不動産価格の判断方法としてメジャーな収益還元法を徹底解説
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丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

不動産投資を行う場合は、購入または売却したい不動産価格が収益見込みと比較して妥当かどうか判断することが大事です。不動産価格の判断方法には「収益還元法」「積算法」「取引事例法」などがあります。本記事では、そのうち不動産価格の判断方法としてメジャーな収益還元法について徹底解説します。

収益還元法とは何か

不動産会社に価格の査定を依頼した場合、収益還元法で金額を提示される場合があります。収益還元法とは、アパートや賃貸マンションなどの投資用不動産から得られる収益性に基づいて不動産価格を判断する評価方法です。収益還元法は以下の2つがあります。

直接還元法不動産から生み出される利益を還元利回りで割って求める方法
DCF法所有する不動産から将来生み出される価値を現在の価値に割り引いて不動産価格を判断する方法

収益還元法を理解すると投資用不動産を購入する際に物件価格が適正なものかを見極めることができるため、割高な物件を購入するリスクを抑えることが期待できます。不動産投資家であればぜひ覚えておきたい判断方法の一つです。また銀行融資を受ける際も対象物件の収益性を客観的に示すことで交渉に役立てることができます。

収益還元法の計算方法

上述したように収益還元法の計算方法には「直接還元法」「DCF法」の2つがあります。計算方法が大きく異なるため、内容を把握しておくことが大事です。

直接還元法

直接還元法は、1年間などの期間における純収益を還元利回りで割って不動産価格を判断する評価方法です。還元利回りとは、運用する不動産から得られる投資利回りのことをいいます。例えば2,000万円を投資して年間100万円の純収益を得られる物件であれば還元利回りは5%です。直接還元法で不動産価格を求めるには、以下の計算式を使います。

  • 「不動産価格(収益価格)=1年間の純収益÷還元利回り」

純収益とは、家賃収入などから経費を差し引いた実質的な利益を指し上記の例でいえば100万円です。

【直接還元法による計算例】
家賃月10万円、年間収益120万円、年間経費20万円、還元利回り5%の物件の場合

  • 純収益=120万円-20万円=100万円
  • 不動産価格(収益価格)=100万円÷5%=2,000万円

この物件の不動産価格は、2,000万円と判断されます。

DCF法

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法は、将来得られる利益と売却するときの予想価格を現在の価格に割り引いてその合計額を不動産価格として評価する方法です。現在の価格に割り引く理由は、同じ100万円だったとしても5年後の100万円より現在の100万円のほうが価値としては高いとされているからです。

例えば現在100万円あり年利回り3%の投資商品で5年間運用すると115万円以上に増やすことができます。そのため5年後の収益を現在の価格に置き換えるときは、元の価格から割り引いて考える必要があるのです。

【DCF法による計算例】
家賃月10万円、年間収益120万円、5年後の予想売却額1,200万円、割引率3%の物件の場合

年数計算式
1年目120万円÷(1+0.03)≒117万円
2年目120万円÷(1+0.03)²≒113万円
3年目120万円÷(1+0.03)³≒110万円
4年目120万円÷(1+0.03)⁴≒107万円
5年目120万円÷(1+0.03)⁵≒104万円

≒(ニヤリーイコール)という記号は、「おおよそ等しい」という意味で四捨五入に似た言葉です。同様に5年後の売却額1,200万円を現在価格に割り引くと約1,040万円となります。そのためDCF法によるこの物件の不動産価格は1~5年目まで合計した「117万円+113万円+110万円+107万円+104万円+1,040万円≒1,591万円」です。

計算がやや複雑なのでインターネットで公開されている無料の計算サイトを利用するのもよいでしょう。

積算法や取引事例法との違い

不動産価格の判断方法は、ほかに積算法と取引事例法があります。収益還元法が不動産の収益性に着目しているのに対し積算法は費用面に着目し取引事例法は類似した取引事例を参考にする点が大きな違いです。

積算法

積算法は、土地と建物をそれぞれに評価し合計して土地・建物の評価額を決定する評価方法です。計算式は「土地の価値+建物の価値」というシンプルなものです。土地の価値は「路線価×土地面積」で算出します。路線価は1平方メートルあたりの土地の価値を表します。一方、建物の価値は「新築価×(残存法定耐用年数÷法定耐用年数)×延べ床面積」で算出し合計したものが不動産の評価額です。

新築価とは、再度新築した場合に床面積あたりいくらかかるのかを表す指標です。

取引事例法

取引事例法は、対象になる不動産と類似した物件の取引事例を比較して不動産の評価額を決定する方法です。売却する予定の不動産と条件が似ている不動産の過去に成約した事例を複数選び平均坪単価を算出。坪単価に売却する不動産の面積を乗じて金額を算出し諸条件(道路の状況や方角など)を考慮して不動産価格を判断します。

収益還元法で不動産価格を高くするには

収益還元法においては、次の対策を実践することによって不動産価格を高くすることが期待できます。家賃収入を多くする努力に加えて築年数が経過した物件の魅力をリフォームによって高めるのも有効な方法です。実践するためのポイントを確認しておきましょう。

家賃収入を多くする

1つ目の対策は、家賃収入を多くすることです。収益還元法で不動産価格を算出する場合は、家賃収入がベースとなるため、家賃収入を多くすれば不動産価格は高くなります。例えば一棟マンションA物件の年間家賃収入が1,200万円、一棟マンションB物件の年間家賃収入が 1,000万円だった場合で収益還元法上の不動産価格を比較してみましょう。どちらも還元利回り10%、経費率20%とします。

  • Aマンション:{家賃収入1,200万円-(経費1,200万円×20%)}÷0.1=9,600万円
  • Bマンション:{家賃収入1,000万円-(経費1,000万円×20%)}÷0.1=8,000万円

利回りや経費率が同じでもAマンションのほうが家賃収入の多い分1,600万円も不動産価格が高くなるのです。収益還元法では、家賃収入がいかに重要となるかが理解できるでしょう。では、家賃収入を多くするには具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。

建物の改修工事や人気設備の導入を行う

2つ目の対策は、建物の改修工事を行い物件の価値をグレードアップすることです。家賃収入を多くするには「入居率を高める」「家賃を高くする」といった方法があります。一般的には、建物の築年数経過に伴い入居率は次第に下がっていく傾向です。しかし物件が古くなってしまうと家賃を上げることが難しくなります。そこで入居率を高めるために建物の改修工事を行うことが有効な方法となるのです。

特に外観は外から見えるので物件の印象を大きく左右します。外壁だけでも塗り替えることで印象がよくなり入居者の獲得につながりやすくなるでしょう。売却時に改めて外壁工事をする必要がないため、不動産価格の評価において工事分の金額を減額されることもありません。また建物内部では、入居者に人気の設備を導入することで物件の魅力がアップします。

例えば「インターネット無料」などは、いまやあたり前になっている傾向です。全国賃貸住宅新聞が行った「入居者に人気の設備ランキング2020」では、単身向けとファミリー向けの両方で「インターネット無料」がトップでした。また外出自粛の影響で宅配ボックスが単身向けで3位、ファミリー向けで2位と人気の設備上位にランクインしています。

このような社会情勢にマッチした人気の設備を導入することも家賃を高く設定する方法の一つといえるでしょう。不動産投資家にとって収益還元法は、不動産の適正価格を知るうえで重要な知識です。投資用不動産を適正な価格で購入できるように収益還元法の知見を高め収益の上がる物件の購入につなげたいものです。

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