投資前に押さえておこう!マンション経営が失敗する8つのパターン
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吉田 謙太郎
吉田 謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

マンション経営を検討する中で最も大きな懸念材料は「失敗して大きな損失を出す」「入居者が入らずローンが返せなくなる」といったことではないでしょうか。数千万円単位のローンを組んでマンション経営を行うにあたっては、事前にマンション経営で失敗した要因をしっかりと把握しておくことが必要です。

本記事では、マンション経営を始める前に押さえておきたいマンション経営が失敗する8つのパターンとそれらの対策について解説していきます。

目次

  1. 投資前に押さえておこう!マンション経営が失敗する8つのパターン
    1. 1.物件価格の下落
    2. 2.家賃収入の減少
    3. 3.空室率の上昇
    4. 4.修繕費の発生
    5. 5.固定費の上昇
    6. 6.家賃滞納の発生
    7. 7.災害の発生
    8. 8.事件事故の発生
  2. マンション経営で失敗しないための8つの対策
    1. 1.物件価格下落への対策
    2. 2.家賃収入減少への対策
    3. 3.空室率上昇への対策
    4. 4.修繕費への対策
    5. 5.固定費上昇への対策
    6. 6.家賃滞納への対策
    7. 7.災害への対策
    8. 8.事件事故への対策
  3. 投資前のシミュレーションでリスクを最小化しよう
  4. マンション経営のリスクに関するよくある質問
    1. Q.マンション経営の主な失敗パターンは?
    2. Q.マンション経営で失敗しないための8つの対策は?

投資前に押さえておこう!マンション経営が失敗する8つのパターン

マンション経営の主な失敗パターンは、以下の8つが挙げられます。

  • 物件価格の下落
  • 家賃収入の減少
  • 空室率の上昇
  • 修繕費の発生
  • 固定費の上昇
  • 家賃滞納の発生
  • 災害の発生
  • 事件事故の発生

マンション経営は、マンション(建物)という現物資産を中長期的に保有して人に貸し出すというビジネスモデルです。そのため建物および入居者それぞれのリスク要因に起因する失敗パターンがあります。

1.物件価格の下落

マンションも株式などの資産と同じように価格が変動する可能性があります。築年数の経過や周辺エリアの相場変化などの要因により売却時の物件価格が購入時よりも下落すると損失が出るリスクがあるのです。公益財団法人東日本不動産流通機構のデータによると2021年4~6月の東京23区における中古マンションの成約価格(実際に売買が成立した価格)は、以下のように推移しています。

築年数1平方メートルあたりの単価下落率
~5年126万8,000円
~10年110万3,000円13.0%
~15年95万円25.1%
~20年89万9,000円29.1%
~25年83万8,000円33.9%
~30年66万1,000円47.9%
30年~62万2,000円50.9%

※築5年以内の物件の1平方メートル単価を基準とした下落率

築年数の経過のみならず物件所在エリアの人口減少や景気悪化、金融機関の融資情勢などの要因によってもマンション価格は変動する可能性があります。このように「マンションは売却時に損失が出るリスクがある」という点をしっかりと認識しておきましょう。

2.家賃収入の減少

マンション経営の主たる収入源は、家賃収入です。そのため家賃収入の減少によりマンション経営が破たんするリスクがあることは常に想定しておかなければなりません。家賃相場は、物件価格と同様に築年数の経過によって下落するのが一般的です。三井住友トラスト基礎研究所の算出によれば東京23区における築年数と家賃下落率には以下のような相関関係があると示唆されています。

築3年〜10年築11年〜20年築21年〜
シングルタイプ約1.7%約0.6%約0.1%
コンパクトタイプ約2.2%約0.9%約0.7%

※アットホーム株式会社のデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が算出
※シングルタイプ:18平方メートル以上30平方メートル未満
※コンパクトタイプ:30平方メートル以上60平方メートル未満

物件の面積および築年数に応じた割合での家賃下落を想定しておくのが無難でしょう。

3.空室率の上昇

保有している物件で退去が相次いで発生したり空室が長期化したりすると空室率が上昇します。空室率の上昇は、家賃収入の減少に直結するため、マンション経営における最大のリスク要因といっても過言ではありません。転居が多発する時期(2~3月、9~10月)にかけて発生する空室で次の入居者がすぐに見つかる場合は問題ありません。しかし慢性的に空室が続いている場合は、注意が必要です。

