不動産投資でよく聞く専門用語を解説!〜「PM」「BM」編〜
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吉田 謙太郎
吉田 謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

不動産投資には、たくさんの専門用語があり不動産業者や金融機関などとのやり取りでは当たり前のように専門用語が飛び交っています。不動産投資家として物件を購入したり賃貸経営をしたりする場合、不動産業界における共通言語ともいえる各種専門用語を理解していないと関係各者とのコミュニケーションがスムーズに取れないことがあるかもしれません。

本シリーズの各記事では、不動産投資でよく聞く専門用語を毎回ピックアックして今後不動産投資を行う方にも分かりやすく解説します。本記事で取り上げる専門用語は「PM」「BM」の2つです。それぞれの意味や使われ方、違いを中心に解説していきます。

「PM」とは、プロパティマネジメントの略称

「PM」とは、プロパティマネジメント(Property Management)の略称で「ピーエム」と称されるのが一般的です。

プロパティマネジメントとは?

プロパティマネジメントとは、投資用不動産の賃貸経営の管理を行うことを指します。建物全体のメンテナンスや収支管理、オーナーへのコンサルティング、各種入居者対応(空室の入居者募集、クレーム対応、家賃集金等)をはじめとする賃貸経営の実務を網羅的にマネジメントすることです。オーナーから委託を受けてプロパティマネジメントを行う不動産業者は「PM会社」と呼ばれています。

物件購入後の賃貸経営のフェーズにおいてオーナーが最も密にコミュニケーションをとることになる関係業者の一つです。賃貸経営の大部分においては、PM会社がオーナーの第一窓口となる場合が多いため、日常的にコミュニケーションがスムーズに取れる良好な関係を築いておくことが重要といえるでしょう。

プロパティマネジメント業務をアウトソーシングせずにオーナー自身で行う「自主管理」という形態もあります。自己管理を選択する場合は、PM会社を利用する必要はありません。ただしPM会社への委託コストを削減することはできますが建物や設備、賃貸経営の実務に関する知識がない場合は、合理的な選択とはいえないでしょう。

なぜなら設備の故障や入居者からのクレームなどは、24時間265日いつ発生するか分からないうえトラブル発生時に迅速かつ適切な対応判断が求められる局面が多いからです。PM会社のノウハウや各種業者とのコネクションを借りながら安全な賃貸経営を行うためにプロパティマネジメント業務は、プロに任せるのが賢明といえます。

「BM」とは、ビルマネジメントの略称

「BM」とは、ビルマネジメント(Building Management)の略称で「ビーエム」と称されるのが一般的です。

ビルマネジメントとは?

ビルマネジメントとは、建物の管理に関する総合的なマネジメントを行うことを指します。ビルマネジメントは、主に建物というハード面で賃貸経営をサポートしており業務の具体例には以下のようなものが挙げられます。

  • 修繕計画の立案および実行
  • 防火管理
  • 清掃業務
  • 設備管理業務
  • 保安警備業務 など

オーナーから委託を受けてビルマネジメントを行う不動産業者は「BM会社」と呼ばれます。ビルマネジメントは、オーナーが直接BM会社に委託をする場合もありますがPM会社がプロパティマネジメントの一環としてBM会社に再委託する場合も少なくありません。ビルマネジメントの実務においては、例えば以下のような関係業者があります。

  • 建物の清掃を行う業者
  • 各種設備(エレベーター、機械式駐車場など)の点検を行う業者
  • 警備体制を整える業者など

これらの業者を束ねて建物のハード面のメンテナンスを行っているのがBM会社です。賃貸住宅には、定期点検を行うことが法律上義務付けられている設備(エレベーター、消火設備、水道など)が多岐にわたり点検や修繕に高度な専門知識が求められます。そのためビルマネジメントは、コストをかけてでもBM会社に委託するのが合理的でしょう。

PMとBMはどう違う?

PMは、BMを含む賃貸経営の全体を包括的にマネジメントする業務でありBMはPMの一部といえます。PMの業務は、以下の3つに分類されBMの業務はそのうちの一つです。

PM業務の分類
PM
(プロパティマネジメント)
BM
(ビルマネジメント)
LM
(リーシングマネジメント)
CM
(コンストラクションマネジメント)

・LMとは
リーシングマネジメント(Leasing Management)の略称で貸室の賃貸借(リーシング)に関する業務のことです。LMの具体的な業務には、空室における入居者募集活動や入居者との賃料交渉、賃貸マーケットの調査などが挙げられます。LMの実務においては、空室をお客様に紹介する賃貸仲介業者や家賃滞納トラブルを未然に防ぐ家賃保証会社などの関係業者がいます。

またマーケットに合わせて家賃を最適化しながら空室率と家賃滞納のリスクを抑えるのがLM業務の役割です。

・CMとは
コンストラクションマネジメント(Construction Management)の略称で建物の中長期的な修繕工事に関する業務のことです。CMの具体的な業務には、中長期的な修繕計画(大規模修繕等)の立案・定期的な見直し修繕工事における工期・クオリティ・コストの管理などが挙げられます。CMの実務では、いかのような関係業者がいるのが特徴です。

  • デザインを設計して図面に落とし込む設計会社
  • 実際に工事を行う建設会社
  • オーナーの立場で大規模修繕に関するコンサルティング
  • 施工監理を行うコンサルタントなど

このように建物の価値を維持または上昇させる工事を行うのがCM業務です。

PM、BMと類似の専門用語、「AM」「FM」についても解説

PMやBMと類似の概念として「AM」「FM」という専門用語もあります。

「AM」とは?

「AM」とは、アセットマネジメント(Asset Management)の略称で「エーエム」と称されるのが一般的です。アセットマネジメントとは、そのオーナーが所有する不動産全体の資産効率を高めるマネジメントのことを指します。PMは、個別物件ごとの運用および賃貸経営のマネジメントです。一方AMは、そのオーナーのポートフォリオに占める不動産資産の全体における運用マネジメントとなります。

不動産を多数所有・運用する資産家や不動産ファンドを運用する会社などから委託を受けた資産管理会社(AM会社)などが運用物件におけるマネジメント計画の策定、売買する物件および時期の決定等を行うのがAMです。物件の運用主体となるAM会社が物件個別のPM業務をPM会社に再委託する形態もあります。

AM会社は、物件の賃貸経営上の実務を指揮する点でオーナーに近い立場といえるでしょう。

「FM」とは?

「FM」とは、ファシリティマネジメント(Facility Management)の略称で「エフエム」と称されるのが一般的です。ファシリティマネジメントとは「企業・団体等が組織活動のために施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」(『公式ガイド ファシリティマネジメント』による定義)のことを指します。

FMやPM、BMなども広く定義すれば建物および設備を良好な状態に維持するためのマネジメントです。FMは、以下のようなあらゆる施設と環境を管理対象としています。

  • オフィス
  • 官庁および地方自治体施設
  • 医療施設
  • 物流施設
  • 教育施設および文化施設
  • 商業および宿泊施設
  • 交通およびインフラ

この観点でいえばPMおよびBMと異なるといえるでしょう。FMは、オフィス空間において用いられることが多い専門用語です。そのため賃貸住宅(アパート、マンション、戸建)において耳にする機会は少ないかもしれません。

広い意味では共通項が多いが、管理対象や目的が異なる「PM」と「BM」

PMは、物件個別の賃貸経営を広くマネジメントする業務、BMはその中でも建物や設備といったハード面を中心にマネジメントする業務です。類似した概念ですが実際に不動産業者とのやり取りでは、明確に使い分けられていることが多いため、管理対象の範囲や業務の目的等を正しく理解しておきましょう。

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