株式や投資信託、暗号資産……投資には、さまざまな選択肢があります。そのなかでエグゼクティブと相性がよいのが不動産投資(賃貸経営)。なぜなら賃貸経営ではオーナーのマネジメント力が重要だからです。ふだんからマネジメント力を鍛えているエグゼクティブが有利な分野といえるでしょう。本稿では、ドラッカーのマネジメント理論をもとにエグゼクティブが賃貸経営でどんな能力を発揮しやすいかを考えます。
賃貸経営で最も重要なのはマネジメント力
「賃貸経営を成功させるには、オーナーのマネジメント力が重要」といった意見が著名な不動産投資家や賃貸経営の専門家から聞かれます。この説に基づけば「ふだんからマネジメント力を鍛えているエグゼクティブは不動産投資で有利」という見方もできるでしょう。「不動産投資ではマネジメント力が重要」という意見の一例を紹介します。
例えば賃貸オーナー向けの月刊誌『家主と地主』の編集長・永井ゆかり氏は著書『生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』の中で「最も重要なのはマネジメントする力」と強調しています。ここで永井氏が協調しているマネジメント力とは「管理会社の動きを把握しマネジメントすること」です。そのため「自分は何もしなくても楽に家賃収入が得られる」という考えではありません。
管理会社をマネジメントすることで「利益を最大化すること」が本来のオーナーの役割というわけです。なお管理会社との契約内容によっては(物件管理だけを委託した場合など)、他の業者を含めてオーナーがマネジメントするケースもあるでしょう。他の業者とは例えば「客付け会社」「リフォーム会社」「塗装屋」「クロス屋」などです。
エグゼクティブが賃貸経営で発揮しやすい5つのマネジメント力
P.F.ドラッカーは、世界中のエグゼクティブのバイブル『マネジメント』であらゆるマネージャーに共通する仕事として以下の5つを挙げていています。
- 目標を設定する
- 組織する
- 動機づけとコミュニケーションを図る
- 評価測定する
- 人材を開発する
(引用:P.F.ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社)
ある程度エグゼクティブ経験のある人であれば(すべて完璧でないにしろ)これらの能力を備えられているのではないでしょうか。このマネジメント力が賃貸経営において「どのように発揮されるのか」「発揮される可能性があるのか」について具体的に見ていきます。
マネジメント1:目標を設定する
エグゼクティブの人は、ビジネスでチームを管理するとき必ず目標を設定しているはずです。目標設定が重要なのは、賃貸経営も同様。業者に丸投げをして成り行きで運用している賃貸物件と明確な目標を設定してオーナーと業者が一体となって努力をしている賃貸物件では成果に差が出るのは当然でしょう。明確な目標を設定することで、ゴールへ向かっていけるのは部下も業者も変わりません。
ドラッカーは、目標設定の必要性について「目標がなければ混乱する」とシンプルに述べています。なお一般的に企業で使われている目標設定の指標は、以下のような項目ではないでしょうか。これは、そのまま賃貸経営にも応用できます。
- 短期目標(例:半年以内に稼働率80%達成)
- 長期目標(例:3年以内に稼働率95%達成)
- 数値的な目標(例:キャッシュフロー月間50万円)
- 無形の目標(例:入居者満足度を高める施策)
マネジメント2:組織する
リーダーがいくら優れたマネジメント力を備えていてもメンバーが目標達成に必要なスキルがなければ成果を出すのは困難です。そのため例えばチームの立ち上げ時であれば採用活動や社内でメンバーを募ることも必要でしょう。またすでに存在するチームを率いる場合は、目標の達成度によってメンバーの入れ替えが必要になる可能性もあります。
同じような感覚で賃貸経営のチームを運営する場合もベストメンバーと思われる管理会社や業者を選び抜いたり目標の達成度に合わせてメンバーの入れ替えを行ったりしていくことが必要です。
マネジメント3:動機づけとコミュニケーションを図る
経験豊かなエグゼクティブであれば報酬だけでメンバーがチームに献身してくれないことをよくご存じではないでしょうか。そこには、チームに貢献する動機づけが必要です。ドラッカーは、動機づけの一例として「仕事そのものから満足を得なければならない」と解説。もちろん会社のチームを率いるうえでメンバーがモチベーションを高められるよう結果や成長をたたえる努力もされているでしょう。
賃貸経営のチームにおいて優秀なオーナーも管理会社や業者が仕事の喜びを感じられるコミュニケーションを大切にしているケースもあります。具体的には、管理会社や客付け会社を定期的に訪ねて菓子折とともに感謝の言葉を伝えるような方法です。このような相手の動機づけとなるコミュニケーションは、エグゼクティブの人が得意とするところでしょう。
マネジメント4:評価測定をする
当然目標設定があれば評価測定も必要になります。短期〜長期(例:月次、四半期、年間など)で達成度を確認しそれに合わせて個々のメンバーに改善ポイントを指示していく必要があるのはビジネスも賃貸経営も同じです。ただその結果を「どのタイミングでどのように伝えるか」については、外部業者がメンバーの賃貸経営の場合、慎重に考えるべきでしょう。
なぜなら例えば「目標を達成できていない」と指摘されても「そんなの知らない」といった反応になりかねないからです。上記の例でいえば「稼働率を5%アップしたいので何とか協力をしていただけないか」といった協力要請が中心になるケースが多いでしょう。
マネジメント5:人材を開発する
ビジネスのチームは、成果を達成すればさらなる高い目標を求められるものです。逆に成果を出せなければ改善を求められるのが一般的でしょう。これらを実行するうえで鍵となるのが人材開発(メンバー個々のスキルアップ)です。とはいえ賃貸経営のチームは、社内チームと違って外部業者で構成されるため、人材開発が難しい一面があります。
そこで賃貸経営の場合は、新たなメンバーを加えることでチーム力を補うのも一案でしょう。例えばIoTやWi-Fi、太陽光発電など時代性のあるサービスを提供する業者の開拓でチーム力をアップさせるような考え方です。その結果、その賃貸物件が提供するサービスが向上して入居者満足度が高まり結果的に安定経営を維持しやすくなります。
エグゼクティブと相性がよいのは区分よりも1棟物件
エグゼクティブのマネジメント力が発揮しやすい物件タイプは、区分マンションよりも1棟物件という点は押さえておきましょう。区分物件は、それほど多くの業務が発生するわけではないため、マネジメント力が発揮しにくい傾向です。一方で1棟物件は、以下の理由でエグゼクティブのマネジメント力を発揮しやすいといえるでしょう。
- 所有している部屋数が多い(管理業務が多い)
- 大規模修繕をオーナーが中心になって考えなければならない
- 工夫次第で物件の魅力が大きく変わる
2つのチームで成功を収めれば将来の資産が変わる
エグゼクティブが賃貸経営をはじめれば会社と賃貸経営2つのチームを率いることになります。それを「負担が大きいと捉えるか」「やりがいがあると捉えるか」は人それぞれでしょう。ただ間違いなくいえるのは、「2つのチームを持って成功を収めれば将来の資産が大きく変わってくる」ということです。近年は、エクゼクティブといえどもいつ解雇されるか分からない時代のため、賃貸経営のチームを持つことは、そのリスクヘッジにもなるでしょう。
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