担保融資では、融資されたお金の使い道の制約がないため、自由度が高いことが魅力。さらに注目点は、もともと2021年前半までだった申込期限が最新情報では、2021年末までに延長されていることです。

ただし注意点もあります。実質無利子・無担保融資は、以下の2つの窓口経由で行われてきました。

  • 民間金融機関
  • 政府系金融機関(日本政策金融公庫または商工中金)

上記のうち民間金融機関経由の融資は、2021年3月末までで終了しています。一方、政府系金融機関となる日本政策金融公庫と商工中金経由は同年3月末以降も継続し申請期限は同年6月末の予定でした。しかし同年5月に2021年末まで延長されています。実質無利子・無担保融資の要件を改めてチェックしてみましょう。

日本政策金融公庫(中小事業または国民事業)と商工中金で以下のように上限額が異なります。

 日本政策金融公庫
(中小事業)
商工中金
(危機対応融資)
日本政策金融公庫
(国民事業)
要件
支援内容
新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1ヵ月間の売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して一定程度減少すること
① -5%であれば低利融資
当初3年間:基準利率-0.9%、4年目以降:基準金利
② さらに以下の要件を満たせば、利子補給を通じて当初3年間、実質無利子・無担保融資
小規模の個人事業主:-5%
小規模の法人:-15%
その他 :-20%
貸付期間
(据置期間)
設備資金20年以内、運転資金15年以内
(据置期間は最大5年)
上限額
(併用可)
3億円(実質無利子)
6億円(融資枠)
3億円(実質無利子)
6億円(融資枠)
6,000万円(実質無利子)
8,000万円(融資枠)

※一部抜粋:経済産業省「政府系金融機関(日本政策金融公庫及び商工中金)による実質無利子・無担保融資の概要」

実質無利子・無担保融資について詳細はこちら
(リンク先:経済産業省の公式サイト)

【不動産賃貸業でも利用可】事業再構築補助金

(※不動産の取得には利用不可、建物の建築・改修には利用可)

中小企業・中堅企業向けの「事業再構築補助金」は、コロナ関連の補助金の中でも助成規模が大きいインパクトのある施策です。助成上限は、8,000万~1億円となっています。事業再構築補助金の主な内容は、ポストコロナ、ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための経費の一定割合を国がサポートすることです。

この制度を利用するための条件は「コロナ以前と直近の売上を比較して売上が減少している(※)」「金融機関や税理士などにサポートしてもらいながら事業計画をつくる」などです。

※売上比較などについて詳細はこちら
(リンク先:経済産業省の公式サイト)

事業再構築補助金は、自由度の高い融資と異なり用途が限定されています。不動産の取得には使えませんが以下のテーマに該当する費用なら不動産賃貸業をしている中小企業・中堅企業でも利用可能でしょう。

  • 新分野展開
  • 業態転換
  • 事業/業種転換
  • 事業再編
  • これらの取組を通じた規模の拡大 など

これらのテーマにあてはまれば事業再構築補助金は、不動産投資にも利用できます。しかし不動産そのものの購入費は対象外です。一方建物の建築・改修や加工設計などの外注費、広告宣伝費などは対象となっています。事業再構築補助金の具体的な活用イメージの一例は、以下の通りです。

  • 飲食業の例:カフェからテイクアウト販売への転換
  • 小売業の例:売り切り業態からサブスクリプション業態への転換
  • 製造業の例:新技術の設備導入や開発

事業再構築補助金の公募は、計5回に分けて行われ2021年8月時点で第3回(2021年7月30日18時~2021年9月21日18時)の公募が行われています。ちなみに中小企業と中堅企業では、以下のように補助額・補助率が異なるのが特徴です。

中小企業通常枠補助額:100万~8,000万円
補助率:3分の2
(6,000万円超は2分の1)
卒業枠補助額:6,000万超~1億円
補助率:3分の2
中堅企業通常枠補助額:100万~8,000万円
補助率:2分の1
(4,000万円超は3分の1)
グローバル
V字回復枠
補助額:8,000万円超~1億円
補助率:2分の1

なお事業再構築補助金の第3回公募からの変更点は、以下の3点です。

  • 最低賃金枠の創設:業績が厳しく最低賃金に近い従業員が一定割合以上の事業者は補助率を4分の3に引き上げ(通常枠は3分の2)
  • 通常枠の補助上限の見直し:補助上限を従業員が51人以上の場合は最大8,000万円、従業員数が101人以上の場合は最大1億円
  • その他:運用の一部見直し(売上減少期間の変更など)

【テナント貸しなどは利用可】月次支援金

月次支援金は「緊急事態措置」「まん延防止等重点措置」の影響で売上が大幅に減少している中小企業や個人事業主などが対象です。コロナの影響で50%以上の売上減少なら中小企業は、最大1ヵ月あたり20万円、個人事業主は最大1ヵ月あたり10万円が給付されます。

売上の比較方法について詳細はこちら
(リンク先:経済産業省の公式サイト)

ただしすべての中小企業などが月次支援金の対象になるわけではありません。以下のいずれかの影響を受けて売上が減少していることが条件です。

  • 飲食店の休業・時短営業
  • 外出自粛などの影響

不動産賃貸業の一例としては、「貸テナントをしていたが飲食店や小売店の休業によって家賃収入が大幅に減少してしまった」などのケースが考えられます。 2021年8月時点では「2021年6~8月分」が申請可能です。月次支援金の申請時の注意点は、「地方公共団体による休業・時短営業の要請に伴う協力金の対象事業者は制度の対象外」ということです。

厳密にいうと「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用している協力金の対象事業者が除外されます。ただし一般の人にとっては、地方公共団体からもらっているコロナ助成金などが「臨時交付金」を原資にしたものか判断しづらいかもしれません。もし分からない場合は、地方公共団体の窓口に問い合わせるのが確実です。

コロナ関連の支援制度はこまめにチェックを

本稿では、コロナの支援となる「実質無利子・無担保融資」「事業再構築補助金」「月次支援金」といった3つの制度の最新内容について解説してきました。コロナ禍においては、感染状況や経済情勢がめまぐるしく変わるため、新たな支援制度ができたり既存制度の中身が変更されたりすることがよくあります。

そのため制度の中身を一度把握しても「利用時に内容が更新されていないか」について都度チェックしたほうがよいでしょう。今回は、主なコロナ支援制度を紹介しましたがこのほかにもコロナ関連の制度はあります。情報収集に努めてコロナの影響を最小限にくいとめましょう。

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