不動産投資の構造選びで迷っていませんか?木造・鉄骨造・RC造を比較
(画像=beeboys/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

はじめて不動産投資をする際「建物の構造選び」で迷う人も多いのではないでしょうか。本稿では、そんな人が自分に合う構造を見つけやすいようアパートやマンションなど賃貸物件の主な構造「木造」「S造(鉄骨造)」「RC造(SRC造)」を比較したうえでメリット・デメリットを整理します。

賃貸物件は構造によってコストや建物寿命が変わる

賃貸物件の主な構造は、以下の5種類です。

  • 木造
  • S造(鉄骨造)
  • RC造(鉄筋コンクリート造)
  • SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

これらは、構造によって建築コストや耐久性、建物寿命などが変わってきます。この違いを認識したうえで自分に合う構造を選ぶことが不動産投資で成功するための条件の一つです。

賃貸物件の構造別メリットとデメリット

賃貸物件の主な構造「木造」「S造(鉄骨造)」「RC造(SRC造)」のメリット・デメリット、法定耐用年数を整理すると以下のようになります。

構造用途メリットデメリット法定耐用年数
木造アパート・建築コストを抑えやすい
・大幅リフォームをしやすい
・効率的に経費計上しやすい
・建物が傷みやすい22年
S造
(鉄骨造)
アパート、ビルなど・木造よりも強度がある
・木造よりも耐用年数が長い(鉄骨厚さ3ミリメートル超の場合)
・火事に弱い19年、27年、34年
(鉄骨厚さによって異なる)
SRC造・RC造マンション・木造や鉄骨系よりも強度が高い
・木造や鉄骨よりも耐用年数が長い
・家賃設定を高くしやすい
・建築コストがかかる47年

それぞれの構造は、以下のようなタイプの人と相性がよいといえます。以降は、構造別のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

木造のメリットとデメリット

木造は、アパートによく使われ建築コストを抑えながら不動産投資をはじめたい人向けの構造です。S造(鉄骨造)やSRC造、RC造よりも建物が傷みやすいデメリットがあります。安定経営をしていくためには、適切なメンテナンスをしていくことがポイントです。

木造のメリット

  • 建築コストを抑えやすい
  • 大幅なリフォームをしやすい
  • 効率的に経費計上しやすい

木造は、骨組みが木材の構造で小規模~中規模のアパートでよく使われており特に初期費用を抑えたい人に向いています。なぜなら後述する鉄骨造やRC造(SRC造)と比べると建築コストが割安だからです。また木造は、大幅なリフォームや間取り変更がしやすいため、入居者ニーズの変化に柔軟に対応しやすい点もメリットといえるでしょう。

木造の法定耐用年数は、22年でRC造(SRC造)の半分以下です。法定耐用年数が短いため、建物価格が同じ場合、1年あたりの減価償却費を多めに経費計上することができます。

木造のデメリット

  • 建物が傷みやすい

木造は、骨組みの木材が腐ってしまったり基礎がシロアリの被害を受けたりするリスクがあり金属造よりも傷みやすい点はデメリットです。そのため他の構造よりも資産価値が下がりやすいでしょう。建物の傷みを最小限に抑えるためには、湿気がこもらない構造を採用したりシロアリ防止の処置をしたりするなどの対策が有効です。

S造(鉄骨造)のメリット・デメリット

ビルや高耐久アパートなどで使われるS造(鉄骨造)の強度は「木造アパートなどを上回りRC造マンションよりも劣る」というのが一般的です。ただし鉄骨の厚さによって強度は大きく変わってきます。

S造(鉄骨造)のメリット

  • 木造よりも強度がある
  • 木造よりも耐用年数が長い
    (鉄骨厚さ3ミリメートル超の場合)

S造(鉄骨造)とは、骨組みが鉄骨の構造で木造よりも強度があるといわれています。ただしRC造(SRC造)と比べると強度が劣るのが一般的です。鉄骨造は、鉄骨材の厚みで「軽量鉄骨」「重量鉄骨」の2つに分けられます。

軽量鉄骨
(鉄骨材の厚さが6ミリメートル未満)
中規模のアパートなどによく採用されている構造
重量鉄骨
(鉄骨材の厚さが6ミリ以上)
オフィスビルや商業ビルなど幅広い用途で採用されることが多い

