「建蔽率」「容積率」とは?不動産投資と関係する2つの局面を解説!
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吉田 謙太郎
吉田 謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

一棟アパートなど不動産投資をする際に「建蔽率(けんぺいりつ)」や「容積率」といった用語を聞いたことがある方は、多いのではないでしょうか。「建蔽率」や「容積率」は、どちらも不動産投資を行ううえで重要な意味を持っています。そのため不動産投資家であれば内容を正しく理解しておくことが必要です。

本記事では、「建蔽率」と「容積率」の意味や具体的な使い方を述べたうえでこれらの用語が不動産投資に影響する主な2つの局面について解説します。

「建蔽率」とは?

国土交通省の都市局都市計画課によると「建蔽率」とは、土地に建築物を建てる際のルールの一つで、建築物の建築面積(建築物を真上から見たときの面積)の敷地面積に対する割合をいいます。建築物の敷地内に一定の割合以上の空地を確保することで建築物の日照や通風、防火、避難等の確保を目的として定められているルールです。

既存または建築予定の建築物における建蔽率の求め方

既存または建築予定の建蔽率は、以下の計算式によって求められます。

  • 建蔽率(%)=(建築面積÷敷地面積)×100

アパート等を新築する際は、設計段階で上掲の計算式を基に建蔽率の適法性を確認しましょう。

建蔽率の使われ方

建蔽率は30%、50%、80%といった割合で表記され「敷地面積に対してどの程度までの建築面積の建築物を建てることができるか」を表しています。例えば建蔽率50%の地域において敷地面積100平方メートルの土地に建築物を建てる場合、その建築物の建築面積の上限は50平方メートル(100平方メートル×50%)となるということです。

建物が2階建て以上の場合における建蔽率の算出を以下の事例で解説します。

・敷地面積:100平方メートル
・建築物の床面積:1階60平方メートル、2階40平方メートル、3階20平方メートル

<横から見た建築物>

「建蔽率」「容積率」とは?不動産投資と関係する2つの局面を解説!

<真上から見た建築物>

「建蔽率」「容積率」とは?不動産投資と関係する2つの局面を解説!

本事例の建築物の建蔽率は、60%となるため、建蔽率が60%以上の土地であれば適法な建築物として認められます。建蔽率は、敷地面積に対する建築物の建築面積割合のことです。建築面積は、建築物を真上から見たときの面積となるため、本事例における建築面積は1階部分の面積60平方メートルが基準となります。

「容積率」とは?

国土交通省の都市局都市計画課によれば「容積率」とは、土地に建築物を建てる際のルールの一つで建築物の延べ面積(各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合をいいます。建築物の規模とその地域にある道路をはじめとする公共施設の整備状況とのバランスを確保することなどを目的として定められているルールです。

容積率の上限は、以下2つの数値のいずれか小さいほうが適用されます。

  • 1.用途地域に関する都市計画で定められる容積率
  • 2.前面道路の幅員により定まる容積率

1.用途地域に関する都市計画で定められる容積率

1は、用途地域ごとに建築基準法によって決められており市役所の都市計画課等で参照することができる数値です。

2.前面道路の幅員により定まる容積率

1によって容積率が定められていたとしても前面道路(建築物を建てる敷地に面している道路)の幅員が12メートル未満の場合は、2によって上限が制限されることがあるため注意しましょう。2によって定められる容積率の上限は以下の計算式によって求められます。

  • 容積率の上限(%)=前面道路幅員(メートル) ×0.4(地域によっては0.6または0.8)

上掲の計算式で算出された数値と1の数値を比較して、小さいほうがその敷地に適用される容積率の上限となるということです。

既存または建築予定における建築物の容積率の求め方

既存または建築予定の建築物の容積率は、以下の計算式によって求められます。

  • 容積率(%)=(延べ面積÷敷地面積)×100

アパートなどを新築する際は、設計段階で上掲の計算式を基に容積率の適法性を確認しましょう。

容積率の使われ方

容積率は50%、150%、300%といった割合で表記され「敷地面積の何倍までの延べ面積の建築物を建てることができるか」を表しています。例えば容積率200%の地域に敷地面積100平方メートルの土地に建築物を建てる場合、その建築物の建築面積の上限は200平方メートル(100平方メートル×200%)です。建物が2階建て以上の場合における容積率の算出はどのようになるのか、以下の事例で解説します。

  • 敷地面積:100平方メートル
  • 建築物の床面積:1階60平方メートル、2階40平方メートル、3階20平方メートル

本事例の建築物の容積率は、120%となるため、容積率が120%以上の土地であれば適法な建築物として認められます。容積率は、敷地面積に対する建築物の延べ面積割合のことです。延べ面積は、建築物の各階の合計床面積となるため、本事例における延べ面積は120平方メートル(60平方メートル+40平方メートル+20平方メートル)となります。

建蔽率・容積率が不動産投資と関係する2つの局面

実際の不動産投資において建蔽率・容積率の数字が関係するのは、主に以下2つの局面です。

  • アパート新築用の土地を取得するとき
  • アパートの建て替えをするとき

「どの程度の規模のアパートを建てることができるか」を想定する際には、該当する土地の建蔽率や容積率を確認する必要があります。

アパート新築用の土地を取得するとき

アパートを建築するために土地を取得する場合は、土地に適用される建蔽率や容積率を確認したうえで「どの程度の規模のアパートを建てることができるか」について検討しましょう。建築できるアパートの規模が決まれば住戸の間取りや広さ、総戸数、建築費などが試算でき想定家賃収入や想定利回りを算出することができます。

想定利回りを見てはじめて「土地を購入すべきか否か」という判断を適切に行うことができるため、土地を取得する段階で建蔽率と容積率の確認は必要です。

アパートの建て替えをするとき

既存アパートの建て替えをする際も同様に土地に適用される建蔽率・容積率を確認し「どの程度の規模のアパートを再度建てられるかどうか」を検討しましょう。再建築可能なアパートの規模を決まれば間取りや広さ、総戸数、建築費などが試算でき想定される家賃収入および建て替えのコストパフォーマンスを算出することができます。

建て替えにかかる費用(解体費および建築費等)と建て替え後のアパートの想定家賃収入とをしっかりと比較することも重要です。試算したうえでコストパフォーマンスが悪い場合は「建て替えをしない」「更地にして駐車場にコンバージョンする」など別の土地活用を決断することも大切となります。

物件取得時は建蔽率・容積率を要チェック

建蔽率・容積率は、どちらも土地に建築物を建てる際のルールです。各割合の高低によって建てることができる建築物の規模が変動します。そのためアパートを新たに建てるための土地を取得する際や建て替えをする際には、建蔽率と容積率をよく確認しあらかじめどの程度の規模のアパートを建てることができるのかを把握しておきましょう。

建蔽率が40%と80%のエリアでは、同じ敷地面積でも建築できる建築物の建築面積の差は2倍です。容積率も建蔽率と同様に100%と200%のエリアでは、同じ敷地面積でも建てることができる建築物の延べ面積に2倍の差が生じます。この場合、アパートを建築した際の想定される家賃収入も大きな差が生じる可能性があるため、投資パフォーマンスに大きな影響を及ぼすといえるでしょう。

賃貸需要が見込めるアパートを建築できそうな土地があったとしても建蔽率と容積率が低い場合は、小規模なアパートしか建てることができません。そのため場合によっては投資を見送ることも選択肢の一つです。このように建蔽率・容積率は、不動産投資を行ううえで収益に大きな影響を与える可能性があるため、しっかりと内容を理解しておきましょう。

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