保有するマンションが経営用物件として不適格ということもあり得るでしょう。

4.修繕費の発生

マンションは、建物および設備という現物資産です。そのため経年劣化により専有部分(室内)および共用部分(外壁、エレベーターなど)において修繕費が不定期に発生します。エアコンや給湯器、エレベーターなどの大型設備は、修繕や交換のたびに高額な費用がかかる場合も少なくありません。突発的な修繕費の発生によりマンション経営が破たんするリスクもあり得ます。

5.固定費の上昇

マンション経営においては、以下のような固定費が毎月ないし数年に一度の頻度で発生します。

  • ローン返済(※ローンを組んでいないまたは完済している場合はなし)
  • 管理委託料(※物件を自主管理している場合はなし)
  • 税金(固定資産税、都市計画税など)
  • 損害保険料(火災保険、地震保険など)※損害保険に加入していない場合はなし
  • 管理費および修繕積立金(区分マンション)
  • 共用部分の水道光熱費(一棟物件)

上掲の固定費は、ローンの金利上昇(変動金利の場合)、修繕積立金の値上がり、保険料の値上がりなどの要因によって上昇する可能性があることは認識しておきましょう。家賃収入の中から固定費を支払うことができなくなると収支が赤字になり最悪の場合はマンション経営の破たんすることもあり得ます。

6.家賃滞納の発生

家賃滞納が発生すると入居者がいるにもかかわらず家賃が支払われないため、ローン返済など諸経費負担が重くなります。長期化・常態化すると収支の悪化のみならず滞納入居者を法的手続きに沿って強制退去させる事態に発展することもあるでしょう。強制退去をさせる場合は、多大な手間(内容証明郵便の送付、訴訟手続きなど)と費用(弁護士費用、強制執行に係る費用など)が発生します。

滞納分の家賃を回収できないことも想定されるでしょう。

7.災害の発生

自然災害の多い日本では、台風や地震、それら付随する洪水や火災といった二次災害が頻繁に発生します。災害によって建物が損傷すると多額の修繕費や建物の解体・建築費が発生したり賃貸ができない期間の家賃収入が大幅に減少したりするリスクがあるため、マンション経営をするうえでの致命的な損害となりかねません。

8.事件事故の発生

マンション経営における事件事故とは、マンション内での入居者の死亡(自殺、孤独死)や殺人事件などのことです。賃貸マンションには、不特定多数の入居者・来訪者が同時に居住・滞在するため、入居者・来訪者が事件事故を引き起こしたり巻き込まれたりするリスクがあります。マンション内で事件事故が起こると以下のような二次被害に発展しマンション経営に損害を与える可能性があるでしょう。

  • 住戸内の特殊清掃、消臭、おはらいなどの費用が発生
  • 同じマンション内の入居者が一斉退去
  • 「事故物件」になり入居者募集が難航
  • 家賃および物件価格が下落

過去に事件事故があった物件を地図上でプロットし物件名と事件事故の概要を発信しているサイトもあります。事故物件に関する情報が半永久的に残り続けることもあるため、マンション経営において看過できないリスク要因の一つです。

関連記事

マンション経営で失敗しないための8つの対策

マンション経営における8つの失敗パターンのそれぞれについてリスクを回避するための対策を解説します。

  • 物件価格下落への対策
  • 家賃収入減少への対策
  • 空室率上昇への対策
  • 修繕費への対策
  • 固定費上昇への対策
  • 家賃滞納への対策
  • 災害への対策
  • 事件事故への対策

1.物件価格下落への対策

物件価格下落への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 築年数にかかわらず長期的に資産価値を維持できる物件を見極める
  • 大規模修繕やリフォームを定期的に実施して良好な物件状態を保つ
  • 物件価格の下落を想定した資金計画を立てる

都心部のヴィンテージマンションのように好立地で希少性の高い物件は、築年数が経過しても資産価値を維持できるマンションもあります。マンションは、経年劣化しても室内の設備を最新のものに交換したり外壁を塗り直したりすることで資産価値を維持することも十分に可能です。