高層階にしたい場合は、重量鉄骨を選択するのが一般的です。鉄骨造には、鉄骨材の厚みによって法定耐用年数が変わる税務上のルールがあります。3ミリメートル超であれば木造よりも法定耐用年数は長い設定です。一般的に法定耐用年数が長いとローンの返済期間を長くしやすいといわれています。

鉄骨材の厚み法定耐用年数
3ミリメートル以下19年
3ミリメートル超4ミリメートル以下27年
4ミリメートル超34年

S造(鉄骨造)のデメリット

  • 火事に弱い

S造(鉄骨造)は、骨組みが鉄骨でできているため、火事に強そうなイメージがあるかもしれません。しかし実際には、一定の温度以上になると強度が弱まってくる特性があります。耐火性を重視するのであればRC造がおすすめです。

RC造(SRC造)のメリット・デメリット

マンションでよく採用されているRC造(SRC造)は、建物の強度が高いため、資産価値を維持しやすい点はメリットです。一方で建築コストが高いデメリットがあるため、長期的な経営計画を確認したうえで選択するのがよいでしょう。

RC造(SRC造)のメリット

  • 木造や鉄骨系よりも強度が高い
  • 木造や鉄骨よりも耐用年数が長い
  • 家賃設定を高くしやすい

RC造は、「引張力に優れた鉄筋」と「圧縮力に強いコンクリート」を組み合わせた構造で鉄骨造や木造よりも強度が高いことが大きなメリット。さらに柱や梁を鉄骨で組んで強度を高めたのがSRC造です。

  • RC造:一般的なマンションに使われることが多い
  • SRC造:タワーマンションや高層マンションなどに採用されることが多い

なおSRC造は、工期が長く建築コストも割高となります。RC造・SRC造の法定耐用年数は、いずれも47年で木造や鉄骨造よりも長い設定です。この特性を活かせばローンの返済期間を長くして毎月の返済額を抑えることも期待できます。

RC造(SRC造)のデメリット

  • 建築コストが高い

RC造(SRC造)マンションは、木造や鉄骨造と比べて強度のある構造のため、建築コストが割高となる傾向です。あわせて外壁や屋上防水などのメンテナンスコストも割高なケースが多いと考えられます。

木造・S造(鉄骨造)・RC造(SRC造)はどんなタイプの人に合う?

構造別のメリット・デメリットに基づいて「それぞれの構造にどんなタイプの人が合うか」を整理します。

木造に合うタイプの人は

木造アパートは、建物の建築コストを抑えやすいため、不動産投資の初期費用を抑えたい人に合っています。また法定耐用年数が22年(新築の場合)とRC造マンションなどよりも短いため、毎年の決算や確定申告で減価償却費を多く計上して課税所得を減らしたい人向きです。特に22年を経過した中古物件なら建物費用を4年で償却できるため、所得税の節税効果が期待できます。(ただし収支が赤字の場合)

S造(鉄骨造)に合うタイプの人は

高耐久アパートやビルなどで使われる鉄骨造は、木造よりも強度があるため、丈夫な建物にしたい人と相性がよいです。ただしRC造マンションと比べると強度が劣ります。

RC造(SRC造)に合うタイプの人は

RC造(SRC造)マンションは、鉄骨造をさらに上回る強度があるため、長期的に資産価値を維持したい人向けです。あわせてキャッシュフロー重視の人にも合うでしょう。なぜならローンの返済期間は、法定耐用年数を参考に設定されることが多いからです。耐用年数が47年のRC造は、返済期間を長くしやすくその分毎月の返済を抑えやすいといえます。

RC造マンションを選択する人への注意点

最後に賃貸物件の構造の中からRC造マンションを選択する人への注意点です。RC造マンションは「キャッシュフローが出やすい」というメリットだけでなく「メンテナンスコストがかかる」というデメリットもあります。そのため急なリフォームや大規模修繕をまかなえる余力のある人でないと破たんリスクが高まる点は押さえておきましょう。

この部分で不安を感じる人は、低層のRC造マンションを選ぶのも一案です。中層・高層のRC造マンションと比べて規模が小さい分、メンテナンスコストを抑えやすいでしょう。低層のRC造マンションについては、当サイト内の関連記事をご参照ください。

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