2.家賃収入減少への対策

家賃収入減少への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 将来にわたって賃貸需要が見込まれ家賃が下落しにくい物件を見極める
  • 大規模修繕、リフォームを定期的に実施して良好な物件状態を保つ
  • 家賃の下落を想定した資金計画を立てる

賃貸需要の多寡は、周辺エリアの人口や最寄り駅の乗降客数などの要素によって複合的に判断する必要があります。地方自治体(市役所や区役所など)が発信している人口推移に関するデータを参照して将来にわたってマンションを借りたい人がいるか否かを考えましょう。

3.空室率上昇への対策

空室率上昇への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 最も賃貸需要のある物件の条件(間取り、所在地など)を把握する
  • 特定の賃貸需要(大学、工業団地など)に依存していないかを確認する
  • 空室率を反映した資金計画を立てる

資金計画における空室率は、15~20%程度と想定し年間の家賃収入から空室率分を控除しておくのが無難でしょう。

4.修繕費への対策

修繕費への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 各設備の交換および修繕の状況(いつ、何をしたか)を確認する
  • 大型設備の交換周期に合わせて修繕資金を積み立てる
  • 突発的な修繕費に備えた手元資金を常時確保する

エアコンや給湯器、エレベーターなどの大型設備は、直近の交換日と目安となる交換周期(エアコン、給湯器はともに11~15年程度)から次に交換が必要になる時期を想定して修繕資金を積み立てておくのが得策です。

5.固定費上昇への対策

固定費上昇への対策としては、以下の2つが挙げられます。

  • ローンの借入比率を抑える
  • 固定金利でローンを組む

自己資金の拠出や繰上返済によってキャッシュフローに余裕を持たせたり金利上昇に備えて固定金利(金利が変動しないプラン)を選択したりすることが有効な選択肢です。

6.家賃滞納への対策

家賃滞納への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 事前に各入居者の滞納状況および総滞納額を確認する
  • 新しく入居する入居者の資力を確認する(入居審査時)
  • 入居者に家賃保証会社への加入を促す

物件購入前にあらかじめ既存入居者の滞納状況を確認しておくことで家賃滞納が発生するリスクが高い物件への投資を回避することができます。物件購入後の家賃滞納リスク回避策として入居審査時に資力(年収や預貯金額など)を確認することに加えて家賃保証会社への加入を必須化するのも選択肢の一つです。

7.災害への対策

災害への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 事前に物件所在エリアの「ハザードマップ」を確認する
  • 物件所在エリアでそれまでにどのような災害が発生したかを確認する
  • 損害保険に加入する

ハザードマップ(洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを確認できる地図)や過去に発生した災害および被害状況などを確認することで災害リスクが高いエリアの物件への投資を回避することができます。万が一の災害発生に備えて損害保険(火災保険・地震保険・特約など)に加入しておきリスクが顕在化した際の損失の最小化を図りましょう。

8.事件事故への対策

事件事故への対策としては、以下の3つが挙げられます。

  • 広告図面に「告知事項あり」と記載がある場合はその詳細を確認する
  • 物件所在エリアの治安の良し悪しを確認する
  • 損害保険の特約(「家主費用補償特約」など)に加入する

事件事故は、一度発生するとネガティブなイメージがネット上で半永久的に残り続ける可能性が高いため、事前のリサーチを徹底することに加えて損害保険の特約も活用してリスクに備えましょう。

投資前のシミュレーションでリスクを最小化しよう

マンション経営には、さまざまなリスクがつきものです。そのためリスク要因とリスク回避のための対策を事前に理解しておくことが大切となります。資金計画に反映させることができるリスク要因については、リスクの顕在化を想定した資金計画を立てておき万が一の事態にも耐え得るマンション経営を心がけましょう。

マンション経営のリスクに関するよくある質問

Q.マンション経営の主な失敗パターンは?

マンション経営の主な失敗パターンとして以下の8つが挙げられます。 ①物件価格の下落、②家賃収入の減少、③空室率の上昇、④修繕費の発生、⑤固定費の上昇、⑥家賃滞納の発生、⑦災害の発生、⑧事件事故の発生

Q.マンション経営で失敗しないための8つの対策は?

①物件価格下落への対策、②家賃収入減少への対策、③空室率上昇への対策、④修繕費への対策、⑤固定費上昇への対策、⑥家賃滞納への対策、⑦災害への対策、⑧事件事故への対策

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